アリゾナ州のダグ・デューシー知事。
Ross D. Franklin/AP
- アリゾナ州は、発生のピークがまだ到達していないと予測した科学者チームの作業を終了させた。
- アリゾナ大学の専門家は州の予測モデルを作成しており、ピークは5月22日以降になると予測していた。
- しかし、共和党のダグ・デュセイ知事は今週再開できる事業があると発表した後、彼らの仕事は停止させられたと、地元のテレビ局と新聞が報じた。
- アリゾナ州は現在、国の予測データなど他の情報源を参照していると述べている。
アリゾナ州は、州知事がウイルス規制を解除しようとしているにもかかわらず、ウイルス拡大のピークに達していないと予測した専門家チームとの仕事を打ち切った。
地元テレビ局のABC15アリゾナと地元紙のアリゾナ・リパブリック(Arizona Republic)は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がアリゾナ州を訪問する前日、5月4日の夜、同州の保健局が予測チームに対し、作業を中止するよう求めたと報じている。
この命令が出されたのは、同州のダグ・デューシー(Doug Ducey)知事が、今後数日のうちにサロンやレストランなどの事業に対する制限を解除すると発表した数時間後のことだ。知事は「正しい方向に進んでいると確信している」と話した。
しかし、アリゾナ州立大学とアリゾナ大学から集まったボランティアの専門家23人以上で構成されたチームは、4月末、同州で発生のピークがまだ到来しておらず、5月22日以降になる可能性があると予測していた。
アリゾナ大学
Nagel Photography/Shutterstock
ABC15が入手した電子メールで、アリゾナ州保健局の公衆衛生統計のチーフ、スティーブン・ベイリー(Steven Bailey)氏は、予測チームに対して「我々は部門のリーダーから予測とモデリングに関するすべての作業を休止するように求められている」と述べている。
ABC15の報道によると、同氏はチームが夏の終わりか秋の初めに再編成される可能性があると述べたが、チームの作業が中断される理由は明らかにしなかった。
ワシントン・ポストとアリゾナ・リパブリックの報道によると、アリゾナ州当局は、連邦政府機関からの情報など、他の情報を利用すると述べたという。ただし、今のところ連邦政府の予測は公表されていない。
州保健局の局長、カーラ・クライスト(Cara Christ)氏はアリゾナ・リパブリックに対し、「我々は彼らに少し間を置くように要請した」と述べている。
「最新の連邦緊急事態管理庁(FEMA)の予測モデルを入手しており、それが現在の状況をよく表していると考えている」
この動きは、トランプ大統領が死亡者数の増加につながる可能性があることも認めつつ、経済の再開を強く求めている中で起きた。
デューシー州知事は以前、自宅待機の命令を5月15日まで延長していたが、5月4日に方針を変更して、以降の営業を許可すると発表した。
2020年3月、アリゾナ州フェニックスでパンデミック対策担当者と話をするダグ・デューシー知事。
David Wallace/The Arizona Republic via AP
専門家たちは予測チームの休止を憂慮している。ブラウン大学の疫学者であるジョサイア・D・リッチ(Josiah D.Rich)氏は、「このアプローチは 『悪い知らせをした人を撃て(Shoot the messenger)、しかも迅速に』 ということのようだ」とワシントン・ポストに語った。
アリゾナ州の担当者のベイリー氏は以前、チームの研究者らは「州の機密データに完全に、そして自由にアクセスできる」と述べていたと、ワシントン・ポストは報じている。
「現在は、これまで生きてきた中で前例のない状況であり、今後は急速にさらに悲惨な状況になるだろう」と同氏はこれまでに報じられていなかった書簡に記している。
「したがって、私は我々が要求していることの重要性を強調することはできない」
ベイリー氏はワシントン・ポストに対するコメントを拒否した。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)