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新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、世界中でオフィスワーカーがテレワークに切り替え、働き方の変革が進んでいる。日本でも在宅勤務をする動きが広がるが、急なテレワークへの移行に戸惑う企業が少なくない。
企業や社会の制度、職場の文化、働き手の意識、そしてIT環境⋯⋯。テレワークへのスムーズな移行を実現するためには、何が必要なのか。
さまざまなツールが活用される中で、ワンストップ、しかも無料という特徴を持つ統合型コラボレーションツールを提供するのは、Lark Technologies Pte. Ltd.(本社:シンガポール)。同社のCommercial Lead AsiaのVPのJoey Lim氏にグローバルで今起きている働き方の変化を、同社マーケティング部長の松本達彦氏に日本市場の動向を聞く(聞き手はBusiness Insider Japan統括編集長・浜田敬子)。
アフターコロナで、マネジメント層が変えるべきこと
Lark Technologies Pte. Ltd.のJoey Limさん。テレワークが浸透していく今後、企業は「職場の文化や、働く人のマインドセットの変革が求められる」と指摘した。
浜田敬子(以下、浜田):シンガポールのLark本社に勤務されているJoeyさんは、今、在宅でお仕事されているのでしょうか。シンガポールの企業は、テレワークはスムーズに移行しましたか。
Joey Lim(以下、Joey):私自身はフレキシブルに、オフィスで働いたり家で働いたりしています。シンガポールでは、コロナ以前から多くの企業が在宅勤務を奨励しており、コロナが流行し始めた当初は19%の企業が在宅勤務でした。4月7日から感染拡大防止のため出社を原則的に禁止するサーキットブレーカー(外出規制)期間に入り、強制的な在宅が進められ大半の企業や学校が閉鎖されました。コロナの影響が出始めて最初の1週間は在宅勤務がとれる体制を取っていない企業はかなり苦労しているようでしたね。アンケートでは、62%の企業が「コロナが終息した後も在宅勤務を奨励する」と回答しています。
浜田:日本でも在宅勤務はかなり増えてきて、大企業の約9割でテレワークが定着しているという調査がありますが、導入にはいくつかの課題も見えてきました。例えば、中小企業では環境が整っていない、環境を整えるためのコストが負担できないといったことです。シンガポールはどうクリアしているのでしょうか。
Joey:急にテレワークに移行することになったものの、多くの中小企業ではテレワークに対応したテクノロジーやコミュニケーションプラットフォームが整備されていませんし、それらを使うためのサポートも必要です。
インターネットにおけるコミュニケーションのクオリティも十分とは言えず、それ自体が在宅勤務を阻害する要因になっていたと思います。とはいえ、例えばクラウドを使ってテレワークに適した環境を設定するなど、さまざまな方法で解決しようとしています。
ただ、多くの企業に言えるのですが、今後は物理的なシステムだけではなくマインドセットや文化を変えていく必要があります。マネジメント層は、自分たちの目の届かないところにいる従業員を管理するのが難しいと考えている。オフィスで長時間働くことに価値を置いている人も多い。
そうしたマネジメント層に対してマインドセットを変えるようトレーニングし、離れていても従業員とコミュニケーションを取ったり管理したりでき、結果ベースで生産性を高めていくべきだと理解してもらわねばなりません。
テレワークで女性の新しい扉が開く
Business Insider Japan統括編集長の浜田敬子。
浜田:では、今回のテレワークによって、コロナ収束後、働いている人のマインドセットや文化はどのように変わると思われますか。
Joey:テレワークにはさまざまなメリットがあります。例えば通勤のために移動する必要がないので生産性が上がる、子どもがいても働ける、いろいろな経費を削減できるということも、今回のことで分かった。また、柔軟に働ける環境を整えることで優秀な人材をひきつけることができると思います。シンガポールでも高齢化が進んでおり、人材の確保が難しいと言われていますが、そういった面でもテレワークはメリットが大きいですね。
浜田:日本では子育てや介護、家事が女性に偏っており、共働きをしていても女性だけが時短勤務しなければならない、能力のある女性たちが力を発揮しにくいという状況があります。半強制的にテレワークになったことで、学校や保育園が再開すれば在宅ワークによって女性がもっと能力を発揮しやすくなるのではないかと私は思っています。
Joey:私も女性にとって、新しい扉が開くいい機会だと思います。シンガポールでも、子育てや介護によって女性が仕事を諦めるケースがありますが、テレワークで仕事を続けることができれば非常にいい。場所を問わず、常にコミュニケーションを取れるので、従来の働き方とは大きな違いを生むと私は考えています。
イノベーションを起こすための「テレビ会議活用法」
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浜田:一方でリアルに会う大切さが、改めて指摘されています。一つは、まだ会社に慣れていない若い社員が、会社で先輩たちの仕事ぶりを見て学ぶ機会、キャリアを形成する機会が失われるのではないか。心理的な安全が奪われて孤独になってしまうのではないかということ。もうひとつは、日本のある経営学者が「イノベーションは偶然の出会いによって生まれる」とおっしゃっていますが、テレビ会議は事前に決まったメンバーが決まったテーマで集まるので、偶発性が起こりにくい。そうすると、イノベーションが起きる確率が減るのではないかということです。この2つを解決するにはどうしたらいいのでしょうか。
Joey:若い社員がキャリアを形成するには、組織におけるメンターが必要です。そうした存在がいることによって、目標を明確に持ち、学ぶことができるようになると思います。テレワークであってもメンタリングの制度を導入したほうがいいでしょう。同時に、マネジメント層は「こういった仕事をすればこういった結果が出る」と、若い社員に明確に示していくことも大切です。
イノベーションについては、カジュアルな形でいいので、コミュニケーションの機会を増やしていくことが求められると思います。テレビ会議は、従来の会議よりも自分の言いたいことを話しやすい、意見を言いやすいなどのメリットがあります。
当社ではテレビ会議をよく行っていますが、メンバーとドキュメントを共有してその内容を更新できる機能を利用し、みんなでアイデアを出し合うブレインストーミングを行っています。会議は音声だけでなくビデオもオンにし、どんな表情で意見を出したか分かるようにする。こうしたセッションを開くことで、みんなが自由な形で声を上げることができ、イノベーションが起こるのではないかと考えています。
また、Larkのオンラインオフィス機能を立ち上げておけば、離れていてもすぐにコミュニケーションをとることができます。ビデオ通話ではなく、音声コミュニケーションを使うことで、同僚とより気軽にコミュニケーションが取れるようにする機能です。リモートの環境になった場合は、こうしたコミュニケーションが必要だと考えています。
時間の感覚、オフィスの役割 ——コロナ禍で変わる日本の働き方
「社会全体でテレワークに移行したことで、時間や移動に対する感覚が変わった」と話すLark Technologies Pte. Ltd.マーケティング部長の松本達彦さん。
浜田:松本さんには日本の事情を伺います。Joeyさんのお話から、マネジメント層に対するサポートやマインドセットの改革がなければ、テレワークがスムーズに導入できないと強く感じました。松本さんが感じるテレワークのメリットは何でしょうか。
松本達彦(以下、松本):オンラインの方が発言しやすいという点が挙げられるかと思います。特に若い方は、チャットでのコミュニケーションが得意な方が多いと思いますし、テレビ会議も発言しやすい。オフラインの会議では今まで偉い方ばかりが話していたかもしれませんが、それが変わるかもしれない。
そしてやはり、通勤時間の短縮も大きなメリットです。コミュニケーションについては、テレビ会議でも、思った以上にフェイス・トゥ・フェイスでの感覚に近いことが分かりました。むしろ時間に余裕ができた分、ミーティング前にアジェンダを見直したり書き直したりと、念入りに準備するようになりました。その方が、会議時間が短くて済みますし、議論が活発になると思います。
浜田:確かに、今回、時間の感覚は変わったと思います。例えば取引先との打ち合わせに足を運ぶとなると移動時間がかかっていましたが、大企業が率先して「オンラインにしよう」と言うケースも増えてくるでしょう。そうすると関係する中小企業も、テレワークを導入せざるを得なくなります。
松本:特に長距離の移動が必要な場合は、出張コストの削減のためにもオンラインが増えますよね。出張の必要性を考え直すきっかけにもなると考えています。
浜田:テレワークが進むとオフィスの価値、役割も変わってきますよね。
松本:オフィスは今までのように単に働く場所から、ミートアップ、みんなが集まるための場所になる。リモートとフェイス・トゥ・フェイスの強みを生かすことで、生産性はもっと上がると感じています。
ワンストップで使えるビジネスツールなら、参入障壁を下げられる
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浜田:Larkはチャット、会議、カレンダー、ドキュメントの共有、クラウドストレージ、各種申請書類等のワークフローの自動化などワークプレイスに必要な機能がすべて無料とうかがいました。中小企業の経営環境が今後より厳しくなって、テレワークへのコストはかけにくい。そういうときに無料は強みになりますね。
松本:クラウドストレージが200GBまでという制限あるものの、他のすべての機能は無料で使えますので、ビジネスだけでなく学校での導入も増えてきています。テレワークが可能になると、オフィスの賃貸料を削減できます。そういった固定費を削減してIT投資に回すことも可能ではないかと思います。
浜田:機能ごとにバラバラのツールを使っている企業も多く、あれこれ立ち上げて切り替えなければいけない複雑さもテレワークが進まない一つの要因になっていると思います。
松本:そうですね。複数のツールを使い分けなければいけなかったり、同じツールでもモバイルとデスクトップでUIが違ったりすると戸惑う社員も多いでしょう。Larkは使いやすさを追求しており、テレビ会議もカレンダーやチャットからワンクリックで参加できます。Larkという一つのアプリケーションですべて済むので、ITツールの操作に自信がない方も簡単に使える。導入障壁が低くなると思います。また、一つのツールで全ての作業が行えることで、アプリ間の移動などのツール変更のスイッチングコストが削減され、生産性向上へも寄与することになります。
すでにある程度のテレワーク環境を備えている大企業が多いのに対し、中小企業の中には今まさに環境整備を急いでいるという企業もあるのではないでしょうか。この先の働き方がどう変わるのか、そして企業は何をする必要があるのか──。
Larkを含むツールやデバイス、セキュリティ、ネットワークを提供するサービス会社が手を組んで、テレワークのメリットを発信していきたいと思っています。
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