しばらくコロナ前には戻れない。感染者数は減少傾向も、専門家会議「新たな生活様式を」

政府新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、緊急事態宣言の期限が迫る5月1日、現在の状況分析と今後の対応に関する基本的な考え方について、新たに提言を発表した。

感染者数は減少も、減少ペースは鈍い

データ

携帯端末の位置情報データを活用した、人口の増減率。(4月30日15時台)

出典:内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室

専門家会議の尾身茂副座長は、

「国民の多くの人が大変不自由な生活に耐えてくれてここまでの収束を迎えました。専門家が感謝するっていうのもおかしいんですけど、心から感謝しています」

と、緊急事態宣言にともなう行動変容への協力に感謝を示す一方で、「当面、今の枠組みを維持することが望ましい」と緊急事態宣言の解除は難しいとする見解を示した。

緊急事態宣言を維持すべき理由として挙げられたのは

1:収束のスピードが期待されたほどでもない。

2:医療提供体制が十分に整備できていない地域がある。

3:知事のリーダーシップがこれからも必要。

の3点。

これまでの対策によって、新たな感染者は確かに減少傾向にある。

1人の感染者が他の人に感染させる割合を示す「実効再生産数」は、全国で見ると2.0(3月25日)から0.7(4月10日)へと減少。東京都でも、2.6(3月14日)から0.7(4月10日)へと減少したという分析結果が公表された。

学校や公園の制限緩和の検討を

実効再生算数

全国と東京都の実効再生算数の推移。

出典:専門家会議

「8割おじさん」こと、北海道大学大学院の西浦博教授も、

「東京・丸の内や汐留など、伝播が盛んに起こっていたと思われる地域の夜間の接触頻度は減少させることができた」

と携帯電話端末の位置情報データの分析結果から、接触頻度の8割削減を達成できた地域があると話す。

一方で、

「(4月上旬に)感染者数増加していたとき(の増え方)よりも、下がり方が緩やかになっている。また、東京の減少にくらべて、全国の減少は鈍い。これは、東京から地方へと人が移動して感染が広まったことが原因だと考えられます」(尾身副座長)

「10代、20代の若者の接触頻度は80%以上減少したことが伺えます。一方、30代以上では、接触頻度の相対的な減少は少ない。テレワークの普及分だけ接触頻度が減少したと思われます。80%削減ができたところと、できていないところはまだらであった」(西浦教授)

と、全体で接触頻度を8割削減することが難しい現実が見えた。

なお専門家会議は、地域ごとに感染状況が異なる状況が生じていることから、社会的に必要な活動で、工夫によって感染リスクが下げられるような学校や公園の利用については、制限を緩和してくことも検討すべきであるとした。

長丁場の対応に向けて「新たな生活様式」を

新たな生活様式

仮に感染者数が減少しても、いずれまた感染者が増える可能性が危惧されている。

出典:専門家会議

既に、緊急事態宣言は全国的に延長される見通しが示されている。

今後、緊急事態宣言を解除する基準として、専門家会議は疫学的状況医療状況の2点を鑑みなければならないとした。

疫学的状況

・新規感染者数など(新規感染者や倍化時間など)の水準が十分に抑えられていること。

・必要なPCRなどの検査が迅速に実施できること。

医療状況

・医療機関の役割分担の明確化や患者搬送の調整機能の確立。

・病床の稼働状況を迅速に把握、共有できる体制の構築。

・軽症者に対する宿泊療養施設などの確保など。

ただ、こういった判断基準について、新規感染者数や実効再生産数、あるいは入院している患者の数などの具体的な数値は示されなかった。

尾身副座長は、今後の見通しについて

「早期診断から重症化予防までの治療法の確立に向けた明るい兆しがみえつつあるが、諸外国の感染状況やそれに対する対応なども踏まえると国内における感染状況に応じて持続的な対策が必要」

と、長丁場の対応が必要であると強調した。

懸念される病院の逼迫状況も、すぐに落ち着くわけではない。新規の感染者が減少したとしても、重症患者は入院期間が長引く傾向があるため、すぐに安心できるレベルになるとは考えにくいからだ。

また、今後仮に感染者数が減少し、緊急事態宣言が解除されたとしても、再び感染者が増えれば、あらためて強い行動変容が要請される可能性がある。このことからも分かる通り、生活スタイルが「コロナ前」に戻ることはしばらくの間無いだろう。

専門家会議は、感染者数が減少し緊急事態宣言が解除されても、コロナの流行状況に応じて行動変容を取れるような「新しい生活様式」を送るよう提言している。

新型コロナウイルスの感染の実態が明らかになるまでには、2週間程度の時差がある。私達はいったいどんなデータを見て、何を基準に「新しい生活様式」を確立していけばよいのだろうか。

「データをどのように見るべきか?」という、Business Insider Japanからの質問に対して明確な回答は得られなかったものの、専門家会議の資料には次のような文言が記載されていた。

「各事業者も、感染対策を講じていくことが求められるため、次の専門家会議で示す基本的な考え方を参考としながら、各業界団体が中心となって、業種毎のガイドライン等の作成に向け、検討していくことが重要である」

検査体制や医療体制の整備方針がある程度定まってきたのであれば、次のステップとして、社会を動かすための条件を検討し始めなければならない。次の専門家会議では、実際に経済を再起動させるために重要な、具体的な提案がされることを期待したい。

(文・三ツ村崇志)

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