「それでも飲食業を続けたいか」。タリーズジャパン創業者が問うアフターコロナに必要な覚悟

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撮影:今村拓馬



タリーズジャパン創業者として、日本に一大カフェチェーンを築き、現在は全国21店舗を展開するEGGS 'N THINGS JAPAN(エッグスンシングスジャパン)の社長を務める松田公太氏(51)。

苦境に立つ飲食業が、withコロナを生き抜くためには何が必要なのか。そしてアフターコロナの時代に飲食業はどう変わるのか、松田氏に聞いた。

前編はこちら


人件費、家賃の高騰、加えて消費増税

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松田氏が社長を務めるエッグスンシングスでは、4月からテイクアウトを始めた。

撮影:今村拓馬

2020年4月にエッグスンシングスの社長に戻る前から、実は、新会社を設立し、新しい事業に着手し始めていました。

外食産業におけるテクノロジー利用を進めるためですが、その背景には同業者が置かれた状態が非常に厳しくなってきたことへの危機感がありました。

飲食店ではたった数十円の値上げでも客が離れてしまう厳しさがある。その一方で、人件費はずっと上がり続け、家賃も上がり、食品の原価もどんどん上がってきました。

そこに、消費税10パーセントへの増税。カフェがライバル視しているコンビニには、テイクアウトで消費税8%の軽減税率が適用されたことで競争がさらに厳しくなりました。

三重苦、四重苦を抱える中、ITやAI(人口知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による自動化などを活用し、外食産業をレベルアップさせたいという思いで、2019年に新会社を作り準備を進めていました。

外食産業において、テクノロジーを駆使して、人件費を削減したり、製造コストを削ったりする効率化の取り組みは、今後ますます必要になるだろうと思っています。

具体的なことは言えませんが、2020年10月に向けて、新しい事業を始めるための準備を進めています。

緊急事態宣言解除でも「売上50%目標」

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松田氏は新型コロナウイルスのワクチンが完成するまで、外食産業の売り上げは厳しい状態が続くと予想する。

撮影:今村拓馬

5月14日には、緊急事態宣言が39県で解除されましたが、急にお客様が戻るかと言ったら、そうではないと思います。

コロナウイルスの特効薬やワクチンが出てくるまでは、国民は感染症を恐れながら生活することになるでしょう。

これまで「外食が危険だ危険だ」と言われてきた状況から考えると、緊急事態宣言が解除されても、「これでレストランに行って大丈夫だ」とは、すぐには思わないでしょう。

社内では、緊急事態宣言が解除されてからの半年間は、「50%、60%と徐々に売り上げを伸ばす目標で頑張ろう」と話しています。

ワクチンが開発されるのは18カ月後という話もありますが、長い時間がかかります。その間、赤字はずっと続くことになるので、これからどんどん潰れるお店が増えると思います。

その中でも飲食業を続けていきたいのであれば、やはり新しいライフスタイルに準じたビジネスモデルを確立していかないといけない。

これまで通りに、普通にお店に来てもらって、そこでご飯を食べてもらうという考え方は、成り立たなくなってくる。デリバリーやテイクアウトなどに対応することも必要になる。

新しいビジネスモデルについて、私もいくつかアイデアがありますが、今はまだ事業化前なので言えません。みなさんも新しい形を考えてみてください。

生き延びながらもチャレンジを

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松田氏は「外食産業も新しい生活様式への対応が必要だ」と言う。

撮影:今村拓馬

まずは、なんとか会社を生き延びさせること。そして、同時に新しいビジネスにも果敢にチャレンジしていく。

これからの外食産業にはその二つが求められていますが、これは本当に難しい。

実際には、借金を返す見通しが立たないまま、借金を続けているのが現状で、廃業を考えている店も非常に多いです。

一方、新しい事業にシフトするための時間は限られており、短期間で始めないといけないという難しさもあります。

ITの分野だって、何年もかけて盛り上がってきたわけですから、飲食業で、たった数カ月で、新しいビジネスを成り立たせるのは酷な話ではあります。

だからこそ、国は自粛を要請した分ぐらいの支援の手を差し伸べて、なんとか対応するまでの間は営業を続けられるようにしてほしいと思っています。

日本が誇る外食産業の衰退

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スターバックスなどのチェーン店の増加で、外食産業の衰退が懸念されるという。

撮影:横山耕太郎

このまま政府が何もしなければ、多くの企業が倒産もしくは廃業することになります。

それは、日本が誇る食文化の多様性が崩れることを意味します。

安倍首相は、「経済を V 字回復させる」としていますが、日本経済を支えてきたインバウンド誘致のためにも、日本の外食の多様性を失ってはいけません。

路地裏の小さな店舗だけでなく、中規模飲食店を無くしてはいけない。中規模というのはだいたい20~30店舗を展開するお店で、この規模になると、お店のコンセプトが客から評価されている場合が多い。事業の拡大を目指しており、従業員を多く抱えてもいます。

そんな中堅企業や、小規模なお店がコロナで潰れてしまうと、その空き店舗に何が入るかというと、マクドナルドやケンタッキー、スターバックスなどの大手チェーンです。

最近、大型のショッピングモールでは、一つの施設に、スターバックスが2店舗、3店舗と入っているのも珍しくありません。

今までの商業施設は多種多様なカフェを入れようと考えていたのでしょうが、小さなコーヒー店が耐え切れずに撤退してしまうと、そこにまたスタバが入る。

このように大手のチェーン店だけが増えていくようなことが、新型コロナで加速すると思います。

面白い飲食店が消えた赤坂

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「アフターコロナで経済回復を目指すならば、インバウンド需要の回復が必要だ」と松田氏は指摘する。

撮影:今村拓馬

巨大資本のチェーン店がどんどん増えてしまうと、どうなるでしょうか。外食の多様性がない街は、外国人旅行客はもちろん、日本人にとっても魅力のない場所になってしまう。

30年前、私が銀行員だった頃の話ですが、23歳で赤坂の支店に配属になりました。当時の赤坂には、いろんな面白い飲食店がありました。もちろんチェーンでない小さな料亭とか焼肉屋とか、外食の多様性があったんですね。

そこにある日、吉野家とマクドナルドができました。「いつか食に関するビジネスを始めたい」と思っていたので、赤坂でのマック登場はショックでした。

赤坂の一ツ木通りに行ってみてください。家賃が高くなり、良い場所で生き残っているのはもうチェーン店とコンビニだけです。料亭はなくなり、面白いコンセプトを打ち出している飲食店も少なくなっている。

日本がインバウンド誘致を続けていくなら、多様性のある食文化を残していかないといけないと思います。

(聞き手・横山耕太郎)


松田公太:1968年生まれ。5歳から高校卒業までの主に海外で過ごす。筑波大学卒業後、銀行員を経て1997年に日本でタリーズコーヒーを創業。翌年タリーズコーヒージャパンを設立し、2001年に株式上場した。320店舗超のチェーン店に育て、2007年に同社社長を退任。2010年に参議院議員選挙で初当選。議員任期満了後は、エッグスンシングスの世界展開に着手し、国内では21店舗を展開している。

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