「経済損失は672億円超」と試算。夏の甲子園、戦後初の中止

shutterstock_1486874522

Shutterstock

夏の甲子園中止で経済的損失は約672億——そんな衝撃的な試算が発表された。

第102回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)について、日本高野連と朝日新聞社は5月20日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止を決定した。

大会の中止は第一次世界大戦中の1918年に発生した米騒動による中止、第二次世界大戦の最中だった1941年の中止以来、3度目となる。戦後では初の中止だ。

今夏の大会は、8月10日から16日間の日程を予定し、全国からの代表49校(北海道、東京は2校)が参加することが決まっていた。

経済的損失は「約672億4415万円」

高校野球中止の経済損失

撮影:吉川慧

経済波及効果の研究で知られる関西大学の宮本勝浩名誉教授(理論経済学)によると、夏の甲子園大会が中止になった場合、約672億4415万円の経済的損失が生じるという。5月19日、宮本名誉教授のレポートを関西大学が発表した

試算額は地方大会の中止と、大会に関連する企業の損失を含めた金額だ。

宮本名誉教授は失われる経済効果について「直接効果」「一次波及効果」「二次波及効果」の3つに分けて推計した。

  • 直接効果:チケット代、交通、宿泊費など。自治体、企業、消費者がイベントに関して直接的に消費、投資する金額。
  • 一次波及効果:直接効果の消費、投資による原材料の売上増加額。
  • 二次波及効果:直接効果、一次波及効果に関係した企業・店舗などの売り上げが増加し、企業の経営者・従業員の所得・配当が増えたとする。そこから消費に向けられる金額。

例えば、甲子園球場に観戦に来たファンがカレーライスを食べたり、高校野球のグッズを買うとしよう。

この時、レストランのカレーライスの売り上げや高校野球のグッズの売り上げは直接効果となる。

また、カレーライスの材料である米、肉、玉ねぎ、人参などの売り上げ、高校野球のグッズを作っている工場・企業の売り上げも増加する。

この場合、カレーライスの原材料の売り上げ増加額や高校野球のグッズを製造・販売する工場や企業の売り上げ増加額が一次波及効果となる。

二次波及効果については、宮本名誉教授はこう説明する。

「直接効果、一次波及効果に関係した企業、店舗などの売り上げが増加すると、それらの企業、店舗の経営者、従業員の所得、配当などが増加する。その所得、配当などの増加額のかなりの部分が消費に向けられる。その消費増加額のことを二次波及効果と呼ぶ」

以下に、宮本名誉教授による試算内容を紹介する。

地方大会で失われる消費額=約139億7180万円

高校野球

撮影:今村拓馬

(1)参加校が普段支出する消費額

地方における一高校あたりの平均支出額を約200万円、参加校数を約3700校と仮定する。

・全参加校の支出額
=約200万円×約3700校
=約74億円

(2)地方大会に応援に行く生徒、教員、保護者、同窓生、高校関係者などの消費額

一高校当たり約300人の生徒、教員、保護者、同窓生、高校関係者が応援に駆け付けると想定し、応援者一人当たりの交通費、飲食費、雑費などの支出額は一人当たり約3000円、地方大会の試合数を約3651試合と仮定する。

・試合あたりの両高校の応援者の消費支出額
=約300人×約3000円×2
=約180万円

・応援者の消費支出合計額
=約3651試合×約180万円
=約65億7180万円

(3)地方大会で支出される消費額の合計

約74億円(全参加校の支出額)

約65億7180万円(応援者の消費支出合計額)
=約139億7180万円

「甲子園の本大会」で失われる消費額=約171億5975万円

2017年第99回大会と2018年の第100回記念大会、それぞれの関係者全員の消費である直接効果(99回:約162億4111万円、100回:約206億6102万円)をもとに算定する。

なお通常、夏の甲子園の代表出場校は49校だが、100回大会の代表出場校は記念大会だったため56校だった。

・まず、100回大会の直接効果を49校で試算する。
約206億6102万円÷56×49
=180億7839万円

・この金額と、99回大会の平均値を算定。これを2020年の102回大会の関係者全員の消費総額である直接効果と仮定する。
(約162億4111万円+180億7839万円)÷2
=約171億5975万円

「2020年の大会中止」で失われる直接効果の総額=約311億3155万円

約139億7180万円(地方大会の消費額)

約171億5975万円(甲子園本大会での消費額)
=約311億3155万円

「全アマスポーツ大会の中で最高額の損失」

高校野球

撮影:今村拓馬

宮本名誉教授は直接効果の計算をもとに、大会中止で失われると想定される一次波及効果と二次波及効果を「全国産業連関表」(総務省内閣府が作成)をもとに試算した。

・直接効果と一次波及効果:約510億5574万円
・二次波及効果:約161億8841万円

合計で約672億4415万円の経済効果が失われると試算した

宮本名誉教授は「夏の甲子園大会の中止は、すべてのアマチュアスポーツ大会のなかで、最高額の損失であると推定される」と指摘。

その上で、「中止が正式に決定すれば、夏の甲子園を目指してきた高校球児にとっては耐え難いものであり、中止による損失額をはるかに上回る生涯の希望の損失となるであろう。また、高校野球関係者やファンにとっても非常に残念なことである」とコメントした。

文・吉川慧

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

Popular

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み