構造改革に取り組むパナソニック。写真は東京・有明にあるパナソニックセンター東京。
撮影:大塚淳史
パナソニックは5月18日、2020年3月期の連結決算を発表した。米中貿易摩擦、日本の消費税増税、新型コロナウイルスの感染拡大と、厳しいビジネス環境が続いたこともあり、売上高は7兆4906億円(前年比6.4%減)、最終利益は2257億円(前年比20.6%減)だった。
主力の家電製品は欧州市場で苦戦したほか、車載機器、電子部品なども中国市況の悪化の影響を受けた。業績見通しについては、新型コロナウイルスの影響の不確実性が高いことを理由に、合理的に算定可能となった時点で開示するとした。
新型コロナの影響は家電事業が「一番大きく受けた」
パナソニックの2020年3月期連結決算。
出典:パナソニックの決算資料より。
家電などアプライアンス(事業)は、エアコンや大型空調機は堅調に推移したものの、洗濯機、冷蔵庫、美容家電、テレビ、デジカメといった製品の海外販売で苦戦した。オンラインで会見を開いた同社の梅田博和最高財務責任者(CFO)は「新型コロナの影響を(アプライアンス事業が)一番大きく受けた」と説明した。
また、車載機器や車載電池のオートモーティブ(事業)では、中国など自動車市場の悪化や新型コロナの影響もあり車載機器の売り上げは減収だった。一方で、ほぼテスラ向けと言える円筒形車載電池、トヨタ向けの角形車載電池など、車載電池は「(2020年3月期決算の)第3、4Qは黒字化した。今年度(2021年3月期)はしっかり収益化する」(梅田CFO)と見据えた。
新型コロナウイルスの影響で、世界各国の経済活動が一時ほぼ止まった。冒頭のとおりパナソニックは2021年3月期の業績見通しを公表していないが、梅田CFOは質疑の中で、いくつか見立てについてもコメントしている。
- 4月の世界全体の販売は「前年比8割を少し切る程度」
- 5月から徐々に経済活動が再開して、6月以降は緩やかに回復に向かうと見る
- 第2四半期に回復状況が形に
- 下期(第3-4四半期)は前年並みに推移
以上が、「コロナ次第にもよるが」(梅田CFO)との条件付きの、パナソニックが描く回復のシナリオ、ということになる。
パナソニックのセグメント別実績。2月3日時点の通期業績見通しからの差異は、売上高・営業利益ともにアプライアンス事業が最も大きかった。
出典:パナソニックの決算資料より。
今回の新型コロナウイルスの影響で、サプライチェーンの見直しが起こるという論調が起こっているが、梅田CFOは、
「すでに中国からの部品供給の(問題の)影響はかなり少なくなったが、サプライチェーンのリスクはアジアや全世界の問題で常に伴う。今回のコロナがあったからといって、サプライチェーンをどこかに集約するとか移動するとかはは現時点で考えていない」
と説明した。しかし、今回の教訓として、
「代替地というか、ひとつの工場でいくつか素早く立ち上げることが有効な対策だと感じた。ひとつの物だけでなく、すぐ切り替えてサプライチェーンができるようなところを探していく」
ことを学んだという。
東京オリンピック延期は「ビジネスに大きなダメージなし」
パナソニックは東京オリンピックのスポンサーであり、スポーツ領域のビジネスにも力を入れ始めている。(写真は2020年2月のスポーツビジネス産業展のもの)。
撮影:大塚淳史
また、パナソニックは東京オリンピックのスポンサーだが、基本的には東京以後も契約は継続している。そのため、五輪延期がスポンサーシップにもたらす影響について「スポンサーシップへの影響はない。対外的に話している通り、1500億円ほどのビジネスをこのオリンピックでということで、順調に進んでいる。延期となったことで納品が遅れることは否めないが、当社にとって大きなダメージになることは現時点では考えていない」(梅田CFO)とした。
半導体事業の譲渡、液晶パネル事業の生産終了(2021年をめど)、赤字解消に取り組むテレビ事業(2021年度の赤字解消を目標)など構造改革の途中だが、トヨタとの車載用角形電池事業や街づくり事業など「共創による競争力強化」を推進していく。
(文・大塚淳史)