米金融大手バンク・オブ・アメリカが発表した住宅市場レポートが話題を呼んでいる。
Michael H/Getty Images
- 米金融大手バンク・オブ・アメリカが発表したレポートによると、パンデミックによる住宅市場の低迷はすでに底打ちし、従来見通しより1年回復が早まる模様だ。
- レポートは、住宅ローン申請件数と、住宅購入者および建設業者の景況感を示す指数がいずれも増加していることを指摘している。
バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)は5月上旬の段階で、パンデミックの影響により住宅価格が翌年にかけて2%下落し、2021年4月に底打ちするとの予測を発表していた。
ところが、バンカメが最近出したレポートによると、最新のデータを分析した結果、住宅市場はすでに底打ちして回復に向かっていることがわかった。
バンカメのレポート「ハウジング・ウォッチ」は次のように分析している。
「住宅市場は経済停滞の被害者であって、停滞の原因ではない。住宅市場のファンダメンタルズ(基礎的な指標)は堅実で、反発に転じればあとは自然に回復へと向かう。課題はまだ残るが、回復プロセスはすでに始まっている」
こうした見通しのアップデートにつながった指標のひとつは、住宅ローン申請件数だ。
米抵当銀行協会(MBA)のレポートによると、5月9〜15日の週は、その前週に比べて申請件数が6%増加したという。MBA経済産業予測部門のアソシエイト・ヴァイスプレジデント、ジョエル・カンはこう書いている。
「住宅ローン申込件数は4月の大幅下落からの回復中で、5月9〜15日の週まで5週連続で増加を続けている。(増加に転じる以前の)6週間前は前年を35%下回る水準だったが、あらゆるローンにまんべんなく申し込みが入っており、現時点で前年をわずかに1.5%下回るところまで回復している」
バンカメのレポートはさらに、ミシガン大学が毎月調査・発表している「消費者信頼感指数」について、住宅購入のタイミングとしてふさわしいと回答した人の割合が増えていることを指摘している。
建設業者の景況感は回復基調
4月に統計開始後最大の下落幅を記録した住宅市場指数も回復基調に。
Shutterstock.com
建設業者の景況感も同様で、全米住宅建設業協会(NAHB)とウェルズ・ファーゴが発表したレポートによれば、5月の新築一戸建て販売の現況指数は前月から7ポイント上昇して37になった。4月は統計開始後最大の下落幅を記録していた。
住宅市場指数は50を超えると「事業環境が良い」と判断される。したがって、5月の数字はなお厳しい景況感を示していることになるが、それでも4月から持ち直したことは市場にとって良い傾向と言える。
パンデミックが建設業者の景況感にもたらした影響を俯瞰するため、米CNBCテレビは2019年12月の住宅市場指数が史上最高値の76を記録したことを紹介している。
レポートのなかで、NAHBのディーン・モン会長は現状を次のように分析する。
「ほとんどの州において住宅供給は不可欠の事業と位置づけられており、そのために住宅建設関係の労働者は多くが(このパンデミックのさなかでも)職を失わずに済んでいる。そして、その状況は建設業者の景況感にも的確に反映されている」
「また建設業者の側でも、ソーシャルメディアやヴァーチャルツアー、オンライン(不動産売買)契約などのイノベーティブな手法を活用して、購入者に必要な情報とアクセスを提供し続けることで、新たなビジネス環境に柔軟な対応をみせている」
5月の住宅市場指数は内訳としても好調な数字を叩き出している。「現在の住宅販売状況」は6ポイント増えて42に、「今後6カ月間の販売見通し」が10ポイント増の46、「購入者のアクセス状況」が8ポイント増の21だった。
新型コロナによる市場低迷は「すでに底打ち」
さまざまな指標から住宅市場の回復が見えてきている。
Shutterstock.com
NAHBのチーフエコノミスト、ロバート・ディーツはレポートでこう指摘している。
「外出自粛令が解除される州や地域が広がり、一時帰休中から復帰する労働者が増えるにつれ、需要は高まっていく。住宅ローン申込件数は4週連続(最新のバンカメレポートでは5週連続)増加中で、購入者のアクセスもここ数週間増加を続けるなど、さまざまな指標から住宅市場の回復が見えてきている」
「しかし、高い失業率に加え、建設業者向けローンへのアクセスや建設資材の供給量など、サプライサイドの課題が目先では回復の足かせとなる可能性がある」
バンカメによると、消費者および建設業者の景況感データ、住宅ローン申込件数とも、すでに底を打ったという。また、住宅投資も2020年第4四半期(10〜12月)には好転する模様だ。
「住宅投資はGDP成長率に引きずられて第2四半期、第3四半期とも低調が続くが、第4四半期には好転するとみている。住宅市場は経済に再び明るい話題を提供することになる。とはいえ、経済全体の停滞感を考えれば、平坦な道ではないだろう」
(翻訳・編集:川村力)