ソフトバンクは2019年度通期決算を発表。堅調な成長ぶりをアピールするとともに、新型コロナウイルスの影響下でも「固くキチッと増収増益したい」と宮内謙社長は語った。
出典:ソフトバンク
ソフトバンクは5月11日、2019年度通期決算を発表した。売上高は4兆8612億円(前年度比4.4%増)、営業利益は9117億円(同11.4%増)、純利益は4731億円(同2.3%増)と、同社史上最高益を記録している。
同日にウェブで開催された決算説明会で同社の宮内謙社長は「全事業増収」と、主力である個人向け通信サービス以外にもヤフー事業や法人向けサービス、その他などすべての面で好調であるとアピールしている。
2019年度通期決算の概要。
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その中でも顕著な伸びを見せているのは「ヤフー」および「流通・その他」事業。ヤフー(Zホールディングス)については既報の通り初の売上高1兆円を突破。
流通・その他事業においては、決済代行事業を行うSBペイメントサービスが前年同期比60%増となる営業利益約69億円を達成。2019年度の決済取扱高が約3.5兆円にのぼるなど、日本のキャッシュレス促進のブームの中で着実に利益を上げている。
コロナの影響は通信には軽微、広告事業の見通しは不透明
2020年度の業績予想。
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決算内容を踏まえて、宮内社長は2020年度の経営方針および業績予想を発表。売上高は4兆9000億円、営業利益は9200億円とそれぞれ2019年度対比で1%増、純利益は4850億円と3%増と2019年度の成長に比べるとやや抑え気味の目標を掲げている。
とはいえ、競合のNTTドコモの場合は、先の4月28日に開催した2019年度決算会見において新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け「合理的な算定が困難」(NTTドコモ吉澤和弘社長)として業績予想の発表を見送っている。それを踏まえるとソフトバンクはやや強気の姿勢とも言える。
ソフトバンクは新型コロナウイルスの影響をどのように考えているのか。宮内社長は通信領域とヤフー領域の2つに分けて足下の影響について以下のように報告した。
新型コロナウイルスの影響。
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通信領域
- 実店舗への来店者は確実に減少し、新規契約獲得や端末販売も落ち込んでいるが、解約率も低下。
- 外出自粛、テレワークの影響で通信トラフィックは固定・モバイルともに増。
- 法人ソリューション(G Suite、Microsoft 365、Zoomなど)の需要の高まりを受け売上高は増。
→トータルでは通信事業への影響は軽微。
ヤフー領域
- 特定業種の広告出稿、旅行・飲食予約事業の利用は減少。
- サブスクリプション系サービスの推移は安定。
- 巣ごもり消費の影響で、ECサービスの売上高と各種サービスの利用時間は増加傾向。
→トータルで、広告の先行きの不透明感は否めないものの、ECのさらなる成長を目指す。
宮内社長は会見で「(売上高)9200億円はコミットする数字。通信事業はまだいけると私は思っている」と自信を示している一方で、今後の状況変化の予測がつかないことから「軽率に甘い数字をつくることはできない。分からないものは悲観的に見ておくべきだろう」と話した。
波乱の2019年度。2020年度の投資回収なるか
2019年度はZOZO買収など、ヤフーのEC領域に強化に投資した年だった。
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2019年度を振り返るとソフトバンク(とその親会社のソフトバンクグループ)の周辺では数々の大きな出来事があった。
非通信事業で主力のEC強化の動きはその最たるもので、2019年5月にはヤフー(Zホールディングス)の子会社化を発表。そこから、続けざまにヤフー・アスクル対立騒動(7〜8月)、ZOZO買収(9月)と大きく投資を行っていた。
また2019年度は、PayPayやDiDi、WeWork、OYO Hotelsなどの新規事業への投資も積極的に行ったため、2019年度通期の持分法損益は424億円を計上しているが、宮内社長は「近々黒字転換すれば大きな利益貢献をする」と今後の展開に期待感を見せている。
2020年度はLINEがソフトバンクの傘下となる見通し。
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2020年度は、3月から始まっている5Gサービスのエリア拡大に加え、さらに、2019年11月に発表されたZホールディングスとLINEの経営統合が2020年10月に控えている。その影響も2020年度の経営方針内には織り込み済みとなっているが、同社がアフターコロナ、ウィズコロナの世界でどのような成長を遂げるか注目したい。
(文・小林優多郎)