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9月入学に8割が「慎重・反対」と自治体トップが回答。自民党内からも慎重論相次ぐ

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自民党本部では「秋季入学」を検討する会合が開催された。

撮影:横山耕太郎

「9月入学」を検討する、自民党の「秋入学制度検討ワーキングチーム」が5月25日、自民党本部で開催された。今回はワーキングチームに所属する議員以外の国会議員も参加する形で開催し、全国知事会、全国市長会、全国町村会の会長3氏がオンラインで参加しヒアリングが行われた。

ヒアリングでは、全国市長会の会長が、8割が「慎重・反対」を表明したというアンケート結果を示したほか、「まずは学びの確保が必要で、慎重な議論が必要だ」との指摘が繰り返された。

非公開で行われた自民党国会議員による意見交換でも、拙速に結論を出すことを避けるべきという慎重論が相次いだ。

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会合には全国知事会の飯泉嘉門会長らがオンラインで参加した。

撮影:横山耕太郎

知事会「国民的な議論求めたい」

全国知事会の飯泉嘉門会長(徳島県知事)は、全国知事会の意見として、「秋入学は休校に対する不安の解消や、グローバルな活躍に資するものと考えるが、社会に幅広い影響を及ぼすことになる。国民的な骨太の議論を行ってもらうことを強く求めたい」と述べた。

飯泉氏は来年度からの9月入学への移行について、以下の意見を紹介した。

・今回のような大きな危機が、今後の社会システムの変革を図る大きな契機になる

9月入学と新型コロナウイルス対策は切り離して考えるべきだ

・秋季入学の可否を含めて、今度の検討・討論のスケジュールを明確かつ早急に示してほしい

9月入学への移行が決まった場合の課題としては、「採用や資格試験の時期など社会全体のシステムとの整合を図ること」や、「家庭や学校、社会全体に過度なコストを生じさせない制度設計を行うこと」などが上がったという。

飯泉氏は「児童生徒は多くのストレスを抱えており、学校現場もそうだ。夢と希望を持てる制度設計をお願いしたい」と話した。

市長会は「8割」が慎重・反対

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会合の冒頭には自民党の岸田文雄政調会長があいさつに立った。

撮影:横山耕太郎

全国市長会の立谷秀清会長(福島県相馬市長)は、全国の市長と区長を対象に、5月21日と22日に行ったアンケート調査について報告。

アンケートには815市区のうち576市区が回答し、9月入学について「慎重」が62.5%と最も多く、「反対」が17.9%、「賛成」が18.1%、「保留」が1.6%という結果だった。

慎重と反対を合わせると8割を超えた。

9月入学に賛成の意見としては、「学習格差の解消のため、半年間ずらすのが有効だ」という意見や、「グローバル化に対応するためには必要」という意見があったという。

また反対はとして以下の意見を紹介した。

・新型コロナウイルスで全国の市長が安全を守るために血眼になっているときに、9月入学の議論をやっている状況ではない。集中して対応しているときに勘弁してほしい

・半年間入学が遅れれば、その間、子どもを預ける先の確保が大変

・企業にとって採用時期が半年遅れるのは避けたい

・留学する学生はほんの一部。全体で考えた場合、9月入学への移行は最良な手段なのか

立谷氏は「現場の声は8割が反対だった。現場の教育をあずかる市長・区長からの意見として理解してもらいたい」と訴えた。

「最重要は学びを取り戻すこと」

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この日の会合はワーキングチーム以外の議員も参加した。

撮影:横山耕太郎

全国町村会でもアンケート調査を実施。全国町村会の荒木泰臣会長(熊本県嘉島町長)によると、8割の町村会長が9月入学に「反対」だったという。

「どちらとも言いえない」が13%で、残りが賛成票だったが、2021年度からの9月入学の賛成意見はなかったという。

荒木氏は反対の理由意見としては以下の点を挙げた。

・4月入学が社会に定着しており、9月入学の導入は、社会全体に影響を及ぼす大きな制度改革。各界各層を交えた議論が必要で、拙速な結論は避けるべき

・そもそも学習の遅れをとり戻すという本来の課題が、9月入学導入の検討にすり替わるのは違うのではないか

・今でも様々な緊急対応で大変な中で、市町村の教育現場にさらなる混乱や負担を招くのは絶対に避けるべきだ

新型コロナ対応中に「制度改革はできるのか」

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自民党のワーキングチームでは、6月頭までに方向性を示すとしている。

撮影:横山耕太郎

アンケート結果を踏まえ、荒木会長はこう指摘した。

「9月入学については、これまでも議論がなされ、平時でも導入にいたらなかった。新型コロナウイルスと全力で戦っている中で、難しい制度改革は現実的に可能なのか、はなはだ疑問に感じざるを得ない」

その上で、重ねて慎重な議論を求めた。

「子どもたちにとって何が大切かを中心に考えるべきだ。最重要なのは、児童生徒に学ぶ環境を取り戻すこと。今でも教育の空白を埋めるため、地域の実情に応じて、分散登校や生徒のケアを行っている。国の在り方につながることであり、不安定な状況下ではなく、冷静な議論と判断が求められる」(荒木会長)

参加議員からも「慎重・反対」続出

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撮影:横山耕太郎

非公開で行われた党内での会合後、ワーキングチームは記者会見を開催し、出席議員からの意見について説明した。

「100人以上の議員が集まり、30人程度の議員から発言があった。ほとんどの議員が今年度、来年度の導入については慎重または反対の意見だった」(ワーキングチームの村井英樹事務局長)という。

今後は再度、ワーキングチーム以外の議員を交えた会合を開き、6月頭までにワーキングチームの方向性を決定するという。

ワーキングチームの柴山昌彦座長は、「賛否両論あるが、単純な両論併記ではなく、一定の目印を示すような方向性を示したい」とした。

文・横山耕太郎

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