イノベーションを生むコミュニティの要件とは?オンラインとリアルの融合時代に考える

2030年の社会

「テクノロジーがイノベーションを加速させていく時代に必須なのは、良質なコミュニティ」 —— 。こうした考えに基づいて、次世代コミュニティ構想を掲げ先駆してきたのがグロービス経営大学院だ。デジタルシフトがさらに進む近未来、ビジネスパーソンのコミュニティの在り方はどう変わるのか。デジタル経営やAIを使った次世代教育の最前線にいる、グロービス経営大学院 教員/グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)所長の鈴木健一氏に話を聞いた。

不可逆な2つのメガトレンド

2030年の研究室の様子

テクノロジーが社会や生活を浸食するスピードが超加速化し、私たちの日常が一変している今、働き方も学び方も、オンラインをベースに考えることが必須となっている。

これから、私たちはいかにテクノロジーと関わり、この地殻変動をチャンスと捉え、新たな価値を創造していくべきなのか。鈴木氏は、2つのメガトレンドを再解釈する必要があると話す。

「ここから先の近未来をマクロ的に見ると、テクノロジーによるオンラインとリアルの融合が進むと考えられます。これが1つ目の不可逆なトレンドです。従来は多くの人が、リアルとオンラインを別物だと切り分けて考えてきたと思います。しかし新型コロナウイルスの影響でフルオンライン化が余儀なくされ、オンライン上での高度なファシリテーションやコミュニケーション能力も求められるようになっている。オンラインとリアルの境目がますます曖昧になりつつあります」

とは言えこの先ずっと、働き方や学び方、コミュニケーションのすべてがオンラインに変わるわけではないだろう。リアルでの活動は残るはずだ。

「テクノロジーの役割は、人間の可能性や生き方を拡張すること。さまざまな仲間とつながりコミュニケーションをとったり新たな価値を創造したりすることが、オンラインとリアルをシームレスに行き来しながら実現できるようになる。ビジネスパーソンにとっては、オンラインとリアルが融合した環境下での価値創造できる能力が不可欠になるでしょう」

もう一つのメガトレンドは、より一層テクノロジーによるイノベーションが急務になっているということだ。今まで3〜5年スパンで考えられていた構想が、現在は数日、数カ月で実現できなければ淘汰されてしまう状況だ。

イノベーションの必要性はどの企業でも言われているが、実際に所属する組織内だけで生み出すのは容易なことではない。技術だけあってもイノベーションは起きないし、一人のアイデアや意志の力には限界がある。ここに既存の組織内でイノベーションを起こすことの難しさがある。鈴木氏は言う。

「イノベーションを起こすには、既存の枠を壊し多種多様な叡智の組み合わせによる創造と変革が必要になります。また個人の意志に限界があるのは、帰属する集団に少なからず依存するからです。会社組織以外にも人的資産や能力を拡張させる環境を持てるかが今後は重要になってきます」

つまり、イノベーションを生み出せるコミュニティに所属していることが肝になるということだ。

イノベーションを生むコミュニティの要件とは

2030年の会議

会社組織はこれまでもオープンイノベーションやコ・クリエイションなど外部とのつながりの中で多様な価値を共創しようとしてきた。しかし、組織の意思決定をはるかに凌駕するスピードで外部環境が変動する今、ビジネスパーソン一人ひとりが自らの意志で新たなコミュニティに参画し、イノベーションを生み出す起点にならなければいけない。

では、先に触れたメガトレンドを踏まえると、今後はどのようなコミュニティに所属し、どのようにコミュニティを活用するのがよいのだろうか。イノベーションを生む「良質なコミュニティ」とは、いったいどんなコミュニティなのか。鈴木氏は言う。

「イノベーションには、まず自分が何のために何を成し遂げたいのかという志が重要です。イノベーションを牽引していく人物には必ず周囲の共感を生む志を有しています。その志に共感する個々人が集まると、互いに感化されより大きな志の実現のために必要な力が拡張していきます。

志を具現化するリーダーを観察していると、多くの人たちが、論理と感性、抽象と具象など両軸を行き来できる思考力を持っています。

そして、社会にアウトプットを出し続けることで創造と変革をもたらすことが可能となります。これらの能力を持続的に拡張できる環境を有していることが、良質なコミュニティの条件です」

鈴木氏は、既成概念を変革し、新しい価値を創造できるコミュニティの潤滑油となるのが、ダイバーシティと対話だと続けた。

「ダイバーシティに富むコミュニティであるほど、イノベーションが生まれる確率は高くなります。なぜなら、多様な仲間たちがインタラクティブに対話することで、自分とは異なる視点やアイデア、新しい気付きが生まれるからです。これが、イノベーションを加速させるのです」

オンライン×リアルというコンセプト

2030年のリモート会議

「ダイバーシティと対話」を同時に成立させるには、オンラインとリアルのシームレス化が鍵だと鈴木氏は話す。

「コミュニティを形成するにあたって、オンラインの強みが生きるのは、ダイバーシティの担保です。物理的な距離や空間といったオフライン上の制約を取り払えるため、いつでもどこからでもつながることが可能となります。日本だけでなく世界中から多様なキャリア、知見、スキルを持った人たちが集まることが、オンラインコミュニティの最大の強みです」

一方、リアルなコミュニケーションにもそれ特有の良さがある。例えば「表情」や「熱量」といったノンバーバル(非言語)な情報が非常に多い。私たちはふだん、こうしたノンバーバルな情報を大量にキャッチして、物事の判断をしている。表情や熱量によって伝わる情報の深度が増す —— これがリアルコミュニティの強みだろう。

「オンラインとリアルを、どちらが優れているかという二項対立のような捉え方は、もう時代遅れだと思います」

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鈴木健一(すずき・けんいち):グロービスAI経営教育研究所 所長/グロービス経営大学院 教員。東京大学大学院工学系研究科修了、シカゴ大学経営大学院修士課程修了。野村総合研究所を経て、A.T.カーニーで経営コンサルティング業務に従事。グロービスでは2006年の大学院設置認可、2008年の学校法人設立など、開学から2016年3月まで10年にわたり事務局長として大学院運営に従事。現在は教員としてテクノベートシンキング、ビジネスアナリティクス、ビジネスデータサイエンスなどの思考系科目、テクノベート系科目の科目開発や授業を担当。グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)の所長としてAIを使った次世代の経営教育を創るべく研究開発に注力。

鈴木氏は、こう力を込める。

イノベーションを生むコミュニティに必要なのは、「オンライン>リアル」「オンライン<リアル」といった考え方ではなく、「オンライン×リアル」の掛け算という発想で価値を最大化していくこと。

オンラインコミュニティの強み、リアルコミュニティの強みを生かし、両者の弱みを補い合うことで、理想的なコミュニティを実現できるというのだ。

グロービス経営大学院では、2014年からオンラインとリアルのシームレス化を目指し次世代コミュニティの形成に取り組んできた。オンラインでも教室でも、インタラクティブなディスカッションスタイルの授業を確立。学生たちは、課題に対して予習して授業に臨み、4~6名のグループに分かれてそれぞれが考え抜いた意見をぶつけ合う。

多様なキャリアを持つ仲間と教員との議論は、経営会議のような緊張感を有し、オンラインでも質の高い対話につながっているのだと言う。

「グロービスにはリアルとオンラインを境なく交流ができるようネットワーク構築のためのプラットフォームを提供しており、ここにもグロービスの強みがあります。
グロービスで学ぶさまざまな学生の中には、そのプラットフォームを通じて出会い、遠くにいる仲間とオンライン上で事業計画を立て実際に起業するといった、シームレスな活動をしている人が多くいます。

一方で、リアルな場でのコミュニケーションにも重きを置いています。特に年に一度、オンラインで学ぶ学生を含む、すべてのキャンパスの在学生・卒業生や教員、各界のトップリーダーたち1500人が一堂に会すカンファレンスがあるのですが、直接肌で感じる熱量に突き動かされて、自らの志の実現に動き出す学生をたくさん見てきました」

グロービス経営大学院は開学以来「創造と変革の志士」を育てる生態系を体現してきた。そして事実、輩出してきた人材の活躍は枚挙にいとまがない。彼ら、彼女らの卒業後の活躍を支えてきたのが、同級生はもちろんOBOGまで含めた良質のコミュニティなのだろう。

グロービスの志願者の多くは、ビジネスを学ぶだけではなく、グロービスというコミュニティで自身の能力や人的資産を拡張し、世の中に新たな価値を生み出したいと望む人が多いという。テクノロジーの進展で社会が指数関数的に変化していく時代。今こそグロービスのようなイノベーションを生み出すためのコミュニティの価値が一層高まっているのではないか。


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