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黒川検事長が辞表を提出「記者らと賭け麻雀」報道で。これまでの経緯は?

5月21日発売の「週刊文春」と同日付の朝日新聞。

5月21日発売の「週刊文春」と同日付の朝日新聞。

撮影:吉川慧

【UPDATE】NHKなどによると、東京高検の黒川弘務検事長(63)が辞表を提出したと、森雅子法務大臣が明らかにした。黒川検事長の辞任は、22日の閣議で正式に認められる予定。(2020/05/21 18:05)

東京高検の黒川弘務検事長(63)が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言下の5月初旬、産経新聞記者や朝日新聞社員と賭けマージャンをしていたと週刊文春デジタル(5月20日)と週刊文春(5月21日発売)が報じた。

これを受けて黒川検事長が辞任の意向を関係者に漏らしていると、新聞各社が報道した。

週刊文春の報道によると、黒川検事長は5月1日夜から2日未明にかけて、産経新聞記者の自宅マンションを訪ねた。

この場には、別の産経新聞記者と朝日新聞社員も同席。「密閉空間に4人が密集し、密接な距離で卓を囲むマージャンは“3密”そのもの」と伝えた。

また、週刊文春の記事によると、6時間半にわたって賭けマージャンをした後、産経新聞記者が黒川検事長をハイヤーで自宅まで送ったという。

全国紙も一面トップで報道

黒川検事長が辞任の意向を固めたと報じた5月21日読売新聞・朝刊。

黒川検事長が辞任の意向を固めたと報じた5月21日読売新聞・朝刊。

撮影:吉川慧

黒川検事長とマージャン卓を囲んだ社員がいたと報じられた朝日新聞は21日一面トップで「黒川検事長が辞意」と報じた。

読売新聞と毎日新聞も、それぞれ一面で「黒川検事長、辞任の意向」「黒川検事長の交代検討」の見出しで伝えた。産経新聞は3面で「黒川検事長、賭けマージャン報道 文春『本紙記者らと今月』」と伝えた。

朝日「不適切な行為でおわび」産経「不適切な行為許されない」

朝日新聞社は20日付けの広報コメントで、同社社員が黒川検事長とのマージャンに参加していたことを認めた。

その上で、「不要不急の外出を控えるよう呼び掛けられている状況下でもあり、極めて不適切な行為でおわびします」と謝罪した。

東京本社に勤務する50歳代の男性社員が、黒川氏とのマージャンに参加していたことがわかりました。金銭を賭けていたかどうかについては、事実関係を調査して適切に対処します。

社員はかつて編集局に所属していた元記者で、取材を通じて黒川氏と知り合い、編集局を離れてからも休日や勤務時間外に飲食などをしていたと話しています。

勤務時間外の社員の個人的行動ではありますが、不要不急の外出を控えるよう呼びかけられている状況下でもあり、極めて不適切な行為でおわびします。
朝日新聞デジタル5月20日「黒川検事長、緊急事態宣言中にマージャン 週刊誌報道」、太字はBusiness Insider Japan編集部によるもの)

産経新聞社は当初、週刊文春の取材に対し「取材に関することにはお答えしておりません」と回答。

その後、20日に井口文彦・産経新聞東京本社編集局長名で「記事化された内容以外のものは取材源秘匿の原則にもとづき、一切公表しておりません」とした上で、「取材過程で不適切な行為が伴うことは許されず、そうした行為があった場合には、取材源の秘匿の原則を守りつつ適切に対処します」とコメントを発表した。

朝日新聞社のコメントとは異なり、記者が参加していたかどうかの事実関係や「おわび」など謝罪の意を示す文言はなかった。

今回の文春報道で、産経新聞は文春側から、社会部記者2人が黒川弘務・東京高検検事長と賭けマージャンをしていたことの確認を求める取材を、18日午前に受けました。

産経新聞は、報道に必要な情報を入手するにあたって、個別の記者の取材源や取材経緯などについて、記事化された内容以外のものは取材源秘匿の原則にもとづき、一切公表しておりません。

取材源の秘匿は報道機関にとって重い責務だと考えており、文春側に「取材に関することにはお答えしておりません」と回答しました。

ただし、本紙は、その取材過程で不適切な行為が伴うことは許されないと考えています。そうした行為があった場合には、取材源秘匿の原則を守りつつ、これまでも社内規定にのっとって適切に対処しており、今後もこの方針を徹底してまいります。
産経新聞5月20日「黒川検事長、賭けマージャン報道 文春『本紙記者らと今月』」、太字はBusiness Insider Japan編集部によるもの)

21日朝、NHKも速報で黒川検事長が辞任の意向を固めたと伝えた。

定年延長を認めていた安倍政権にダメージ

求心力低下が囁かれる安倍晋三首相。

求心力低下が囁かれる安倍晋三首相。

REUTERS

安倍政権は5月18日、内閣や法務大臣が認めれば検察幹部の定年を最長3年延長をできる検察庁法改正案の今国会での成立を断念した

この法案をめぐっては主要野党が「時の政権が恣意的に検察幹部の定年を引き伸ばすことが可能になる」と反対。法案をめぐる閣僚の答弁も迷走を重ね、世論の批判も高まっていた

法案への反発のきっかけは、1月末に安倍政権がこれまでの法解釈を変更し、黒川検事長の定年延長を閣議決定したことだった。

現行の検察庁法では、検事総長は65歳、それ以外は63歳と定めている。検事総長は就任約2年で交代することが慣例。現在の稲田伸夫検事総長が今夏で就任から2年をむかえる。

今国会での成立が見送られた検察庁法改正案。

今国会での成立が見送られた検察庁法改正案。

撮影:吉川慧

野党は検察庁法改正案について、かねてより「官邸に近い」と言われていた黒川検事長を安倍政権が検事総長に起用するため、後付けで正当化するのためのものだと猛反発していた。

菅義偉・官房長官は19日の記者会見で、政府・与党が検察庁法改正案の今国会での成立を断念したことを受け、黒川検事長の人事に影響するか問われ「全く影響ない」と述べていた。

一方、週刊文春の報道があった20日の記者会見では、菅官房長官は「報道は承知しているが、事実関係については詳細を承知しておらず、コメントは差し控えたい」コメント。その上で、「法務省で適切に対応する」と述べるにとどめた。

新型コロナウイルスをめぐる特別定額給付金の支給決定プロセスめぐる混乱や、突然の法案先送りなど、直近では自民党内で「安倍一強」と言われた安倍首相の求心力低下の表われと見る向きもある。

加えて、これまでの政府の法解釈を変え、特例的に定年延長を認めた黒川検事長のスキャンダル報道は、安倍政権にとっては大きなダメージになる。

文・吉川慧

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