最初のアイデアはマグカップでテキストを入力し続けることだった。
Rehaan Adatia
- コロナウイルスの影響で、在宅で仕事をする人が増えている。
- そのため、生産性の低下を懸念する管理職と、常にコンピュータに向かっていることを求められる従業員との間に緊張関係が生じている。
- 「Lurk From Home」は、マイクロソフトのTeamsやSlackのようなソフトを欺いて、オフラインにせずに休憩を取れるようにすることで、この問題を解決しようとするツールだ。
- その本当の目的は、人々をストレスから解放し、ワークライフバランスを改善して、生産性を向上させることにあるという。
コロナウイルスの大流行により、世界中の何百万人もの人々が在宅勤務を余儀なくされた。多くの人にとっては生まれて初めての経験ということもあり、移行は必ずしもスムーズには進んでいない。
これまでに、Zoomがうまくつながらなかったり、子どもが最悪のタイミングで話を中断したりといった、在宅ワークでは精神衛生を維持しつつ生産性を保つのがとても困難であるという事例をたくさん見てきた。
研究によると、精神的な問題の大部分は、子どもの世話をしたり、食事をしたりするために休憩を取ったり、新鮮な空気を吸ったりして、心に集中力を取り戻す機会を与えることで解決する。
しかし、生産性の低下を懸念している厳しい雇用主や管理職のせいで、あるいは同僚にサボっているという印象を与えたくないために、一部の労働者はそれができていない。
普段のオフィスでは誰が仕事をしているかをすぐに知ることができるが、今では多くの企業がマイクロソフト(Microsoft)のTeamsやSlackなどのツールによって誰が「デスクにいるか」を判断するようになった。中には、仮想プライベートネットワーク(VPN)やウェブカメラを利用して、一日中、従業員を監視している企業もある。
それは一部の従業員のストレスレベルを非常に高めているが、そのことはKPMGの経営コンサルタントのリハーン・アダティア(Rehaan Adatia)とバーテックス製薬の研究員であるハリス・アクバル(Haris Akbar)を触発し、在宅勤務の人々が自分のスケジュールをコントロールできるようするツールを開発させるに至った。
「従業員をチェックするための管理者によるマイクロマネジメント(強い干渉)が増加していることはわかっていた」とアダティアはBusiness Insiderに語った。そして、彼らがオンラインで調査した結果、多くの人が、管理者の許可なしに、あるいは同僚からの目を気にせずに休憩を取ることが困難だと思っていることを確認したと付け加えた。
そこで彼らは 「Lurk From Home」 というツールを作った。このツールは、Javaプラグインを使って断続的にマウスを動かしたり、バックグラウンドでメディアクリップを再生したりして画面をアクティブにしておくことで、チャットツールや監視ソフトをだまして、誰かがコンピューターの前にいるかのように錯覚させるものだ。
アダティアによると、人間の目はだませないが、Slack、Cisco Jabber、Teams、Skype for Business、Lyncのアクティビティログや、従業員が何をしているかを追跡するVPNを誤認させるのに十分だったという。
ハードウェアのハックから、ハードワーカーのためのソフトへ
アダティアとアクバルは、人々が怠惰にすることを目的にLurk From Homeを開発したわけではなく、このツールをそう認識してブロックしようとする企業に注意していると言った。
「これが人々をよりリラックスさせるツールだと思われることは理解できる」とアダティアは言った。
「しかし、これはユーザーに安心を与えるものであり、働いているときのパフォーマンスを向上させるのに役立つと信じている」
アダティアによると、「Lurk From Home」のアイデアは、数年前の夏のインターンシップで得たという。その時、彼はリモートで仕事をすることができたが、1週間では終わらないタスクを与えられた。
「私はすべての作業を自動化する方法を考え出した」
しかし、彼はワークチャットで応答できなければ、怠惰だと判断されるかもしれないとを心配していた。
その時の彼の解決策は、ノートPCで空白のドキュメントを開いて、キーボードにコーヒーマグを置き、テキストが入力され続けるようにして、ワークチャットに彼がオンライン状態であると思わせることだった。
「Lurk From Home」はもう少しハイテクなハックだが、アダティアは、多くの企業がリモート作業を奨励しているので、このようなツールが不可欠になるだろうと述べている。
アダティアとアクバルは、休憩を取ることを促すリマインダーや、同僚や仕事のネットワークとつながる機能など、生産性を高め、孤立感を減らすための追加機能を開発中だという。「Lurk From Home」は無料のツールだが、彼はこの追加機能が雇用者に対価を払ってもらえるものになることを期待している。
「長期的な我々の目標は、生産性だけに関係するのではなく、在宅勤務者向けの在宅勤務スイートを開発することだ」と彼は述べている。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)