撮影:鈴木愛子
Business Insider Japan読者にも多い「30代」は、その後のキャリアを決定づける大切な時期。幸せなキャリアを歩むためには、転職にまつわる古い“常識”にとらわれず、刻々と変化する転職市場のトレンドをアップデートすることが大切です。
この連載では、3万人超の転職希望者と接点を持ってきた“カリスマ転職エージェント”森本千賀子さんに、ぜひ知っておきたいポイントを教えていただきます。
前回は、ビジネス系フリーランスとして活動する人が増えていること、企業側も高度な専門業務や事業開発などのミッションに「業務委託」としてフリーランスを積極活用していることをお伝えしました。
では、フリーランスという働き方に向いているのはどんな人なのでしょうか。実際、ビジネスフリーランスとしていきいきと活躍している方々と接していると、次のような志向・タイプの人が多く見られます。
やりたいことが多く、時間を効率的に使いたい人
組織に縛られない働き方が注目を集めている。フリーランスに向いているのはどんな人だろう?
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「この会議は本当に必要なのか?」「自分がこの会議に出席する意味はあるのか?」——そんなモヤモヤを抱いたことはありませんか?
また、業務とは関係ない会社のイベントや飲み会などに時間を割かなくてはならないことに、もどかしさを感じている方も多いことでしょう。マネジャーになると、部下のマネジメントや評価に頭を悩ませることもあり、「自分でやったほうが早い!」なんて思うことも。
「自分のミッションを成功させるために必要なことだけに集中して時間を使いたい」という人にはフリーランスが向いていると思います。組織の一員でいることで生じる「プラスα」を省き、自身の専門スキルを活かす仕事に集中できる、というわけです。
このように「時間を効率的に使いたい」という人は、「やるべきことが多い」「やりたいことが多い」とも言えます。育児や介護など家庭にウエイトを置かなければならない人もいますし、趣味の時間を大切にしたい人も。
例えば、「音楽活動を本格的にやりたい」「海外のトライアスロン大会に出場するため、長期休暇を取りたい」といった理由で会社を辞め、フリーランスになった方もいます。
また、ある方は「子どもを自然豊かな環境で育てたい」と家族で離島に移住。フリーの経営コンサルタントとして、時々東京に1カ月間ほど出張して集中的にプロジェクトをこなし、普段は離島でリモートワークをしていらっしゃいます。
高度なスキルを持っていれば報酬単価も高く、フルタイムで働かなくても短時間で高収入を得ることも可能。家庭や趣味に時間を使いたい、でも収入を減らしたくない……という方々が、フリーランスへの転向によってそれを実現しているというわけです。
専門領域について、スキルを磨き続けたい人
フリーランスという働き方を選択する人は「自由」を求めていると思われがちです。たしかに一面の事実ではありますが、それだけではありません。
「専門職としてスキルアップしたい」「より深く経験を積み上げたい」という志向から、フリーランスで活動している人もいます。
「人事」のプロフェッショナルを例にとってみましょう。
所属する会社で人事制度を作り上げたら、あとはその制度を運用、改善していくのみ。それよりも「さまざまな人事制度構築のフェーズを手がけたい」「ケーススタディを多く積み上げたい」という場合、1つの会社にとどまるよりもフリーランスの立場でさまざまな企業の人事制度企画プロジェクトに携わったほうがいい、ということです。
キャリアの選択肢を広げたい人
こちらは前の人とは少し異なるタイプ。自分の専門スキルをさまざまな会社に提供しながら、行く先々の会社で新しい経験を積みたい、という人です。
先ほどと同様、人事のプロを例に挙げるなら、成長中のベンチャー企業で人事制度構築を担うと同時に、人事をターゲットにしたサービス(プロダクト)開発や人材領域の新規事業開発にも携わるなど。つまり、自分の専門領域をマーケットと捉えて、「事業を創る」側で新しい経験を得る、といったようなことです。
それによってキャリアの幅を広げ、将来の選択肢を増やしたいという人もいます。複数のスキルを持ち、それらを掛け合わせることで「希少人材」となれば、さらに報酬単価アップも狙えます。
「専門性を追求したい、キャリアの選択肢を広げたいといったニーズにも、フリーランスという働き方は向いています」と語る森本さん。
撮影:鈴木愛子
フリーランスに向いている人の素養とは?
では、フリーランスとして活躍できるようになるためには、どんな素養が必要なのでしょうか。いくつかのポイントをご紹介します。逆にこれらの素養がない人は、フリーランスとして働く中でストレスを感じることになりますので、あまり向いていないと言えるかもしれません。
1. セルフマネジメント力がある
フリーランスの場合、働く時間や仕事量を指示・管理してくれる人がいません。評価してくれる人もいません。ですから、自分で自分をマネジメントする必要があります。
特に「時間」については、フレキシブルである分、自制心がなければだらだらしてしまいます。
それとは逆に「働きすぎてしまう」という人も。会社から定められた休日がない分、24時間・365日稼働し、体調を崩してしまう人も少なくないようです。
オン・オフのメリハリをある程度つけられること、モチベーションをコントロールできることが大切です。とはいえ、オン・オフを完全に区切ることは難しいため、「仕事を家に持ち込みたくない」という人にも難しいかもしれません。
2. 楽観的である
自分を追い込みすぎず、「何とかなるさ」と楽観視できるマインドセットもフリーランスには必要。
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フリーランスは、基本的に「自分の代わりはいない」という立場にあります。「自分で何とかしなければ」という意識が強すぎると、そのプレッシャーに押しつぶされてしまうこともあるようです。
「何とかなる」「誰かに助けてもらえばいい」というくらいのマインドでいなければ、つらくなってしまうかも。
同じ分野のフリーランスの仲間をつくったり、コミュニティに参加したりするなど、助け合える体制を作っておくとと安心だと思います。
3. 変化を楽しめる
業種やその人にもよりますが、クライアントが短期スパンで変わっていくこともあり得ます。「毎月、新しいクライアントの案件を受ける」という人も。その都度、相手の価値観や考え方、ルールといったものに合わせて対応することになるため、「変化が苦手」という人は苦痛に感じるかもしれません。
変わることに抵抗がない人、むしろ「同じ相手と同じことをやり続けるのは飽きてしまう」といったタイプの人のほうが、フリーランスの生活を楽しめるでしょう。
4. 新しい知識を自ら吸収し続けられる
フリーランスは自分個人の知識・スキルを売っていくことになります。常に最新の知識をアップデートしていかなければなりません。会社に所属していれば、会社が「研修」などの成長機会を提供してくれますが、フリーだと誰もお膳立てしてくれませんから、自らキャッチアップしていく姿勢が欠かせません。
以上を参考に、フリーランスになった自分を想像してみてください。もちろん、「向いていると思ったけれどそうでもなかった」ということもあれば、逆もあるでしょう。
一旦フリーランスになったとしても、そこで経験を積み、再び企業に勤務する人も少なくありません。思い切ってチャレンジし、その自由度を経験してみてもいいのではないでしょうか。
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※本連載の第19回は、6月1日(月)を予定しています。
(構成・青木典子、撮影・鈴木愛子、編集・常盤亜由子)
森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。