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中国メディアの中国青年報、中国社会科学院、マッチングアプリの探探(Tantan)は5 月上旬、「アフターコロナ・90後(1990年代生まれ)の価値観の変化」と題した報告書を発表した。コロナが生活観や仕事観、消費観にどんな影響を及ぼしたか、探探ユーザーへのアンケートから探った。
自粛期間は料理、運動、睡眠が増加
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中国では武漢が封鎖された1月23日から約1カ月にわたり、全土で外出が制限された。2月中旬に経済活動は再開したが、今の日本と同じようにテレワークが推進された。
調査によると、90後の36.7%が料理に時間をかけるようになり、男性はその傾向がより高かった。北京市の会社員、陳慧さん(28)は、「本来の休みは1月30日までだったけど、何度も延長され、2月16日まで休みになった。この間、SNSには『涼皮(小麦粉から作った麺料理)』の手作り写真がたくさん投稿されていた」と話した。
寝たいだけ寝たと回答した人が多かった一方で、調査を実施した探探の責任者は「テレワークで通勤の時間が浮き、オンラインで楽器演奏や多肉植物栽培を学んでいた人もいた」と紹介した。
コロナ予防、基本は日本と同じ
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新型コロナの流行で、健康への意識は高まったようだ。その目的は人によって違いがあり、「コロナにかからないようにする」「出勤・通学できなくてもリズムを維持する」「人に会わない期間にダイエットする」などに分かれた。
前出の陳さんは、「家にこもって食べてばかりだったので、ダイエットのため途中から1日2食にして1日1時間ダンスのオンラインレッスンを受けるようになった」という。 前出の陳さんは、「家にこもって食べてばかりだったので、ダイエットのため途中から1日2食にして1日1時間ダンスのオンラインレッスンを受けるようになった」という。
先行き、20代後半は楽観的、20代前半は就活を心配
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外出制限で、小売り・飲食業界を中心に失業者が増えているが、先の見通しについては「楽観派」が多かった。 調査によると、26-28歳は「コロナが終われば経済はよくなる」と楽観的態度を持つ人が多く、中でも自営業・起業家は前向きさが目立った。
一方、21-25歳ではそれより上の世代に比べて、悲観的な見通しを持つ人が多かった。調査の責任者は「大学生や社会人の経験が少ない層は、企業のリストラや採用減を心配している」と分析した。
6月に大学院を修了する大連市の女性(25)は、「20代は企業で経験を積んで30歳でフリーランスになりたいと思っていた。けれど、今回のコロナで給料が減ったり仕事を失った友人もいる一方、私の父は鉄道会社、母は病院に勤めていてコロナ対応で忙しそうだったけど、生活は保障されていた。就職については慎重に考えたいと思うようになった」と話した。
エッセンシャルワーカーが尊敬の対象に
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「尊敬する職業」の上位には、新型コロナの最前線で活動した職種が並ぶ。医療崩壊が起きた湖北省に支援に入った医療従事者は、“英雄”として称賛を受けた。社区とは日本の町内会・自治会のようなコミュニティーで居住区での集団感染を阻止する役割を担った。
また、外出しない生活を支えてくれた出前配達員、宅配ドライバー存在感もこの時期は強く感じられたようだ。
78%が「貯蓄始めた」、消費態度は大きく変化
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金銭面では節約傾向の高まりが浮き彫りとなった。90後を語るキーワードの一つとして、好きなだけ消費する「月光族」(月=月給、光=中国語でなくなるという意味)という言葉があるが、先行きの見えない状況に備えの必要性を感じた人が多いようだ。
調査責任者によると、「食事のデリバリー、ミルクティー、コスメなど、日常的な支出を少しずつ減らそうと考えている女性も多かった」という。
コロナ後にやりたいことは二極化
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「コロナが落ち着いたらやりたいこと」からは、コロナの影響による2種類のストレスが感じられた。一つ目は、「控えていた外出や人と会うことの再開」。もう一つは「仕事や勉強の遅れを取り戻すこと」だ。
中国は受験を控えた高3、中3から登校が始まり、他の学年も徐々に登校できるようになるが、大学は受験指導の必要がないため感染対策が優先され、今も大部分でオンライン講義が続いている。だが、河北省の大学院生、劉さん(仮名、25歳)は「文系の学生は影響が少ないけど、私は実験をしないと修了論文が書けないので、修了を遅らせることになりそうだ。みんな焦っている」と話した。「このままゆっくりした生活が続いてほしい」と答えた人も12.1%おり、20代の価値観の多様化が現れている。
1割がコロナ対策のボランティア参加
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パンデミックが起きた湖北省には4万人以上の医療従事者が全国から支援に入った。政府によるとそのうち3分の1が「90後」だったといい、上の世代に比べて「冷めている」と思われていた20代への評価が大きく高まった。
「母国を守りたい」、社会の構成員としての自覚高まる
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新型コロナとの戦いで、90後の国を守りたいという気持ちはかつてなく大きくなっているようだ。メディアでは、若い宅配ドライバーや、病院送迎ボランティアの活動が繰り返し報道されたのも影響しているだろう。
上海在住の日本人女性(30代)は、「マスクをしていない高齢に、マスクをつけるよう若い人たちが説得しているのを見かけた」という。
浦上早苗: 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者。早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社(12年半)を経て、中国・大連に国費博士留学(経営学)および少数民族向けの大学で講師のため6年滞在。最新刊「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。未婚の母歴13年、42歳にして子連れ初婚。