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馳氏ら自民視察の回答書「言い訳の典型」「質問に答えてない」、少女支援団体が憤り

馳浩元文部科学相ら自民党の国会議員らが、10代少女を支援する団体を約束を超える人数で視察、無断で撮影しSNSに投稿、さらに10代スタッフにセクハラを行ったとして団体側が抗議していた問題で、安倍首相は4月29日の衆院予算委員会で議員らを「厳重に注意したい」と述べた。

議員らは団体の抗議文に回答したが、団体側は「質問にほとんど答えておらず、誤認もあり、問題を理解していると言い難い」と言う。問題の発覚後、他の議員から馳元文科相をかばうような発言もあり、コロナ禍における女性支援策の重要性が世界的に叫ばれる中、日本政界全体の意識の遅れが露呈する事態となっている。

視察は5名の約束が……

Colabo

Colaboのバスカフェ。議員らの視察が行われた日も、多くの少女たちが訪れていた。

撮影:竹下郁子

問題となっているのは、馳元文部科学相(自民党)が会長を務める「自民党ハウジングファースト勉強会」が4月22日に行った、一般社団法人Colaboへの視察だ。議員らが視察したのは、Colaboが毎週開催しているバスカフェ。

Colaboでは東京都新宿区や渋谷区の繁華街近くにバスを停め、10代の少女たちを対象に衣服や生理用品、飲食などを無料で提供。街で声をかけるなどのアウトリーチ活動を行ってきた。

同勉強会の阿部俊子衆議院議員から視察の打診があったのは、バスカフェ開催の前日。Colabo側は「5名までなら受け入れ可能」と伝えたが、視察には自民党の国会議員や新宿区議会議員、その秘書ら10名が参加、名前も分からない状態で現場は混乱した。

10代メンバーへのセクハラも

Colabo

撮影:竹下郁子

Colabo代表の仁藤夢乃さんによると、「撮影は限られた場面のみで許可しているため、可能なタイミングで声かけする」と現場で伝えたにもかかわらず、無断で写真を撮影する人もいたという。その上、議員らは自身のSNSに視察の報告を「ボランティア」と称して写真付きで掲載した。

Colaboで活動している10代のメンバーには、虐待や性暴力、性搾取の被害にあい、親族や加害者から離れてシェルターで生活を送る少女たちもいる。活動に参加していることが知られれば、安全を脅かされる危険性もある。

さらにテントの設営中、馳元文科相が「ちょっとどいて」と言いながら10代のスタッフの後ろを通ろうとし、両手で腰を左右から触るセクハラもあったという。スタッフの少女も性暴力の被害当事者。触られた時の感覚が消えず、過去の被害について思い出して食欲がなくなったり、翌日は布団から起き上がることもできなかったそうだ。

セクハラは「意識に残ってない」

Colabo

撮影:竹下郁子

テントの設営中も、議員らが威圧的な態度だったため、少女たちは深く傷ついたという。こうした経緯から24日、Colaboは視察に来た議員らに対する抗議文を公表。参加者一人ひとりに反省と文書での謝罪を求めた。

これに対し自民党ハウジングファースト勉強会は28日に一括で回答

馳元文科相のセクハラについて、本人は「全く意識に残っていない」とした上で、「貴会の思いを感じ取ろうと設営をお手伝いする中でセクハラ被害を受けたとの相談がなされたこと自体、大変申し訳ないことであり、心より深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

また約束の倍となる大人数での視察になったことも「深くお詫び申し上げます」とした。

「加害者の言い訳の典型」に憤り

Colabo

繁華街でのアウトリーチ活動。

撮影:竹下郁子

一方でいまだ認識が異なる点も多く、回答そのものが不誠実だと仁藤さんは指摘する。仁藤さんによると、自民党ハウジングファースト勉強会の回答では、前日に視察予定の議員の名前を数名伝えたとしているが、聞いておらず、また馳元文科相と仁藤さんに面識があるように書かれているが、そうした事実関係はないという(馳元文科相は2017年4月にColaboの研修に参加しているが、当日、仁藤さんはいなかった)。

写真撮影も「説明者の方などに撮影の可否を尋ね撮影することを心掛け」ていたと議員らは説明するが、「確認なく撮影は行われていました。実際にスタッフや10代メンバーの姿が映った写真が公開されているため、撮影者の名前や投稿した写真の確認などを求めたのですが、それらについても全く回答していません」(仁藤さん)

Colaboの抗議文では視察に参加した全員の名前と連絡先も要求していたが、それも回答は無かった。

「力関係を見せつけたり、『女の子だから』と荷物を運ばせなかったりという女性蔑視な態度を指摘したのですが、回答には、そう『映ってしまったとすれば』『不快な思いを持たれた方がいるとしたら』と、まるで受け手の問題であるかのように書かれていました。これらは差別や暴力があった時に加害者がよくする言い訳です。セクハラについてもそうですが、加害者の意図は関係ありません。私たちは事実を認めて、謝罪して欲しいのです」(仁藤さん)

また10代メンバーの「これまで自分たちがつくってきたもの、大切にしてきたものが一瞬で壊されて、奪われた気持ちだった」「女性を力のない存在として、男性に守ってもらうべき存在と思っているのだと感じた。そういう人がバスカフェに来たことがすごく怖かった」という指摘については、「 (自民党ハウジングファースト) 勉強会メンバー自身大変ショック」と書かれていた。これについても仁藤さんは「驚いた」と言い、「加害者が自身の加害性から目を背けさせるために、自身こそが被害者であるかのように語る典型的な言い訳。真に反省している人から出てくる言葉ではないと思います」(仁藤さん)

他議員から擁護の声、首相は「厳重注意」の意向

馳浩

Colabo視察について、また抗議文への回答などが掲載されている馳氏のHP。

出典:馳氏のHP

当初、馳元文科相のブログに掲載された回答には、基本的に関係者・支援者に向けて開示しているColaboのメールアドレスも記載されており、スタッフが公開しないよう慌てて連絡、当該箇所が削除されるという経緯もあった。

議員らが回答を公表した翌29日の参院予算委員会で、立憲民主党の蓮舫副代表に本件を問われた安倍首相は、「最大限の配慮をすべきだった。大変なご迷惑をおかけしたこと、皆さんの気持ちを傷つけることになったことを自民党総裁として申し訳ないと思っている」とし、議員らを「厳重に注意したい」、そして「行き場を失った子どもたちを、政府として守っていかなければならない」と述べている。

注意しなければならないのは、自民党に限らない。問題が発覚した直後、無所属の議員らから、馳元文科相らの過去の取り組みを引き合いに出し、「仁藤さんが支援されている方達のことを掛け値なく熱心に考えて下さる議員」「保守的な価値観が大勢を占める自民党の中で、人それぞれを大事にしてくれる貴重な議員。馳さんの本質が伝わることを望みます」など擁護するようなTwitterの投稿があり、仁藤さんが「セカンドレイプ」と指摘する事態に。

回答に驚きと失望

Colabo

アウトリーチ時に配布するカード。ホテルと提携し、緊急の宿泊先を案内している。

撮影:竹下郁子

馳元文科相が今回の回答に先立ち、視察の「事実関係を報告」するとし、セクハラなどについて謝罪したのは、自身のHPだった。その間、仁藤さんらに連絡は無かったという。抗議文を出した当事者よりも、有権者に向けた釈明を優先するように見える態度は、象徴的だろう。

記者は3月下旬からバスカフェなどColaboの活動を継続取材しており、視察当日も現場に入っていた。男性議員らの威圧感と、セクハラを受けたことを告発したメンバーの少女らが作業を続けられなくなり、小さく隅に集まってかがんでいた、その対照的な姿が忘れられない。

4月7日に東京都などに緊急事態宣言が出された後、「虐待が強まり家にいられない」「居場所を失い性搾取の被害にあった」、そんな少女たちからのSOSがColaboには急増している。これまで年間550件ほどの相談件数だったが、宣言後の約1カ月ですでに200件を超える相談があったという。繁華街でのアウトリーチ活動でも、より支援の緊急性の高い少女たちと出会うことが増えているそうだ。

今回の回答書では私たちの質問についてほとんど回答がなく、要望については一切応えてもらえていません。急な視察でも受け入れたのは、国会議員の方々に政府の新型コロナウィルス感染症対策で10代女性がこうむっている深刻な影響を知っていただき、政策に活かしていただきたいという思いからでした。このようなことになり、心底驚き、がっかりしています」(仁藤さん)

(文・竹下郁子)

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