ハンコ、意識、自宅Wi-Fiない…大企業若手が感じる「在宅ワークの壁」

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新型コロナウイルス感染拡大に伴う在宅勤務をする企業が増える中、大企業の若手・中堅社員の9割超が「今後も定着を望む」とする一方、8割が「制度に課題や支障がある」と回答。若手の多くが在宅推進派であるものの、環境整備の遅れが浮き彫りになっている。

大企業若手中堅社員による団体「ONE JAPAN」が加盟54社1400人を対象に実施したアンケートで明らかになった。

調査は、同団体がONEJAPAN参加企業54社を対象に、ウェブアンケートを2020年4月13〜19日間に実施した。そのうち従業員1万人以上の大企業の社員が8割を占めており、女性の回答率は26%。産業別では製造業が4割。

新型コロナにより、大手企業の若手・中堅のうち、9割でテレワークは「推奨」された。


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ONE JAPAN


在宅勤務制度利用者のうち、半数近くの45%が「今回初めて利用している」と回答。コロナ前の在宅ワークの浸透率は低かったようだ。

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テレワークをしていない人の理由は「Wi-FiやPC環境が整っていない」が8割。「会社のセキュリティ」および「制度の運用やサポート体制が整っていない」がいずれも6割。

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テレワークで生産性が「上がった」人は26%で「下がった」人の27%と拮抗した。変わらないが4割近くでもっとも多かった。

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8割超が「テレワークに課題や支障」があると感じている。

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具体的なテレワークの課題は多かった順に、(1)Wi-FiやPC環境、(2)コミュニケーション負担、(3)職場の一体感がなくなる、(4)仕事のメリハリが効かない、(5)柔軟な業務のアサイン難しい ——。

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テレワーク以外でも今後望むことは「会議や打ち合わせの抑制」が45%ともっとも多かった。続いて始業・就業時間変更。

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「在宅勤務を阻む3つの壁」

調査では、自由記述から「在宅勤務を阻む3つの壁」を抽出している。

1.意識の壁

「居室自体が 3密に当てはまるにも関わらず、緊急事態宣言後も通常勤務体制を強いられており、社会的にはおかしいと思いつつも、会社方針に従いざるを得ない状況」(製造 男性 30 ~34 歳)

意識の壁は自分の会社だけの問題ではない。社会が変わらないことには取引先に合わせざるを得ない。

「当社社員がテレワークになっても、ビジネスパートナーのテレワークが進められないと意味がないと感じる」(情報通信 男性 35 ~39 歳)

2.ハンコの壁

メルカリやGMOなど「印鑑廃止」に踏み切る企業も出てきているが、伝統的な大企業には根強い慣習が残る。

「判子を押すために出社しなければならない。正しくDX を」(製造 男性 30 ~34 歳)

3.インフラの壁

日本企業のICT投資の低いことが、ここで手痛く効いている。

「在宅勤務トライを行ったが、社内の IT ツールやインフラが整っておらず、社員全員の在宅が不可能ということが判明し、車通勤者は原則、在社勤務となった」(製造 男性 25 ~29 歳)

ONEJAPANの調査では「生活を守るだけでなく、企業の BCP(事業継続計画)対策の観点からも『在宅勤務』を活用した『出社しない働き方』を企業活動として定着させることが、今後の必須条件になってくる」と指摘。

「在宅勤務」が実施しづらい職場でも、出社時間の柔軟な変更や、時差通勤の実施、ハンコに象徴される社内承認システムや手順の変更など「できることはある」としている。

中小企業やスタートアップからは「クライアントである大企業に合わせざるを得ない」の声が上がっている。必然的に、経済活動に大きな影響力をもつ大企業。若手・中堅、取引先から上がるこうした声を受け止め、どう変化できるかが問われている。

(文・滝川麻衣子)

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