インドは国家的なZoom(ズーム)排除に乗り出している。
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インド政府が国産のビデオ会議ツール開発に乗り出したことが明らかになった。5月25日にインド最大のテクノロジーニュースメディア「ガジェット・ナウ」が報じた。
インド政府の発表によると、2段階プロセスによる開発委託事業者の選定に着手。1次選考に参加する10社がすでに選ばれ、各社50万ルピー(約71万円)の助成金を受け取り、プロトタイプ(試作)の開発に取りかかるという。
2次選考には10社のうち3社が残り、各社200万ルピー(284万円)をもとに完成品をつくる。
そこから最優秀のシステムを提案した1社が選ばれ、インド連邦政府および州政府と4年間のシステム提供契約を結ぶ権利を得る。
契約金額は初年が1000万ルピー(1422万円)、2年目以降もアップデートやメンテナンスに毎年100万ルピー(142万円)が支払われる。
1次選考には、日本にも長く拠点を置く世界的エンジニアリングサービスベンダーのHCLテクノロジーズやクラウドソフトウェアのゾーホー(ZOHO)などが選ばれている。
インドは2020年4月、世界で最もZoomがダウンロードされた国
Zoomは2020年4月、App StoreとGoogle Playの両方で、世界で最もダウンロードされたアプリのトップに君臨した。インドはその中でも最大シェア。
Screenshot of Sensor Tower Blog
インド政府のこの動きは、国家的なZoom排除の動きと連動している。
米調査会社センサータワー(Sensor Tower)は5月7日、「2020年4月に世界で最もダウンロードされたアプリ」を発表。ゲーム以外ではビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」をトップとした上で、なかでもダウンロード数の一番多かったのがインドで、18.2%(2384万回)を占めたことを明らかにした。
しかし、これはインド政府の意向に大きく反する結果だった。
同国のサイバーセキュリティ監視当局であるサイバー・コーディネーション・センター(SCC)がZoomの安全性に問題があることを指摘したのを受け、インド内務省は「セキュリティの不安とプライバシーの問題から」政府職員に公用での使用を回避するよう勧告していた。
その後、5月22日には、適切な法規制が導入されるまで政府職員に公用・私用を問わずZoomの使用を禁止する命令について、インド最高裁判所がSCCに意見を求めるなど、Zoom排除に向けて国家的な動きは加速している。
(文:川村力)