コロナで休業補償「足りない、もらえない」と相談殺到。弁護士「泣き寝入りしないで」

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労働組合に加入し、タクシー会社との団体交渉を行っている2人。

撮影:横山耕太郎

「百貨店で正社員の美容部員として働いている。休業中は有給を取得するか、休業手当として固定給の60%の補償を受けるか、どちらかだと一方的に告げられました。100%の休業補償を求めて交渉したい」

新型コロナウイルスの影響で休業やシフトが削減されたとき、給与はいくら補償されるのか。現在、休業時の補償について、労働組合などには多くの相談が寄せられている。

総合サポートユニオンや首都圏青年ユニオンなどの労働組合で作る「生存とコロナ対策ネットワーク」は5月21日、都内で記者会見を開催。休業補償を求めて企業と交渉している組合員らと、弁護士の指宿昭一氏が出席した。

指宿氏は「民法によれば故意や過失などの理由で休業するときには、100%の賃金を支払わなければならないとされている。まずはそれを知ってほしい」と訴えた。

休業補償は法律で定める義務

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「まずは100%の休業補償が受けられるということを知ってほしい」と話す指宿昭一弁護士。

撮影:横山耕太郎

指宿氏によると、休業した場合の補償については、「労働基準法26条」と「民法536条2項」の2つの規定がある。

労働基準法26条では、以下のように定められている。

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当てを支払わなければならない」

指宿氏は、新型コロナによる休業の場合は、地震や台風など不可抗力ではなく、ほとんどが「使用者の責に帰すべき事由」にあたると主張する。

「都道府県知事から使用停止の『協力要請』があって店を閉める場合でも、あくまで『要請』であって、法的には休業するかどうかは会社の判断です。また施設使用の停止などの要請がない場合、例えばタクシー事業者が休業するなどは、会社の判断であることは明らか。労基法26条に違反した場合は、罰金30万円以下という罰則規定もあります」

民法には「100%以上」の賃金支払い規定

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休業時の補償については、労働基準法と民法で定められている。

撮影:今村拓馬

民法でも、ほぼ同様の状況で、賃金の支払い義務について定めている。少し難しい表現になっているが、以下の通りだ。

「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない」(民法536条)

労働基準法と民法の違いはどこにあるのか?

指宿氏は「労働基準法は『平均賃金』の60%以上、民法では100%以上の賃金の支払いを命じている。民法には罰則がなく法的支払いの義務のみが生じますが、労基法違反の場合は労働基準監督署による是正勧告など行政指導の対象になります」と指摘する。

一方、労働基準法の休業手当が「平均賃金の60%以上」とされている点には、注意が必要だとする。

「平均賃金の60%とは、実質には、賃金の4割程度の額にしかなりません。平均賃金は3カ分の賃金をその期間の総日数で割って計算します。
月収30万円の場合は、90万円を3カ月の日数の90日で割って、平均賃金は1日1万円。
この人が1カ月に20日間勤務予定だとすると、休業手当は1万円×20日×60%=12万円になってしまいます。平均賃金の6割で生活するのは厳しいと思います」

企業側は雇用調整助成金で回収できる

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雇用調整助成金は制度の拡充が段階的に行われている。

撮影:今村拓馬

新型コロナで売り上げが激減していることから、経営状況を踏まえ、一定の休業手当で納得する人もいる。

一方、企業を対象に休業手当を助成する仕組みもある。

「雇用調整助成金を使えば、企業側は支払った休業手当を回収できる。解雇をしなかった場合、中小企業は1日あたり上限を8330円に、休業手当として支払った分の4/5について助成を受けられる。また、上限額の拡充も検討されている。
ただし、先に休業手当を支払う必要があるほか、『申請の手続きが煩雑で、申請するなら店を閉める方が楽だ』という声もあります。助成の簡素化を進める必要があります」(指宿氏)

実際に100%の休業補償をする企業もある。そばチェーン店「名代 富士そば」ではアルバイトを含む従業員について、フィットネスクラブを運営する「コナミスポーツ」ではアルバイト従業員について、100%休業補償を支払うとしている。

「雇用調整助成金を使うかどうかは企業によるが、休業補償は義務。民法では100%以上の補償を規定しています。一方、労働基準監督署に相談した場合は、『平均賃金の60%以上』という労働基準法の規定以上の指導はしないと考えられます。
いずれにしても、実際には個人が交渉しても企業は聞いてくれない場合があるので、労働組合に相談してほしい」(指宿氏)

「休業中に有給取得、納得できない」

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ホテル清掃員の仕事をしている女性。急に「仕事に来なくてもいい」と言われ休業中だが、補償の説明は一切ないという。

撮影:横山耕太郎

現在、さまざまな労働組合が休業補償を求めて、飲食店や塾の運営会社、タクシー会社、スポーツクラブ運営会社などと交渉している。

冒頭でコメントを紹介した、大手百貨店内の化粧品店で正社員として働く美容部員の女性は、声を詰まらせながら語った。

「百貨店が臨時休業になり働けなくなりました。会社からは、休業期間は有給休暇を使うか、固定給の60%の給付かどちらかになると、一方的に伝えられました。
シングルマザーとして高齢の親に子どもを見てもらいながら仕事をしており、今後のことを考えると、有給はいざというときのために確保しておきたかった。会社の対応はおかしいと思いましたが、説明を求めても何一つ回答がありませんでした」

現在は労働組合に相談し、会社側と交渉しているという。

「(化粧品店がテナントして入っている)百貨店は、業員への補償をきちんと行っていました。その分、私が働く会社への不信感は増していきました。雇用調整助成金を活用した100%の休業補償を求めていきたいです」

また弁当工場で働く40代男性も労働組合に加入し、交渉を続けている。

「2月下旬から業績が悪化し、シフトの削減が始まった。最初は1シフト削減で1000円の休業補償という話だったが、団体交渉を行ったら平均賃金の6割まで引きあがった。
ただ平均賃金の6割では、生活できるレベルでありません。10割の休業補償を求めて交渉していきたい」

(文・横山耕太郎)

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