グーグルのスンダル・ピチャイ最高経営責任者(CEO)。
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- グーグルのビデオ会議ツールGoogle Meetが猛烈な勢いで成長を見せている。しかし、Zoomのような競合に対するプロモーション戦略については疑問の余地がある。
- GoogleカレンダーにMeetの利用を促す大きなボタンが実装されたが、すでにZoomへのリンクを設定しているイベントにもそのボタンが表示されるため、間違って押してしまうとの声がユーザーからあがっている。
Google Meetは5月初旬に無料提供を始めたことで、猛烈な勢いで利用者数を伸ばしている。
ただ、絶大な人気を誇る競合アプリ「Zoom(ズーム)」に追いつくためにグーグルが採用している戦略には眉をひそめる人も多い。
例えば、Meetアプリの利用を促す大きなボタンをGoogleカレンダーに実装したことがやり玉にあがっている(日本版には未実装)。
Zoomでのミーティングをすでに設定・予約しているのに、間違ってGoogle Meetを立ち上げてしまうとの指摘が出ている。
このMeetへの参加ボタンは、Googleカレンダーのイベント招待にZoomへのリンクが含まれていても表示される。
また、クロームの拡張機能を使うと、GoogleカレンダーのイベントにもZoomへの参加ボタンを表示させることができるが、その場合でもMeetボタンは消えず、しかもZoomのそれより上に大きく表示される。
Business Insiderは、Zoom会議に参加しようとして間違ってMeetボタンを押してしまったというユーザーの声を複数確認している(下のツイート参照)。
Meetボタンの表示をオフにする方法はある。Googleカレンダーの設定画面を見ると、「作成したイベントにGoogle Meetビデオ会議を追加する」はデフォルトではオンになっているので、チェックを外してオフにすればいい。
それでも一部のユーザーからは、オプトイン(=事前に許可を得る方式)ではなくオプトアウト(=事後的に制限あるいは機能オフにできる方式)にしていること、とりわけ明らかにZoomへのリンクが設定されているときでもオプトアウトの手間が必要なのは、ちょっとやり過ぎではないかとの声も聞こえてくる。
反トラスト法を専門とする弁護士ティム・ウーは、グーグルの戦略について「リスキーだ」と指摘する。
反トラスト法違反をめぐる監視と調査
カレンダーはグーグルの自社プロダクトなので、そこでMeetのプロモーションをどう行うかは自由だし、ビデオ会議(への接続)はカレンダーの重要な構成要素だから、一体的に運用するのに何の問題もないとの意見もある。
ただ、グーグルは自社プロダクトを競合相手の上位に配置して痛い目にあった過去がある。2017年、グーグル検索で商品比較サイト「Googleショッピング」を上位に表示し、他の比較サイトに不利益を与えたとして、グーグルはEUの欧州委員会からおよそ24億ユーロ(約3000億円)という高額の制裁金を課されている。
この反トラスト法違反の事例を、Zoomに優先してMeetをプロモーションすることと同じ俎上に並べて考えるわけにはいかないが、グーグルへの攻撃材料として使われる可能性があることは事実だ。
同社は広告事業について反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反の疑いがあるとされ、司法当局による監視・調査の対象となっている。各州の企業に不利益を与えていると判断された場合、連邦レベルでの訴訟にもつながりかねない。
猛烈な競争
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リモートワーク増加による需要増を背景に、グーグルとZoomは激しいシェア争いをくり広げている。
2020年第1四半期(1〜3月)の決算発表で、グーグルのスンダル・ピチャイCEOは、Meetが1日300万人のペースでユーザーを増やしていると発言。米ニュースメディアのアンドロイドポリス(Android Police)も5月17日、Google Playストアでのダウンロード数が5000万回を超えたと報じている。
また、グーグルは4月にすべての従業員に対し、セキュリティに問題があることを理由にZoomアプリの使用を禁じているが、広報担当者によると現時点では同社のデスクトップブラウザ、モバイルともにZoomアプリは使えているという。
(翻訳・編集:川村力)