【かものはしプロジェクト・本木恵介1】社会には問題を解決する力がある。僕はそれを信じている

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撮影:伊藤圭

2002年、東京に暮らす大学生3人が、カンボジアが抱える“闇”を消そうと立ち上がった。

その闇とは、「児童買春」。10歳にも満たない少女をわずかなポケットマネーで買えるという絶望。

「認定NPO法人かものはしプロジェクト」(以下、かものはしプロジェクト)を立ち上げた3人は、児童買春(かものはしプロジェクトでは「子どもが売られる問題」と呼んでいる)を生み出す原因である貧困の解消に向け、農村部の女性の雇用創出や職業訓練といった取り組みを継続。現地の警察を支援するなど、問題を解消に導くのに貢献した。2012年からは主な支援先をインドに移し、現在は日本での児童虐待・暴力撲滅活動もスタートしている。

継続的に寄付するサポーター会員は1万人。着実に、持続的に、刻んできた歩みと実績が認められ、今最も存在感のあるNPOの一つだ。

「僕たちは大河の一滴に過ぎない」

かものはしプロジェクトの“顔”としてよく知られているのは、発足当初の構想の中心となった村田早耶香(38)だろう。今回スポットを当てるのは、同じく共同創業者で理事長の本木恵介(38)だ。

自らを「凡庸でオーラがない」と謙遜する静かな物腰とは裏腹に、本木はさまざまな立場、世代の人々から信頼を集めてきたリーダーである。

2019年6月には、国内のNGOの連携を促進する「国際協力NGOセンター(JANIC)」の新代表(理事長)に選出されたことからも、業界から一目置かれる存在であることが分かる。

決して派手ではない。大きな声で旗を突き上げるタイプでもない。しかし、独特の迫力を放つ。

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本木がグランプリに選ばれたBusiness Insider Japan主催の「BEYOND MILLENNIALS」。本木のスピーチに会場は聞き入った。

「僕たちは大河の一滴に過ぎません」

2020年1月、ビジネスインサイダーが主催するビジネスカンファレンス「BEYOND MILLENNIALS」の会場は、彼が言葉を発した瞬間、水を打ったように静かになった。

ステージに立っていたのは、本木だ。2019年に特筆すべき活躍を見せ、2020年にさらなる飛躍が期待されるリーダーを選出する「ゲームチェンジャー」のグランプリを受賞した場面だった。

「カンボジアで子どもが売られる問題という重い社会課題が解決されたのはなぜか。シンプルな答えは“社会の力“です。現地で長年苦しんできた人々が、汚職に反発した警察や官僚が、国際NGOや国連が動き、寄ってたかって解決しようとしたからです。その一端に、かものはしも関わることができました。

誰もが解決できないと思っていた問題を、皆で解決することができた。僕はこの“社会の力”に希望を持っています。人類はきっとこれからも難しい問題を解決していけると、信じることができます。

そのたくさんの水滴の集まりの一滴となって、大きなうねりの一部になれることが最上の喜びです」

自らを変えることで世界を変える

本木の言葉どおり、かものはしプロジェクトは2012年以降始めたインド事業推進に当たって、現地のNGOと積極的にパートナーシップを組み、その数は13団体にまで増加。リサーチや評価、法律などに関して、25の専門家・団体と連携するなど、“つながり、開いた活動”に徹している。

その成果も数字に表れている。心の回復支援や教育支援を受けられたサバイバーは329人、自立した経済活動のためのリーダーシップ研修を受けられたサバイバーは179人、研修後に実際に地域でリーダーシップをとって自主的に活動を始めたサバイバーグループは16にまで増えたという。

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これらの支援の基盤となる収入は年間で3億7702万円。うち81%が一般の個人・法人から集める寄付である。会員数は立ち上げから6年後の2008年に1000人を達成した後、およそ10年かけて2017年に6000人に。さらに伸びて2019年には1万人を突破した。それだけ活動への理解・共感が広がっているということだろう。

今世界中を覆っている新型コロナウイルスは、それまでにあった社会の問題を白日のもとに晒し、さらに深刻化させ、ともすると私たちはウイルス以上にこうした社会の課題の大きさに呆然と立ち尽くしてしまう。

だからこそ、この本木の「社会には問題を解決する力がある」という言葉を、今こそ信じてみたいとも思う。

本木恵介

撮影:伊藤圭

“我”を振りかざさず、周りと歩調を合わせ、連携することで組織の力を高める新しいリーダー。

そんな印象を持ちながら、後日、事務所を訪れると、本木は意外なことを語り始めた。

「僕は20代まではいわゆる意識高い系のガツガツした人間でした。自分の力だけで成果を出すことにこだわった時期もあった。以前の僕は、他人に対しても自分に対しても厳しくて、気付かないうちに人を傷つけてきた。

けれど、僕自身も傷つき、人の変化にも立ち会いながら、時間をかけて自分自身の振る舞いが変わってきたんです」

本木の“自己変革”については、共に18年間走り続けた村田や同じく設立メンバーの青木健太(38)も「間近で見てきた」と認める。

自らを変えることで世界を変える一滴となった、リーダーの歩みを追っていこう。

(敬称略、明日に続く)

(文・宮本恵理子、写真・伊藤圭、デザイン・星野美緒)


宮本恵理子:1978年福岡県生まれ。筑波大学国際総合学類卒業後、日経ホーム出版社(現・日経BP社)に入社し、「日経WOMAN」などを担当。2009年末にフリーランスに。主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆。主な著書に『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』など。家族のための本づくりプロジェクト「家族製本」主宰。

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