緊急事態宣言が関西圏でも解除される。
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安倍晋三首相は5月21日午後6時過ぎ、新型コロナウイルス特措法に基づき8都道府県に発出中の緊急事態宣言について、関西圏の3府県で解除することを正式に表明した。解除対象は大阪・京都・兵庫の2府1県。
これで緊急事態宣言が解除されるのは42府県となる。
政府の専門家会議は緊急事態宣言の解除について、
- 直近1週間の新規感染者の報告数が、その前の1週間の報告数を下回っており、減少傾向が確認できること
- 直近1週間の累積新規感染者数の報告が10万人あたり0.5 人未満程度
などを判断基準として据えているが、関西2府1県はこうした基準を満たしたと判断した。
一方、北海道と首都圏(東京・埼玉・神奈川・千葉の1都3県)では解除を見送った。
関西圏の緊急事態宣言の解除に先立ち、21日午後に開かれた衆院議運委員会で西村康稔経済再生相は「第2波も必ず起こると思っていたほうがいい」と述べ、引き続き感染拡大への警戒を呼びかけた。
(緊急事態宣言が)解除されたからリスクがゼロになるわけではなく、どこに潜んでいるかわからない。見えない敵、見えない感染がある。長い道のりを考えないといけない。
解除されていないところでは引き続き自粛をしていただき、様々な活動はできる限り抑えていくことが必要だと思う。
他方、解除されたところも経済活動は段階的に引き上げるが、「3密」に注意するとか新しい生活様式、スマートライフを送っていただくことが大事。
第二波も必ず起こると思っていたほうがいい。小さな波に抑えていくことが必要。
(西村康稔経済再生相の答弁、2020年5月21日衆院議運委員会)
すでに緊急事態宣言が解除された栃木県宇都宮市では、市が「クラスター(集団感染)」と判断した例もある。
首都圏の解除は「一体的に判断」
西村経済再生担当相は「経済圏、生活圏を考えれば一体的に判断していくのが適切だ」との見解を示している。
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首都圏では都市部から他の地域への移動で感染拡大が懸念されるため、感染状況を踏まえつつ、足並みをそろえて解除することになりそうだ。
西村経済再生担当相は5月20日の記者会見で「経済圏、生活圏を考えれば一体的に判断していくのが適切だ」との見解を示している。
19日には東京、神奈川、千葉、埼玉の4人の知事が共同メッセージを発信。
他の地域で緊急事態宣言が解除されても、首都圏では「緊急事態は継続中」と、感染予防策を改めて訴えた。また感染の第2波に備え、首都圏全体での更なる連携も確認した。
緊急事態宣言の効力期限は5月31日まで。安倍首相は、5月25日にも専門家から意見聞いた上で、今の状況が続けば残る地域の緊急事態宣言を解除することも可能だと述べた。
史上初の「緊急事態宣言」これまでの動き
4月7日 緊急事態宣言を発出
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、政府は新型コロナ特措法に基づく「緊急事態宣言」を発出した。対象は東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県。
4月16日 緊急事態宣言の対象を「全国」に拡大
特に重点的な感染拡大防止の取り組みが必要だとして、当初から宣言対象だった7都府県と、北海道・茨城・石川・岐阜・愛知・京都の計13都道府県を「特定警戒都道府県」に指定した。
5月4日 緊急事態宣言の延長
緊急事態宣言の発出から1カ月となった5月4日、政府は対象地域を「全国」としたまま、5月31日までの延長が決まった。
5月14日 緊急事態宣言、39県で解除
「特定警戒都道府県」に含まれない34県と茨城・石川・岐阜・愛知・福岡の5県を加えた39県で緊急事態宣言が解除された。
5月21日 緊急事態宣言、関西の2府1県で解除
大阪・京都・兵庫の関西圏2府1県で緊急事態宣言が解除された。
引き続き、感染予防を呼びかけ
政府・専門家会議の尾身茂副座長。
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緊急事態宣言の解除が進むが、政府は感染が再び拡大しないよう感染予防策の継続を要請。今後も都道府県の境を越えての移動は自粛を求めている。
衆・参院の予算委員会は5月20日、新型コロナウイルスの対応をめぐる参考人質疑を開いた。
専門家会議の尾身茂副座長は、国内の感染状況は収束に向かっているとの認識を示しつつも、「仮に全都道府県で宣言が解除されても、(感染)報告者数ゼロが短期間続いても、見えない感染が続いていると考えるべき」と発言。
その上で「冬を待たず、再び感染拡大が起こることは十分予測される」と警鐘を鳴らした。
専門家会議はこれまでに、感染拡大を予防する「新しい生活様式」の徹底を呼びかけている。特定警戒都道府県では「最低7割、極力8割程度の接触機会の低減」を目指し、外出自粛の協力を要請。
それ以外の地域では「3つの密」を徹底的に避けるとともに、手洗い・人と人の距離の確保など基本的な感染対策の継続を要請している。
(文・吉川慧)