2015年9月18日、サウジアラビアの聖都メッカ。
AP Photo/Mosa'ab Elshamy, File
- 米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された最新研究によると、今後50年以内に30億を超える人々が耐え難い暑さの中で生活せざるを得なくなる可能性があるという。
- 最悪のシナリオでは30億人が、より可能性の高いシナリオでは少なくとも10億人が影響を受ける見込みだと、AP通信は報じている。
- 影響を受ける人の数は、二酸化炭素の排出量を減らすためにわたしたちがどのような行動を取るかによる。
- 現在、2000万人が非常に高い気温の影響を受けている。
米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された最新研究によると、2070年までに最大で現在の世界の人口の半数が「生活できない暑さ」に対処せざるを得なくなる可能性があるという。
同研究によると、今後50年以内に10~30億人が耐え難い暑さに苦しめられる見込みだ。つまり2070年までに世界の人口の約3分の1がこうした状況に置かれる可能性があるということだ。
この研究の共同執筆者でオランダにあるワーへニンゲン大学の生態学者マーテン・シェファー (Marten Scheffer)氏は、この予測は「普通の人々、貧しい人々、平均的な世界の市民にとって生活できない」ものだとAP通信に語った。
実際にどのくらいの数の人が影響を受けるかは、世界の人口や二酸化炭素の排出量がどのくらい急速に増えるかによると、AP通信は報じている。
報道によると、最悪のシナリオでは30億人が、より可能性の高いシナリオでは少なくとも10億人が影響を受ける見込みだという。
「影響は大きく、残された時間は少ない。だからこそ、わたしたちは心配している」とコーネル大学の気候科学者ナタリー・マホワルド(Natalie Mahowald)氏はAP通信に語った。
マホワルド氏は今回の研究には参加していないが、「この最新研究は理にかなっているし、過去の研究とは異なる形で人間が作り出した気候変動の緊急性を伝えている」とAP通信に話している。
シェファー氏はAP通信に対し、「人間が作り出した気候変動によって」世界の年間平均気温が1度上がるにつれ、約10億人が生活するには暖か過ぎる状況に置かれることになると語っている。
温室効果ガスの排出量を減らせば、年間平均気温は人間がこれまで6000年間生きてきた約11~15度の範囲を超えることはないと、USA Todayは報じている。
「これまで通りの生活を送った場合の気候変動シナリオでは、この気温の範囲が(過去6000年で上がったよりも)今後50年でさらに上がると見られる」と米国科学アカデミー紀要に掲載された研究は述べている。
AP通信によると、この気温の範囲は「クマや鳥、ハチ同様、人間や文明が繁栄する気候条件」を研究した結果、見つかったという。人間はこれより暑い気候でも寒い気候でも生きることができるが、差が大きくなればなるほど生活はしづらくなる。
研究者らは気温が最も上がりそうな地域に注目し、50年後には約20億人がこうした地域で暮らすことになるだろうと見ている。
研究の結果、年間平均気温が29度を超えるサハラ砂漠といった場所ですでに2000万人が経験しているのと同じような気温の上昇がアフリカ、アジア、南米、オーストラリアの大部分で起きる見込みだと分かったとAP通信は報じた。
「地球の広範囲で人が住めないほどの暑さとなり、気温が再び下がることはないだろう」とシェファー氏はUSA Todayに語った。
「これは直接的に壊滅的な効果をもたらすだけでなく、人間社会を新たなパンデミックといった未来の危機に立ち向かいづらくするだろう。そうならないために唯一できることは、二酸化炭素の排出量を早急に減らすことだ」
(翻訳、編集:山口佳美)