休業緩和2段階で再開するミニシアター「3億3000万円支援」は命の水になるか?

takadasekaikan

100年を超える歴史を持つ新潟の映画館「高田世界館」。同館も基金に参加、支援を受ける。

提供:高田世界館より

新型コロナウイルスの影響で休館を余儀なくされた全国のミニシアター(小規模映画館)が、緊急事態宣言の解除に伴い続々と再開している。

東京都は独自のロードマップを発表し、休止要請の段階的な緩和を進めている。映画館に関しては、緩和基準の2段階目「ステップ2」に分類。29日に開かれた東京都の対策本部会議で、6月1日からステップ2への移行が決定したところだ。

ミニシアター・エイド基金で1カ月間で3億3000万円を集める

minitheateraid

ミニシアターエイド基金には1カ月で約3億3000万円が集まった。

出典:ミニシアターエイド基金のクラウドファンディングサイトよりキャプチャー。

今回の新型コロナウイルス感染症は、全国のミニシアターに存続の危機をもたらしたのと同時に、ミニシアターの持つ潜在力を見せつけた。

収入が得られず、閉館の危機に襲われたミニシアターを救うために行われたのが、クラウドファンディング「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」

深田晃司監督や濱口竜介監督が発起人となって、有志で立ち上がった。資金を募り、この基金に参加する全国118劇場・103団体に分配する。4月13日にプロジェクトをスタートさせると、4月15日には1億円を突破した。そしてプロジェクト最終日は5月14日だったが、ホームページにアクセスが集中したのか、繋がりにくくなり、急遽1日延長することに。

最終的に2万9926人から合計3億3102万5487円と驚異的な金額が集まった。

ミニシアター・エイド基金で集まった約3億3000万円は、基金に参加し、ミニシアターを運営する各団体に約300万円ずつ分配される。

takadasekaikanueno

新潟県の映画館「高田世界館」の上野迪音支配人。

撮影:大塚淳史

新潟県上越市にある1911年開業の映画館「高田世界館」は、5月15日に再開した。上野迪音支配人は、基金から得られる分配金に感謝した。

「コロナが報道されるにつれて、2月頃から客が減り、休館する4月中旬前には、何をしても人が来ず、1日の上映で計7人の日もありました。通常時であれば、平日で30人、休日で60人。うちはテナントではなく、運営を少人数で行っているので固定費も少ないのですが、経営的に厳しくなります。だから、基金の配分金(約300万円)を頂けることは、通年の売り上げ減の穴埋めになりますし、それ以上に、気持ちの面で、まだなんとかやれるという支えになります

mukashi

高田世界館の当時の建物の写真。

提供:高田世界館より

高田世界館の館内。

高田世界館の館内。

提供:高田世界館より

高田世界館は、映画上映中に歌ったり踊ったり、紙吹雪が舞ったりする「マサラ上映」(インド式映画視聴スタイル)やスクリーンに向かって声援を送る応援上映で有名だ。

「当面、マサラ上映ができないかもしれません。接触感染や飛沫感染の恐れがあります。売りのマサラ上映ができないのは痛い。それが好きで来られるファンの方々が多く、県外からも来るほどです。今後も、高田世界館ならではの、イベントやオフ会に力を入れていきたい」

約300万円の分配金で「1カ月分は助かる」

dainanageijutsugekijou

“ナナゲイ”の愛称で知られる大阪の名物ミニシアター「第七藝術劇場」。

提供:小坂誠さんより。

大阪・十三にあり、近畿圏の映画好きには有名なミニシアター「第七藝術劇場」と「シアターセブン」は5月23日から再開した。両館の映画番組編成を担当する小坂誠さんは、基金額に驚いたという。

予想を上回る額で驚きました。感謝しかありません。これだけの方々が応援してくれていることで、この劇場をつぶしてはならないと改めて気力を分けてもらえた。ただ、これは2回目があるものではない。皆さんの善意だけに頼るということは、今後はしてはいけない」

2館合わせて、テナント料や人件費など固定費が、毎月300万円弱かかるという。今回の分配金を得ることで、1カ月分は助かる。

とはいえ、例えば2月や3月に上映を終えた作品の配給会社への支払いが今後あり、固定費から上乗せとなる。約300万円という分配金で一時しのぎにはなる。

再開後の運営は厳しい状況が続くと、小坂さんは覚悟する。

宣伝ができていない作品が多いので、再開してもしばらくは新作が公開出来ない状態が続きます。席数制限は来場客の心理面もあって、営業再開しても年内は赤字が続くでしょう。それでも応援してくれている方々に対して、再開することで何かしらのメッセージを発することができるかなと思います」

都内で賃貸のミニシアターは再開しても厳しい

asaitakashi20200514

アップリンクの浅井隆代表。

提供:アップリンク

東京の渋谷と吉祥寺でミニシアターを運営し、配給会社も兼ねる「アップリンク」の浅井隆代表は、基金に億単位の支援が集まったことに感謝しつつも、難しいと話す。

「今回、3億円以上が集まることはすごいことだし、日本の映画ファンには感謝します。もちろん助かります。が、(約300万円は)アップリンクでは1カ月しか持ちません」

その大きな理由は、ミニシアターが都市部にあるか地方にあるか、持ちビルか賃貸かで大きく固定費が異なるという。

「(東京都で映画館が)6月1日にもし再開できたとしても、自転車操業になるでしょう。自転車を漕ごうとしたとしても、ずっと1席空け、客が来ないとなると、集客面でブレーキがかかった状態です。体力を使い果たすでしょう。

地方の映画館なら、例えば、賃貸でも家賃20万円ですむかもしれないが、都内はそれどころではない。自社ビルなら運営コストを下げるなどで都内でまだできるかもしれませんが」(浅井代表)

アップリンクはオープンが延期となっていた、京都に新しく作ったミニシアター「アップリンク京都」が6月11日の営業開始も決まった

新型コロナが映画産業に与えたダメージは計り知れない。ミニシアターが再開したところで、集客の不安や、対策費用の心配がつきない。それでも、まずはクラウドファンディングで3億円以上も集まったことが、ひとつの希望ともいえる。

日本の多種多様な映画文化を支えてきたミニシアター。ミニシアターが“新しい生活様式”の中でも生き残っていけるのか。重い課題が残っている。

(文・大塚淳史)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

あわせて読みたい

新着記事

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み