LINE上の活動によって算出される「LINE Score」。その利用価値がアフターコロナでどう変わるか(写真は2019年6月のLINE Scoreローンチ時のもの)。
撮影:小林優多郎
LINE子会社のLINE Creditは5月28日、同社がコミュニケーションアプリ「LINE」上で展開する個人向け信用スコア「LINE Score」およびそれを利用した個人向けローンサービス「LINE Pocket Money」の利用動向を明らかにした。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてさまざまな活動の自粛喚起が行われており、経済的に大きな打撃を被って緊急融資を求める個人・企業が増えている。
一方で、融資する側の銀行など各種金融機関は経済悪化時の貸し倒れを警戒し、与信を引き締めるとの予想もある。
そんな状況下で、個人スコアは今後社会にどのような影響をもたらす可能性があるのか。LINE Creditの吉永幹彦社長とサービス企画チームマネージャーの川崎龍吾氏に、同社がこのたび公開した資料をもとに、withコロナ時代のユーザー動向の変化を聞いた。
ユーザー500万人突破、信用スコアで個人向け少額融資
LINE Scoreのユーザー数は1年弱で500万人を超えた。
出典:LINE
LINE Scoreは基本的に、LINEユーザーが登録を行ってからスコアリングを開始する「オプトイン」型のサービスだ。2020年5月5日時点で登録ユーザーは500万人超。LINEの国内月間アクティブユーザーは8400万人(2020年1月末時点)だから、単純計算すると、LINEユーザー全体の5.9%以上が登録するサービスとなっている。
また、そのうちの20万人超がLINE Pocket Moneyに申し込んでいるという。LINE Pocket Moneyは契約極度額が5〜300万円、金利が実質年率3.0〜18.0%というローンサービスで、「個人の小規模な緊急時利用」を想定したものだ。
LINE Pocket Moneyで借りたお金の主な使用用途。
出典:LINE
同社がLINE Pocket Moneyユーザー男女4520人を対象として、2月26日〜3月3日に実施した調査によると、借りたお金の用途の1位は「食品・日用品」、2位は「趣味/レジャー」、3位は「交際費(飲み会)」だった。日常的なシーンでの利用が多いことがわかる。
LINE Pocket Moneyの借入件数や頻度。
出典:LINE
また、2月1日〜3月15日の借入件数の金額ごとの比率を見てみると、「1万円未満」が34%、「1万円以上3万円未満」が31%と、6割超のユーザーが3万円未満の小規模な借り入れを行っていることがわかる。
“スマホアプリ”としての強みを活かす
LINE Scoreのサービス企画チームマネージャーを務める川崎龍吾氏。
撮影:小林優多郎
先の調査は新型コロナウイルス感染症が拡大し緊急事態宣言が発令される前のデータだが、足下の利用状況について川崎氏は「感染症拡大の影響が出てきている部分がある」と語る。
LINE Pocket Moneyのユーザー構成比を見ると、2020年3〜4月は、1〜2月に比べて以下のような傾向があるという。
出典:LINE
出典:LINE
- 非正規雇用(自営業、派遣・契約社員、パート・アルバイト)のユーザー比率が増加
- 従業員数10人未満の規模の会社に勤める・経営する個人が増加
- 賃貸物件に住むユーザーが増加
- 飲食店に従事するユーザーが増加
これらの「個人事業主・非正規雇用」「小規模な企業に従事する」「自己所有物件がない」といった要素は、従来の金融機関では「一般的に(融資先として)評価されにくい傾向がある」と川崎氏は語る。
LINE Pocket Moneyは貸金業法に基づくサービスのため、貸付可否や諸条件の提示には日本信用情報機構(JICC)の信用情報なども参照しているが、それに加えて、独自にLINE上の行動情報をもとに算出されたLINE Scoreをかけ合わせている。
「属性情報に偏ったものではない条件の提示、貸付(の判断)が可能になるのではないか」と、川崎氏はクレジットテック(Credit Tech)の可能性に言及した。
LINE Pocket Moneyの仕組み。
出典:LINE
同社の2020年4月の月間新規申込者数は約3万9000人。一方、大手金融アコムの同月新規申込者数は3万3167件、アイフルは3万3066件(両社の月次データによる)と、単月だけで見ればLINE Pocket Moneyの申込件数が上回った。
大手金融事業者は新型コロナウイルス感染症拡大予防の観点で、有人店舗の閉鎖、無人店舗の営業時間縮小を行ったため、獲得件数が減ったことが原因のようだ。
今後、LINEグループのアセットをさらに活用
LINE Credit 代表取締役CEOを務める吉永幹彦氏。
撮影:小林優多郎
もちろん、LINE Pocket Moneyのような個人向け融資のサービスを、手軽だからといって、あるいは緊急時だからといって、性急に使っていいものかと問われれば、やはり慎重な目で見る必要があると言いたい。
金額がいくらであれ、借金はあくまで借金なのだから、しないに越したことはないからだ。
LINE Credit社長の吉永氏は「政府による無利子の貸付制度が利用できるのであれば、そちらを使っていただくほうが良い」と語る。
「世の中が通常の状態に戻るまでサポートし続けるような体力は我々にはない。我々にできることは、(政府などの)いろいろな対応が進むまでの間、早めにできる範囲で支援を行う。足下のサポートが必要な人に何かお手伝いができないか考えている」(吉永氏)
LINE Creditの中長期的な計画。
出典:LINE
LINE Creditでは、信用情報(LINE Score)とその取り扱いノウハウを使い、今後は中小企業向けローンやあと払いサービス、保証サービスなどにも事業を拡大していく方針だ。
(文・小林優多郎)