試合の代わりに勇気を…急加熱する「音声配信×スポーツ」。本田圭佑、鹿島アントラーズら続々

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サッカー元日本代表で、NowDoのCEOを務める本田圭佑は、4月29日に「NowVoice」のローンチ会見をウェブ上で行った。

出典:NowVoiceオンライン記者会見

「スポーツ×音声コンテンツ配信」の業界で、国内に気になる動きが出てきている。

サッカー元日本代表の本田圭佑がCEOを務める「Now Do」は4月29日、インターネットスポーツメディア「SPORTS BULL(スポーツブル)」を運営する運動通信社と組んで、⽇本のトップアスリートたちによるプレミアム⾳声サービス「NowVoice」を開始した。

本田圭佑、村田諒太(プロボクシング・ロンドン五輪金メダリスト)、奥原希望(バドミントン・リオ五輪銅メダリスト)、ダルビッシュ有(野球・MLBシカゴカブス)、高梨沙羅(スキージャンプ・平昌五輪銅メダリスト)、池江璃花子(競泳)などそうそうたるアスリートたちが参加し、さまざまなテーマで語っている。

一方、サッカーJリーグの鹿島アントラーズは、5月12日から音声配信アプリ「stand.fm(スタンドエフエム)」で、チーム公式チャンネルの配信を開始した。元日本代表・内田篤人や広瀬陸斗らのトーク番組、小泉文明社長によるビジネス番組、また地元ラジオ局で放送されている公式番組の再放送などを聞くことができる。

本田圭佑「学びのある質の高いプラットフォームコンテンツに」

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NowVoiceには日本を代表するアスリートたちが参加している。

出典:NowVoiceスマホアプリ画面よりキャプチャ。

本田圭佑はサービスローンチの会見で、本来6月1日にスタートさせるところを、新型コロナウイルスの影響で1カ月早めたと明かした。そして、音声配信サービスの各コンテンツについてこう語った。

コロナの影響で(NowVoiceの)トピックがより真剣な内容になったこともあるかもしれないが、どれも深かった。声のトーンや感情が胸に刺さり、ユーザーにも伝わると感じた。アスリートたちがこれまでTwitter、YouTube、Instagramで見せていた、僕にとっての印象と、音声の印象が異なっていた。学びのある質の高いプラットフォームコンテンツにしていきたい」

ローンチ当初は子ども向けを意識したテーマが多かったが、「コロナで不安なのはむしろ大人。経済的な影響がある。問題を解決するような発信ではないが、アスリートが自分の挑戦に対する考えなどを話しているので、勇気づけられると思う」と本田が言うように、大人向けの内容も増えてきた。

音声プラットフォームサービスについては、すでにSpotify(スポティファイ)、Voicy(ボイシー)などが日本でも広まっている。そうした既存のプラットフォーム上でコンテンツを展開しても良かったはずだが、あえて独自にプラットフォームを始めた理由について、本田は問題意識を次のように語った。

「YouTubeはアルゴリズムがしっかりしているから、脳が快楽で満たされるよういろいろ自動的に対応してくれる。何年も前からある問題だけれど、くだらない時間を過ごそうと思えば、(快楽に沿ったコンテンツを楽しみ続けて)ずっと過ごせる。一番やばいパターン。時間を使って消費者として貢献し続けても、自分の能力は一切上がらない、必要とされない、価値が上がらない、収入が上がらない」

本田はNowVoiceを、そうした有象無象のコンテンツがあふれる場所にはしたくなかった、とする。

「コンテンツを選びたい、質を担保したいというこだわりは強くある。きちんと差別化した上でサービスを展開していきたい。NowVoiceを聞けば元気になる、そんな場所にしたい」

独自にプラットフォームを運営することもあり、サービスは有料で提供することにした。5月中は無料で、6月以降は月額900円(税抜き)となる。サービス開始から3週間ほど過ぎたが、SNSなどの反応を見る限り、出だし上々のようだ。

新規のファン開拓を狙う鹿島アントラーズ

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鹿島アントラーズは5月12日から音声配信アプリ「stand.fm」で公式チャンネルを作り、コンテンツを配信している。

出典:stand.fmスマホアプリ画面よりキャプチャ

鹿島アントラーズは、新興の音声コンテンツ配信プラットフォーム「stand.fm」に公式チャンネルを開設した。

stand.fmは、アプリ一つで音声コンテンツの収録や配信、生配信が簡単にできる。コメントや質問機能なども備えている。

有名タレントのチャンネルもあるが、気軽に生配信ができるため、一般のチャンネルも少なくない。端的に言えば、LINEライブやYouTubeライブの音声限定版だ。

鹿島アントラーズは「通常のコンテンツより手間がかからない。費用もかからない」(チーム広報)という理由でstand.fmを選んだが、もう一つ大きな理由があって、それはファンの新規開拓だ。

「(stamd.fmは)スタートアップで、どちらかと言うと新規ファン層、鹿島アントラーズを知らない人たちが聞いているというデータがある。20代や30代の若い世代、女性による配信も多く、いままで(鹿島が)積極的に取りにいってなかった方々が利用者にいる」

新型コロナの影響で、公式試合などサポーターと接する機会が減っていることも背景にある。

デジタル音声コンテンツが急成長しているアメリカ

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オトナルの八木太亮社長。

提供:オトナル

日本では、スポーツ分野からデジタル音声コンテンツへの取り組みが出てきたばかりだが、アメリカは先行している。

音声コンテンツ広告の制作やデジタルプラットフォームへの配信を手がけるオトナルの八木太亮社長が実例を紹介してくれた。

「スポーツライターのビル・シモンズ氏が立ち上げた「The Ringer(リンガー)」という、スポーツやポップカルチャー番組を展開する、ポッドキャストパブリッシャーサービスがあります。2020年2月にSpotifyが買収しました。明らかに今後、オーディオでスポーツコンテンツに力を入れていく流れです」

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アメリカのデジタル音声コンテンツの市場は急成長している。

提供:otonal

アメリカではデジタル音声市場が急成長を続けていて、そこでの広告収入も2018年度には約2400億円に達している。その背景について、八木社長は理由を2つあげた。

「1つはデバイス。スマートスピーカー、そしてAppleのAirPodsなどのイヤホンデバイス。技術的進化が市場を成長させています。また、デジタル音声コンテンツ市場に、GAFA各社が力を入れはじめ、ご紹介したSpotifyによるThe Ringerの買収など、音声パブリッシャーやコンテンツも変化・多様化していく傾向があります。利用者のデータも、技術の進化で以前より細かく取れるようになり、広告データを活用できることになったことで広告市場も大きくなってきています」

グーグルでは検索結果にポッドキャストも表示されるようになっている。日本でも同様の動きになると見られる。日本のデジタル音声広告市場は現時点で16億円程度とされるが、5年後には約420億円にまで拡大するという予測も出ている。八木社長は音声コンテンツサービスの魅力をこう語る。

「広告で言うと、音声は視覚だけの広告よりブランド想起や認知が高いという調査データもあります。音は不思議なものでファンやコミュニティを生みやすい。音だけのほうが想像力をかき立てられるんです」

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日本のデジタル音声広告市場も今後急拡大すると予測されている。

提供:オトナル

それに加え、音声コンテンツは制作コストが安いこともあり、収益化につなげやすいという。本田圭佑や鹿島アントラーズの取り組みに続いて、今後もスポーツ界からの参入事例が続くかもしれない。

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日本国内で、音楽配信サービスのユーザーが増えている。

出典:オトナル

(文・大塚淳史)

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