パチンコは?図書館は?政府が「自粛緩和OK」指針、自治体から不満も

内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室が全国の都道府県知事に通知した「緊急事態措置の維持及び緩和等に関して」

内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室が全国の都道府県知事に通知した「緊急事態措置の維持及び緩和等に関して」

撮影:吉川慧

新型コロナウイルス感染症に関する「緊急事態宣言」が全国で5月31日まで延長されることを受けて、政府は4日、各都道府県知事に向けて施設の使用制限の緩和、イベントの開催緩和など、緊急事態措置の緩和・解除の目安となる指針を通知した。

通知では、緊急事態宣言に基づく緊急事態措置の緩和・解除を判断する上でいくつかの条件や基本的な感染防止策が例示されたが、ほとんどで「各都道府県において適切に対応・判断を」と記されている。

また、どのような指標に基づいて緊急事態宣言や特定警戒都道府県の指定が解除されるかなどは言及されていない。

全国知事会は政府に対し、解除要件などを分かりやすく国民や事業者に示すように求めている。

緊急事態宣言の発出から1カ月。宣言を延長しつつも経済活動を再開したい政府と、具体的な指標や出口戦略が見えない不安な中で判断を委ねられた自治体との間には温度差も伺える。

博物館・図書館など一部施設の再開認める

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渋谷スクランブル交差点(写真はイメージです)。

撮影:竹井俊晴

新型コロナウイルス対応を担当する西村康稔・経済再生相は5日、全国知事会とのテレビ会議に出席。「これまで通り3密の徹底排除、大規模イベントの自粛、都道府県をまたぐ移動の極力回避に全国で取り組んでほしい」と要請した。

政府は、東京都など重点的対策が必要とされる13の「特定警戒都道府県」については、「徹底した感染防止対策」を前提とした上で、博物館・美術館・図書館、屋外公園など一部公共施設における使用制限の解除・緩和を認めた。

「特定警戒都道府県」以外では、クラスターの発生が確認されていない施設について制限緩和・解除を推奨イベントについても「参加人数が50人未満で、3密の発生を避けるなど感染防止策の徹底が前提」とした上で自粛の緩和を容認した。

安倍晋三首相は5月14日を目途に緊急事態宣言を解除するかどうか判断する方針を4日の記者会見で明かしている。これを受けて西村経済再生担当相は、その1週間後(21日)に解除を再度検討する姿勢を述べた。

全国知事会の飯泉嘉門会長(徳島県知事)は、非常事態宣言の延長は「やむを得ないこと」と理解を示した。一方で、政府の対応に不満を募らせる自治体もある。時事通信によると、神奈川県の黒岩祐治知事は「本日の時点でも明確な出口の戦略は示されなかった」と指摘した

知事会は政府への提言の中で、緊急事態宣言の解除と特定警戒都道府県からの除外の基準について、「具体的に明らかにし、終息に向けた見通しを示すこと」を要求している。

加えて、休業補償の拡充、雇用調整助成金の上限額引上げ、持続化給付金の要件緩和などさらなる経済雇用対策と追加の補正予算編成や、特措法に基づく施設使用制限の「指示」に従わない場合の罰則など法的措置を含めた対策を求めた。

Business Insider Japanでは、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室が全国の都道府県知事に通知した「緊急事態措置の維持及び緩和等に関して」の概要をまとめた。

制限緩和の目安は13の「特定警戒都道府県」とそれ以外の34県で大きく異なり、連休明けに外出自粛を求めない自治体もある。一方でこうした自治体も、他の地域からの人の移動を警戒。対応を迫られている。


外出の自粛と「新しい生活様式」について

専門家会議が示した「人との接触を8割減らす、10のポイント」

専門家会議が示した「人との接触を8割減らす、10のポイント」

厚生労働省

  • 特定警戒都道府県「最低7割、極力8割程度の接触機会の低減」を目指し、外出自粛の協力を要請。
  • 特定警戒都道府県以外:「3つの密」を徹底的に避けるとともに、手洗い・人と人の距離の確保など基本的な感染対策の継続を要請。
  • 感染拡大を予防する「新しい生活様式」の徹底を住民に要請。
  • 都道府県をまたいで人が移動することや、これまでにクラスターが多数発生している繁華街の接待を伴う飲食店などは、年齢などを問わず引き続き外出自粛を促すこと。
  • 「最低7割、極力8割程度の接触機会の低減」は、必ずしも「外出の機会自体を最低7割、極力8割程度減らす」ことを求めるものではなく、「人と人との接触機会を最低7割、極力8割程度減らすこと」が目標
  • 「最低7割、極力8割程度の接触機会の低減」に向けては、専門家会議で示された「人との接触を8割減らす、10のポイント」(5月1日公表)や「新しい生活様式(生活スタイル)の実践例」(5月4日公表)を参考にすること。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年5月4日)

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年5月4日)

厚生労働省


催物(イベント等)の開催制限

(1)特定警戒都道府県

比較的少人数のイベントなどを含め、引き続き主催者に慎重な対応を求めるよう、各都道府県で適切に対応すること。

(2)特定警戒都道府県以外

最大でも50人程度の「比較的少人数」のイベントなどは、

  • 三つの密(密閉、密集、密接)の発生が原則想定されないこと
  • 大声での発声、歌唱や声援、又は近接した距離での会話等が原則想定されないこと
  • 必要に応じて適切な感染防止対策(入場者制限・誘導、手指の消毒設備、マスクの着用、室内の換気等)の実施

を前提に、地域の感染状況等も踏まえて、イベントの制限の解除も含めた適切な対応を検討すること。

※通知では、演奏会(歌唱を伴わないもの)や茶会などの室内イベント、野外におけるイベント(近距離での会話を伴わないもの)などを例示。

(3)特定警戒都道府県とそれ以外での共通事項

まん延防止に当たっては、導入が検討されている接触検知アプリやSNS等の技術を活用して、イベント参加者に係る感染状況等の把握を行うことも有効であることを周知すること。

施設の使用制限について

「緊急事態措置の維持及び緩和等に関して 」

「緊急事態措置の維持及び緩和等に関して 」

内閣官房

(1)特定警戒都道府県

  • 博物館、美術館、図書館などは、必要に応じた入場制限などで「人と人との接触機会の低減」「感染防止対策」の実施を前提に、開放することが考えられる。
  • 閉鎖中の屋外公園などは、住民の健康的な生活を維持するため「人が密集しないこと」など感染防止策の実施を前提に、開放することが考えられる。
  • 特措法に依拠しない営業自粛などの協力依頼をしている施設については、「これまでの対策に係る施設の種別ごとの効果やリスクの態様、対策が長く続くことによる社会経済への影響等について留意しながら、地域の感染状況等も踏まえ、各都道府県において適切に判断」すること。(※通知ではゴルフ場を例示。ロッカールームで他人との接触を避ける工夫、クラブハウスなどでの懇談会・食事会を原則控えるなど「徹底した感染防止対策」を前提に、協力依頼の緩和や解除を含め、各都道府県で適切に判断するよう求めた)

(2)特定警戒都道府県以外

【クラスターが発生した主な施設類型、「3密」が発生しやすい施設類型】

  • 引き続き感染防止についての格段の留意が必要。地域の感染状況などを踏まえて施設の使用制限の要請などを検討するなど、各都道府県で適切に判断すること。
  • カラオケ、ライブハウス、キャバレー、ナイトクラブなどは特に感染リスクが大きいと考えられることに留意すること。
  • 保育所、介護老人保健施設など「事業の継続が求められる事業」は感染防止対策を徹底した上で必要な事業の継続を求めるなど、各都道府県において適切に判断すること。

【クラスターの発生が確認されておらず、「3密」を回避できる施設類型】

  • 「基本的な感染防止対策の徹底」を施設管理者などに強く働きかけることを前提に、施設の使用制限の要請などの解除・緩和を検討すること。

自粛要請の解除・緩和要件の具体例

「緊急事態措置の維持及び緩和等に関して 」

「緊急事態措置の維持及び緩和等に関して 」

内閣官房

「徹底した感染防止対策」を前提に、地域の感染状況等を踏まえて各都道府県が施設の使用制限等の緩和や解除を検討する。

【新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令に基づく施設類型】

劇場、観覧場、映画館、演芸場、集会場、公会堂、展示場など

  • マスク着用の上、十分な座席の間隔(四方を空けた席配置等)が確保されること。
  • 入退出時(入退出時の行列含む)や集合場所等において人と人との十分な間隔(できるだけ2mを目安に)が確保されること。
  • 適切な消毒や換気をすること。
  • 開催するイベントは、参加する者が「比較的少人数のもの」などに限定すること。

博物館・美術館・図書館

  • マスク着用の上、十分な座席の間隔(四方を空けた席配置等)が確保されること。
  • 入退出時(入退出時の行列含む)や集合場所等において人と人との十分な間隔(できるだけ2mを目安に)が確保されること。
  • 適切な消毒や換気をすること。
  • 必要に応じた入場制限などで、施設内を移動する際にも人と人との接触を避けるための十分な距離(できるだけ2mを目安に)を確保すること。

百貨店・マーケットなどの小売店、理髪店・質屋・貸衣装屋などのサービス業、自動車教習所・学習塾などの学習支援業

  • マスク着用の上、十分な座席の間隔(四方を空けた席配置等)が確保されること。
  • 入退出時(入退出時の行列含む)や集合場所等において人と人との十分な間隔(できるだけ2mを目安に)が確保されること。
  • 適切な消毒や換気をすること。
  • 従業員と客との間、客と客との間にパーテーションを設けること。

パチンコ店などの「遊技場」

  • 「3つの密」の発生のしやすさや発生の状況等を考慮し、各都道府県において適切に判断すること。
  • マスク着用の上、十分な座席の間隔(できるだけ2mを目安に)が確保されること。
  • 入退出時(入退出時の行列含む)や集合場所等において、人と人との十分な間隔(できるだけ2mを目安に)が確保されること。
  • 適切な換気が行われるとともに、客の入れ替えのタイミングで消毒すること。
  • 客同士の大声での会話を行わないよう呼びかけること。
  • BGMや機械の効果音等を最小限のものとし、客同士が大声で会話していないことを従業員が確認できる状態にすること。

【施行令に掲げられていない施設類型】

行楽を主目的とする宿泊事業を営むホテル・旅館等

  • 営業自粛などの協力を依頼している場合、不要不急の帰省や旅行など都道府県をまたいで人が移動することを極力避けるというまん延防止の観点も踏まえながら、地域の感染状況等に応じて、各都道府県において適切に判断すること。

医療機関や企業・官公庁等の事務所など、事業の継続が求められる事業

  • 感染防止対策を徹底した上で、必要な事業の継続を求めることを原則として、各都道府県において適切に判断すること。

営業時間の短縮等の協力依頼を行っている施設(食堂、レストラン、喫茶店など)

  • 個室などの密閉した部屋の使用や、座敷席等における多人数での使用を控えること。
  • 座席の間にパーテーションを設けたり、座席の間隔を十分に空けるなど、「3密」の環境を徹底的に排除すること。
  • 接客時にマスクを着用すること。
  • 客の入れ替え時、適切に消毒・清掃すること。
  • 大皿での取り分けによる食品提供を自粛すること。
  • 従業員や出入り業者に発熱や感冒症状がある場合、迅速かつ適切に対応するなど衛生面・健康面の管理を徹底すること。
  • 酒類の提供時間についても配慮すること。
  • 以上のような徹底した感染防止対策実施される場は、営業時間短縮などの協力依頼の緩和などを検討すること。

(3)特定警戒都道府県及び特定警戒都道府県以外で共通の事項

  • まん延防止に当たっては、導入が検討されている接触検知アプリやSNS等の技術を活用して、施設利用者に係る感染状況等の把握を行うことも有効であることを周知すること。
  • 施設の使用にあたっての感染防止対策としては、5月4日の専門家会議で示された「(2)業種ごとの感染拡大予防ガイドラインに関する留意点」なども参考とすること。

出勤について

  • 特定警戒都道府県「出勤者数の7割削減」を目指すことも含め、接触機会の低減に向けてテレワークやテレビ会議、出勤が必要となる職場でもローテーション勤務などを強力に推進すること。
  • 特定警戒都道府県以外:テレワークやテレビ会議を推進するとともに、職場に出勤する場合でも、時差出勤、自転車通勤など人と人との接触を低減する取り組みを推進すること。
  • いずれの場合も、職場において感染防止のための取り組みを促すとともに、「3つの密」を避ける行動を徹底するよう促すこと。
  • 国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な業務を行う事業者、これらの業務を支援する事業者についておいては、引き続き、「3つの密」を避けるために必要な対策を含め、十分な感染拡大防止対策を講じつつ、事業の特性を踏まえ、業務を継続することとする。

(文・吉川慧)

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