テクノロジー時代の象徴ともいえるサンフランシスコ・ベイエリア。この地を離れたいと考えるテック企業の従業員が増えているという。
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- 米西海岸サンフランシスコ・ベイエリア在住のテック企業の従業員約2000人を対象に調査を行った。
- 勤務先が永久リモートワーク可になったら、収入が減ってもいいからベイエリアを離れたいと考えている人が3分の1以上に達することが明らかになった。
- また、別の3分の1は収入が減らないならベイエリア以外に移りたいと答えた。
- パンデミックによる在宅勤務の定着が、テック企業の一大拠点をその根本から変えつつある。
サンフランシスコ・ベイエリアで働くテック企業の従業員約2000人のうち相当数が、収入減のダメージを負ってでも別の土地に移りたいと考えていることがわかった。
ビジネス特化型匿名SNS「ブラインド(Blind)」は、ベイエリアで働く1820人を対象に、リモートワークと収入に対する考え方について調査した。
35%は収入が減っても引っ越したい、別の35%は収入を変わらず維持できるなら引っ越したいと回答した。
ベイエリアで働く2800人のテック企業従業員を対象にした過去の調査でも、3分の2がベイエリアを離れたいと回答していた。
パンデミックの発生後、世界中の企業が完全なリモートワークへのシフトを強いられた。サンフランシスコに本拠を置くツイッター(Twitter)やコインベース(Coinbase)のような著名テック企業は、他社に先んじて、ロックダウンの解除後もほとんどの従業員にリモートワークの継続を許可する方針を示している。
テクノロジー業界はベイエリアと長いこと複雑な関係にある。ベイエリアにはさまざな問題があって、その多くを解決するのにテクノロジー業界が貢献してきた。例えば、生活費の高さ、住宅供給の不足、交通渋滞が例としてあげられる。
しかし、いまやオフィスも店舗も、バーも他の公共施設もパンデミックで出入り不可だ。ベイエリアにとどまる理由がないので、どこか別の土地に引っ越したいという人も多い。不動産業界の専門家にたずねると、ヒューストンやシカゴ、ラスベガスなど競合エリアでの問い合わせが増えているという。
フェイスブックはリモートワーカーに待遇差
フェイスブックのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)。従業員の半数をリモートワーカーにする方針を発表した。
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5月21日には、フェイスブックがリモートワーク人材の採用を積極的に増やし、2030年までに従業員の半分程度をリモートワーカーにする方針を発表している。
ただし、生活コストの安い土地でリモートワークする従業員の年収は、メンロパーク本社勤務の従業員に比べて見劣りするものになるという。
他の企業がこうしたフェイスブックのやり方に追随するかどうかはわからない。コインベースは(全面リモートワークの)方針を貫くという。ツイッターは取材に回答がなかった。
カリフォルニアのテック企業だからこそのダントツに高い給料を捨ててまでベイエリアを離れたいという人は、本当にそんなにいるのだろうか。
ブラインドの調査によると、答えはイエスだ。ただし、条件付きだ。
年収が減ってもベイエリアを離れてリモートワークしたいと回答した従業員のうち、40%は1割以内の減収なら受け入れるとした。56%は1〜2割減ならOK、8%は2〜3割減なら、そして6%は3割より大きな年収減でもいいと答えている。
フェイスブックが導入する給与調整付きリモートワークモデルは、ベイエリアを離れる従業員の数を減らすことにはなるが、それでも少数派ながら相当数は年収が下がってでも生活コストの安いエリアを選ぶことがわかった。
※ブラインドの調査結果は限定的なサンプリングによるものだが、注目に値するデータであることは間違いない。調査は同社のSNSアプリを通じて選択解答式で行われた。対象は同SNSの登録会員であり、ベイエリアで働くテック企業の全従業員あるいはエリアの全人口の志向を完全に反映したものではない。
(翻訳・編集:川村力)