明暗分かれたNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク決算で見えてきたサブブランド化と楽天モバイルの関係

3キャリアのロゴ

国内3キャリアは2020年通期決算を発表した。

撮影:小林優多郎

携帯電話キャリア3社の2020年度3月期連結決算が出そろった。NTTドコモは減収減益だったものの、KDDIとソフトバンクは増収増益となった。同じタイミングにも関わらず、全く逆の決算となった。

通信業界においては、2019年10月に電気通信事業法が改正された。総務省は競争環境の激化を期待していたが、第4のキャリアとして参入する楽天モバイルが商用サービスを開始できずに失速。

3キャリアは楽天モバイルに対抗するための値下げをする必要がなくなった。さらに、2020年3月からは5Gサービスが始まるということで、3社とも500〜1000円の値上げする方向だ。

端末販売における割引に対して、上限2万円までという規制が入ったことで、3キャリアとも端末販売台数が落ち込んだ。しかし、その分これまで割引するために必要だったコストが大幅に削減できたことで収益にプラスに働いた模様だ。

唯一“減収減益”のNTTドコモ

吉澤和弘

NTTドコモ社長の吉澤和弘氏(2019年10月撮影)。

撮影:小林優多郎

そんな中、NTTドコモだけが唯一、減収減益という負け戦になってしまった背景にあるのは、2019年6月スタートの新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」の導入だ。

NTTドコモではシンプルな料金体系を目指し、家族で分け合える「シェアパック」から、30GBが使い放題(現在は60GBまで拡大キャンペーンを展開中)となる「ギガホ」と7GBまでの従量制「ギガライト」という2つから選ぶ料金体系に切り替えた。これが裏目に出たようで「(月間60GBまでの)4Gのギガホを選ぶユーザーは20数%にとどまっていた」(NTTドコモの吉澤和弘社長)という。

つまり、8割弱のユーザーは大容量プランではなく、月々の支払いを安価に抑えられる従量制プランを選んでいた。これにより、通信量収入が下がり、結果として減収減益につながったというわけだ。

“マルチブランド戦略”が功を奏しているソフトバンク

宮内謙

ソフトバンク社長の宮内謙氏(2019年8月撮影)。

撮影:小林優多郎

ただ、今回増収増益を達成したソフトバンクには「ワイモバイル」というサブブランドが存在する。定額制プランの「メリハリプラン」が中心のソフトバンクとは異なり、ワイモバイルではS、M、Rという3つのデータ容量を選ぶ料金体系となっており、格安スマホに対抗するプランとして位置付けている。NTTドコモと同じく、安価なプランがあるにもかかわらず、なぜ、ソフトバンクは今回、増収増益になったのか。

「うち(ソフトバンク)も数年前には収益が落ち込んだことがある。それはワイモバイルのユーザーが増えたから。早い段階でワイモバイルの影響が収益に出ていたのだが、すでに底を打ったと言える」(ソフトバンク関係者)

NTTドコモのスライド

NTTドコモの新料金プランの申込件数は3月末に1651万、4月17日には1700万を突破した。

出典:NTTドコモ

NTTドコモが今後、収益を改善させていくには、定額制を選ぶユーザーを増やす必要がある。

そんな中、明るい兆しといえば5Gのスタートだ。NTTドコモの5Gサービス契約者は3月末の段階で1.4万契約、4月末の段階で4万契約となっている。しかも、この5Gサービスの契約者の約半分が「5Gギガホ」という料金プランを契約している。5Gギガホは、月間100GBまで利用できる仕様ではあるが、現在はキャンペーンとして100GBではなく無制限でネット接続ができる。

4Gでは2割だったギガホ契約者が、5Gになることで半分のユーザーが選ぶとなれば、収益面での改善が期待できるというわけだ。NTTドコモとしては早期に5Gを普及させ、5Gギガホを選ぶユーザーを増やす必要がある。

UQ mobileをサブブランド化するKDDI

KDDIのスライド

UQ mobile事業はKDDIに移管される。

出典:KDDI

一連の決算会見で、大きな動きとして注目されたのが、KDDIによるUQモバイル事業の統合だ。UQコミュニケーションズが手がけるMVNO「UQ mobile」事業を会社分割し、10月1日付でKDDIに統合する予定だ。

現在、UQモバイルには200万を超える契約者を抱えており、10月以降はauのサブブランドという位置づけになる。別会社からKDDIの事業になることで、全国の営業体制、販売チャネルの再編、統合、ユーザーのニーズにあったサービスの提供、事業の効率化が期待できるという。

髙橋誠

KDDI社長の髙橋誠氏(2019年8月撮影)。

撮影:小林優多郎

現状、格安スマホ市場は、ワイモバイルがとても強い存在感を出している。

UQモバイルもなんとかワイモバイルに対抗しているものの、販売チャネルの弱さが課題となっている。ワイモバイルは現在、ソフトバンクショップと一緒に展開しているところも多く、1つの店舗の中で「大容量を使いたいならソフトバンク、コストを抑えたいならワイモバイル」というユーザーのニーズに合わせた提案を実現している。

現状、auとUQモバイルはほとんどの別のショップで扱われており、ソフトバンクとワイモバイルのような関係性が築けていない。KDDIとしてはUQモバイルをauショップで扱う店舗を増やすことで、相乗効果を狙いたいのだろう。

また、KDDIがUQモバイルを統合したかった理由としては、やはり楽天モバイルが格安スマホ市場で大暴れすることを懸念しているのではないか。

楽天への流出を防ぎたい3キャリア、しかし楽天の戦略には不安も

三木谷浩史氏

楽天社長の三木谷浩史氏(2020年2月撮影)。

撮影:小林優多郎

キャリアとすれば、5G時代に向けて大容量プランを使ってくれるユーザーをできるだけ囲い込んでおきたい。一方、大容量には興味がなく、とにかく通信料金を安くしたいというユーザーが、競合の格安スマホや楽天モバイルに流出してもらっては困る。特に格安スマホを契約しているユーザーは、自分で調べることもいとわない人たちが多いだけに、安ければ簡単に他社に移ってしまう。

競合会社にユーザーが出て行ってしまい、契約数が減ってしまうぐらいなら、自社の回線を使い、さまざまな融通が効く、サブブランドを勧め、囲い込んでおくほうがメリットが大きいというわけだ。

サブブランドを使っていたユーザーが、突然変異で「大容量を使いたい」と思う日がくるかもしれない。そんな時のために囲い込んでおけば、すぐにauの大容量プランを勧められるというわけだ。

キャリアが安定して儲けていくには、大容量プランを契約してくれるロイヤルカスタマーを囲い込んでおくことが絶対条件と言える。その点、ソフトバンクはうまくいっているし、KDDIもソフトバンクの後を追いつつある。

この戦略が正しいとするならば、NTTドコモもいずれのタイミングで「サブブランド」が必要になってくるかもしれない。

また、現在は格安スマホの一本足打法で戦う楽天モバイルも、将来的には高額な通信料金を支払ってくれる「お得意様」をつくっていかないことには、業界で生き残るのは至難の技となりそうだ。

(文・石川温、撮影・小林優多郎


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。近著に「未来IT図解 これからの5Gビジネス」(MdN)がある。

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