アメリカの偵察機、SR-71ブラックバード。
AP Photo/Itsuo Inouye
- イーロン・マスクとグライムスが最近、好きな飛行機はSR-71ブラックバードと述べ、超音速飛行が可能な点、武装していない点を挙げた。
- グライムスが「A-12」はブラックバードの原型であるとツイートし、彼らの赤ちゃんの名前(X Æ A-12)に隠された意味が、明らかになった。
- ブラックバードはアメリカ空軍において、高高度偵察任務で活躍した。7万フィート以上の高さまで到達し、音速の約3倍の速さで飛行することができた。
イーロン・マスク(Elon Musk)と、恋人で歌手のグライムス(Grimes)の間に、第1子が誕生した。この男の子の、X Æ A-12という名前の読み方が人々を混乱させる中、グライムスは2人がどのようにこのユニークな名に辿り着いたのか、説明した。
グライムスはツイートで、それぞれに隠された意味を説明し、最後の「A-12」はロッキード製の航空機A-12を参考にしたと述べた。1960年代に短い間ながらアメリカ中央情報局(CIA)で使用された偵察機だ。有名なSR-71ブラックバード(SR-71 Blackbird)の原型となった機体で、グライムスとマスクのお気に入りだという。ブラックバードの方は冷戦時代に活躍した。攻撃用にも防御用にも武器を装備しておらず、純粋な高高度偵察機だった。軍事用のコンコルド(Concorde)とも言える飛行機で、巨大ロケットのような2基のエンジンが、地球の大気圏における最高度での超音速飛行を可能にした。
2人のお気に入りの偵察機を見てみよう。
人工衛星にカメラが付いていなかった頃、アメリカが偵察写真を撮影するのは航空機に頼っていた。その目的のために最初に作られたものの1つがU-2ドラゴン・レディ(U-2 Dragon Lady)で、7万フィート(約2万1000メートル)の上空を飛行することができた
偵察機、U-2ドラゴン・レディ。
US Air Force/Staff Sgt. Robert M. Trujillo
非常に有能だったが、1つ問題があった。フランシス・ゲイリー・パワーズ(Francis Gary Powers)のU-2が1960年にロシアで撃墜された例のように、撃墜される可能性があったのだ。ドワイト・アイゼンハワー(Dwight Eisenhower)大統領はこの欠点に気付くと、敵のミサイルをかわすことのできる新たな偵察機を発注した
偵察機、U-2ドラゴン・レディ。
Reuters
そこで登場したのが、スピードとステルス性を重視した超音速偵察機、SR-71ブラックバードだ
偵察機、SR-71ブラックバード。
Eugene Berman / Shutterstock.com
製造元にはロッキード(Lockheed)が選ばれ、同社の先進開発部門のスカンク・ワークス(Skunk Works)を通じて製造された。航空技術者のクラレンス・「ケリー」・ジョンソン(Clarence "Kelly" Johnson)がプロジェクトを指揮した
偵察機、SR-71ブラックバード。
Eugene Berman / Shutterstock.com
最初に登場したのがA-12オックスカート(A-12 Oxcart)。1人乗りの偵察機で、ベトナムと朝鮮半島でのミッションに使われた。ミッションは成功したものの、ソビエト連邦の技術レベルも上がっていたため、時代遅れになる恐れがあった
偵察機、A-12オックスカート。
Reuters
A-12はCIAが発注したもので、バージニア州ラングレーの本部には、モデル機が展示されている
偵察機、A-12オックスカート。
AP Photo/Pablo Martinez Monsivais
A-12から、アメリカ空軍向けに2人乗りのSR-71ブラックバードが作られた。前身であるA-12に比べ、ブラックバードは表面のレーダー反射に優れ、敵機から気付かれにくかった
偵察機、SR-71ブラックバード。
Dan Simonsen / Shutterstock.com
乗員は2人で、パイロットが前、偵察兼ナビゲート担当が後ろに座った。高高度を飛ぶため宇宙服のような飛行服を着用した
偵察機、SR-71ブラックバード。
AP Photo/Itsuo Inouye
コックピットに座るのは1人だ
偵察機、SR-71ブラックバード。
National Museum of the US Air Force
動力源である2基のプラット・アンド・ホイットニーJ58(Pratt & Whitney J58)は、飛行機のエンジンというよりロケットのよう。これがブラックバードの高高度超音速飛行を可能にした
偵察機、SR-71ブラックバード。
Reuters
高度8万フィート(約24キロメートル)を超えると時速2000マイル(時速3200キロメートル)以上の速度で飛べる。音速の約3倍だ。危機に直面した場合、パイロットはアフターバーナーを使用すれば、ミサイルなど、あらゆる脅威から逃れることができた
偵察機、SR-71ブラックバード。
Aaron Kohr/Shutterstock.com
ブラックバードのスピードと高度は、わずか数時間で大陸を横断することができるものだった。操縦は目視で行われ、道路などではなく、山脈や主要な海岸線を頼りにしていた
偵察機、SR-71ブラックバード。
Gary Cameron/Reuters
燃料が少なくなると、空中給油機によって満タンにし、長時間空中にいられるようにした。ブラックバードは最低限の燃料で飛び立ち、任地へ向かう前に空中給油することが多かった
偵察機、SR-71ブラックバード。
AP Photo/Walt Zeboski
素材はチタンが採用された。運用される高度や速度によっては、温度が数千度のレベルに達するためだ
偵察機、SR-71ブラックバード。
Gary Cameron/Reuters
初飛行は1964年、アメリカ空軍での運用開始が1966年で、1990年の退役まで30年近く飛び続けた。運用にかかる莫大な費用、人工衛星の技術的な進歩、そしてソビエト連邦の崩壊など、すべてが退役の原因となった
偵察機、SR-71ブラックバード。
Gary Cameron/Reuters
アメリカ空軍の中でも最も機密性の高い航空機だったのは、ほとんどの航空機の2倍以上の高度で飛ぶことができたからだ。その性能は、アメリカの情報機関にとって不可欠だった
偵察機、SR-71ブラックバード。
Gary Cameron/Reuters
多くの超音速航空機と同じく、ブラックバードは時代を先取りしたものだった。他の航空機では代わりを務めることはできなかった
偵察機、SR-71ブラックバード。
AP Photo/Mark Faram
グライムスは、自分とマスクは同機のファンであり、その理由は武装していないからで、それ自体は無害だ、とツイートした
偵察機、SR-71ブラックバード。
Imageforge / Shutterstock.com
出典:Twitter
ブラックバードが装備していた唯一の武器はカメラで、地上にいる部隊と諜報機関にとても有益な情報を提供した
偵察機、SR-71ブラックバード。
AP Photo/HO
アメリカ航空宇宙局(NASA)も空軍が運用を停止した後、1997年までテストに使用し、結果として最も長く運用された偵察機となった
偵察機、SR-71ブラックバード。
Judson Brohmer/USAF
出典:NASA
イーロン・マスクは航空宇宙が大好きなことで有名だ。経営するスペースX(SpaceX)は、人類を宇宙へ連れて行くロケットの製造を目指している
スペースXのイーロン・マスク。
Kevork Djansezian/Getty Images
この一風変わった起業家が、SR-71のような画期的な飛行機がお気に入りだとしても、驚くことではないだろう
偵察機、SR-71ブラックバード。
US Air Force
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)