日本医師会の有識者会議、拙速なコロナ治療薬の承認に警鐘「科学的エビデンスに基づき承認を」

医師会緊急提言

日本医師会COVID-19有識者会議から、「新型コロナウィルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言」が公開された。

撮影:吉川慧

日本医師会の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)有識者会議は、5月18日までに「新型コロナウィルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言」を発表。治療薬の拙速な承認がされないよう警鐘を鳴らした。

声明では、

「COVID-19パンデミックは医療崩壊も危惧される緊急事態であり、新薬承認を早めるための事務手続き的な特例処置は誰しも理解するところである。しかし、有事といえども科学的根拠の不十分な候補薬を、治療薬として承認すべきでないことは明らかである

エビデンスが十分でない候補薬、特に既存薬については拙速に特例的承認を行うことなく、臨床試験によって十分な科学的エビデンスに基づいて承認すべきであることを提言する」

と、新型コロナウイルスへの特効薬が期待されるあまり、科学的な検証が不十分な状態で治療薬が承認されかねない現状に懸念を示した。

緊急声明

日本医師会新型コロナウイルス感染症有識者会議は、5月17日に治療薬開発についての緊急提言を発表。

出典:(C) 2020 日本医師会 COVID-19有識者会議

「期待」で科学を曲げてはいけない

有識者会議は、

「COVID-19に感染した有名人がある既存薬を服用して改善したという報道や、一般マスコミも『有効』ではないかと報道されている既存薬を何故患者が希望しても使えないのか、と煽動するような風潮がある」

と、最近のメディアの報道に強い警鐘を鳴らした。

また、一部の医師がパンデミック下では信頼性の高い臨床試験(ランダム化比較試験)を不要だと主張していることも問題視。科学的根拠が蔑ろにされたまま、なし崩し的に治療薬が早期承認されかねない状況に懸念を示している。

新型コロナウイルス感染症は、確かに人を死に至らしめる可能性のある病気だ。一方で、軽症で済む患者も多く、重症化したとしても中には回復している例もある。

そういった中では、たとえ効果が期待されている既存薬を服用して回復したとしても、それが薬の効果なのか、自然と回復した結果なのか、簡単には判断することはできない

だからこそ、エビデンスの高い、科学的なプロセスに基づいた臨床試験が必要だ。

有識者会議は、

「科学的に有効性が証明された治療を選ばずに証明されていない薬剤を患者が強く希望したために、治癒するチャンスをみすみす逃した事例が過去にあったことを忘れるべきではない。そして『科学』を軽視した判断は最終的に国民の健康にとって害悪となり、汚点として医学史に刻まれることなる。


ある既存薬のランダム化比較試験は進行中であり、近く結果の発表が見込まれる。有効性が科学的に証明されていない既存薬はあくまで候補薬に過ぎないことを改めて強調し、エビデンスが十分でない候補薬、特に既存薬については拙速に特例的な承認を行うことなく、十分な科学的エビデンスが得られるまで、臨床試験や適用外使用の枠組みで安全性に留意した投与を継続すべきと提言する」

と適切な運用を訴えた。

(文・三ツ村崇志

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