選択肢は「経済を再開するか人命を守るか」のどちらか? 専門家が主張する"第3の選択肢"とは

検査

Associated Press

  • アメリカでは新型コロナウイルスの死亡者数が増加する中、一部の州が経済の再開を目指していて、経済と公衆衛生の「非常に難しい選択」を迫られていると言われている。
  • 国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長で、トランプ政権の新型コロナウイルス対策をリードするアンソニー・ファウチ博士は、CNNのインタビューで「すぐにでも何らかの形で平常に戻るために、どのくらいの死者数や苦しみを受け入れられるか?」と尋ねた。
  • しかし、一部の専門家はアメリカ人の命とアメリカ経済を守る第3の選択肢があるという。検査の拡充と接触者の追跡だ。

新型コロナウイルスの死亡者数が増加する一方で、複数の州が経済の再開を目指す中、アメリカでは"経済か公衆衛生か"という2つに1つの議論になりつつある。

ロックダウン(封鎖)が続く中、アメリカでは6週間で3000万人が失業を申請している。だが、リークしたトランプ政権の予測では、州の規制緩和によってアメリカ全体で6月1日までに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で少なくとも1日あたり3000人が死亡する可能性があるという。

国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長で、トランプ政権の新型コロナウイルス対策をリードするアンソニー・ファウチ博士は、CNNのインタビューでアメリカが「非常に難しい選択」に直面していると語り、一部の州のロックダウン解除の決断は時期尚早だと批判した。

「すぐにでも何らかの形で平常に戻るために、どのくらいの死者数や苦しみを受け入れられるか?」とファウチ博士は尋ねた。

トランプ大統領はABCのインタビューで、それぞれの州がロックダウンの規制を縮小し始めるにつれ、「一定の」新型コロナウイルスによる死亡者が出る可能性はあると認めた。「マンションや家など、どこであれ人々を閉じ込めておくことはできないからだ」という。

だが、一部の専門家はアメリカ人の命とアメリカ経済を守る第3の選択肢があると話している。検査の拡充と感染者の追跡だ。

「『経済を再開したいか?』それとも『命を救いたいか?』というのは誤った選択だ。第3の道があると、わたしは考えている」とハーバード大学グローバルヘルス研究所のアシシュ・ジャー(Ashish Jha)所長はCNNに語った。

「これまでの3カ月間を常に検査し続ける"検査・追跡・隔離インフラ"作りにあてていれば、わたしたちは毎日2000人、3000人のアメリカ人を死なせず経済を再開することができただろう」

ハーバード大学の研究者らは、安全な方法で「経済を完全に再び動かす」ためには、アメリカは7月の終わりまでに1日あたり少なくとも2000万件の検査を実施する必要があるとしている。これはハーバード大学のエドモンド・J・サフラ倫理学センターが45人のさまざまな分野の専門家の協力の下、「Roadmap to Pandemic Resilience(パンデミックからの回復力ロードマップ)」というタイトルでとりまとめたものだ。

このロードマップはアメリカ経済の再開には3つの要素 —— 十分な検査、感染を追跡する能力、隔離への支援 —— が不可欠だと強調している。

検査インフラの不足が選択肢を狭めている

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Getty Images; Photo Illustration by Business Insider

ジャー所長は、アメリカは「この苦境からわたしたちを救い出すことをしない選択をし、わたしたちは今、『この(経済の再開か命を救うかという)ひどい2つの選択肢のどちらがいいか?』の決断を迫られている」と指摘する。

米疾病予防管理センター(CDC)の元所長代理のリチャード・ベッサー(Richard Besser)氏も同様に「この質問は、全ての人命を守るためにあらゆる手段を講じてからでないと尋ねることのできないもの」だとCNNに語っている。

「この感染症がどういう状況にあるのか知るための検査能力をわたしたちはまだ持っていないし、必要な接触者の追跡の規模も拡大していない」とベッサー氏はCNNに語った。

「感染または感染者との接触が分かった時に、隔離するための安全な場所も提供されていない」

「『お金があって白人なら大丈夫だ』と言い、『そうでないなら幸運を』と言っている」

ベッサー氏は、政府は「アメリカにいる全ての人が自分の健康、家族の健康、コミュニティーの健康を守る対策が取れるよう、あらゆる手段を講じる」ことに集中する必要があると指摘する。

「今はそうではない」とベッサー氏は言い、「だからこそ、全ての職場に身を守るための装備が整うまで、この質問はすべきでない」と語った。

CNNのインタビューに応じたオレゴン健康科学大学の准教授で救急医のエスター・チュウ(Esther Choo)氏も、"経済か命か"という議論のあり方に疑問を呈している。「これは、経済を再開するか人命を選ぶかの問題ではない。そこまで厳しくある必要はない」とチュウ氏は言う。

「わたしたちが言っているのは、スマートなアプローチを取ろうということだ」とチュウ氏は続けた。

「十分な検査が実施できれば、どこがホットスポットなのかをきちんと把握し、素早くアプローチできる。経済を再開した後でも、検査と監視をしっかりやっていれば、どこがうまくいっていないかを把握し、人々が入院したり命を落としたりする前に対応できる」

[原文:The US is being presented with 2 choices: the economy or public health. Experts say it's a false dichotomy and there's a 3rd option.

(翻訳、編集:山口佳美)

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