東京・世田谷の楽天本社クリムゾンタワー。
撮影:今村拓馬
楽天は5月13日、2020年12月期第1四半期決算を発表。グループの連結売上高は前年同期18.2%増の3314億円、モバイル事業などへの投資がかさんで営業損益は240億円の赤字(前年同期は1137億円の黒字)、最終損益は354億円の赤字となった。前年同期の最終損益は1049億円の黒字。新型コロナウイルスの感染拡大で、巣ごもり消費によるネット通販好調の一方、携帯電話事業への先行投資がかさんだことなどが影響した。
出典:楽天
主力事業であるECプラットフォーム「楽天市場」のほか金融事業、投資事業、トラベル事業など幅広い事業領域をもつ楽天にとって、新型コロナウイルスの影響はどのように現れているのかは、注視する必要がある。
そんな中、決算資料の前半には、非常に興味深い表が1枚挿入されている。以下のものだ。
楽天の主要事業における新型コロナウイルスの影響を図示したもの。売り上げに対する内訳の比率には言及していない。
出典:楽天
ラクマなどフリマアプリも含んだECは4月の流通額が前年比57.5%増で推移し、巣ごもり消費をうけた電子書籍(kobo)も好調な一方、楽天トラベル、楽天チケットを筆頭に大きな影響を受けている事業がある。
悪影響を受けている2事業については三木谷浩史・楽天社長は質疑のコメントの中で「トラベル、スポーツこの2つについては、大変申し訳ないが、当面は辛抱の時代だと思っている」「トラベルとチケットについては、回復に時間がかかるとみている」と、先行きが見通せないこの状況下でも、とりわけ厳しい見立てをしていることをうかがわせる。
決算短信の付属資料のなかでも、トラベルは3月以降に予約の低迷・キャンセルが相次いでいるとし、当面の売り上げ減少を見込む、としている。
決算会見はオンラインで実施された。ワークフロムホーム対応として、三木谷浩史・楽天社長(右下)は自宅からの参加だった。
出典:楽天
一方で楽天モバイルについては、通常は全国569店舗の実店舗ネットワークの多くが臨時休業の影響を受け数字が伸び悩むことが想像されるが、「80%がオンラインサインアップ」(三木谷氏)ということもあり、新型コロナによるビジネス影響そのものはない、との認識だ。1年間実質無料のUN-LIMITプランの進捗については、「だいたい予定通り」との表現にとどめ、実数の言及はなかった。
新型コロナの影響下で楽天のビジネスがどうあるかは、この上下の矢印が示す「好不調」の内訳がどういった売り上げ比率なのかにかかっている。
質疑ではこの点にも質問が飛んだが、「プラスとマイナスが綱引きしている状態」「総じていえばプラスに働いた」(三木谷氏)として、楽観的なコメントは意図的に控えた印象が強い。
(文・伊藤有)