丸井のビジネスモデル変革が圧倒的な成果を生み出している。
Korkusung / Shutterstock.com
新型コロナウイルスの影響で大手百貨店が軒並み苦しむなか、際立った動きを見せているのが、「マルイ」「モディ」を運営する丸井グループだ。
5月28日に発表した2020年3月期の通期連結決算は、売上高や利益の数字以上に圧倒的な内容だった。もはや同社を小売り企業の視点ではみるべきではないのだろう。
決算資料と2019年5月に発表した中期経営計画進捗説明会資料から、丸井の現状をまとめた。
売上高は2476億円(前期比-1.5%)、営業利益は419億円(同+1.8%)、純利益は254億円(同0.2%)。営業利益は11期連続増。
コロナ危機の影響を受けつつも増益を確保した。
出典:丸井グループ 2020年3月期決算短信
5月末までにコロナ関連の対応コストで50億円を見込む。
出典:丸井グループ2020年3月期決算説明と今後の展望
来期の見通しについて、早くも4通りのシナリオ試算。「楽観的」は2020年10月に回復、「悲観的」は第2波到来で21年10月回復。最大で95億円の営業利益減を想定。
出典:丸井グループ2020年3月期決算説明と今後の展望
コロナの影響の封じ込めに成功できている印象。なぜなのか。ひとつは「定借化」。テナントの売上歩合いに依存せず、区画貸しによる不動産ビジネスに徹している。
出典:丸井グループ 中期経営計画進捗説明会
おかげで人員は5年間で「半分」に。
出典:丸井グループ 中期経営計画進捗説明会
コロナに強い経営のもうひとつの理由、それは「デジタル」を鍵とする差別化戦略。フィンテック部門の営業利益は8期連続の増益、すでに小売り部門の4倍に。
出典:丸井グループ2020年3月期決算説明と今後の展望
すでにマイナー部門である小売りも、2024年までに6割を「デジタル・ネイティブ・ストア」に変える計画。
出典:丸井グループ 中期経営計画進捗説明会
2020年2月に発表した「メルカリステーション」や、メルカリとのECデータ連携が「デジタル・ネイティブ・ストア」化の一環。
2月20日の「Mercari Conference 2020」には丸井(丸井グループ傘下)の青木正久社長(右)も登壇した。
出典:Mercari Conference 2020 Live Video
今回の2020年3月期決算も、フィンテックの営業利益増が圧倒的に貢献。
出典:丸井グループ2020年3月期決算説明と今後の展望
フィンテックの本丸は「エポスカード」。会員数は700万人突破。ショッピング取扱高も「前年比16%増」で2兆円突破。家賃保証取扱高の26%増も注目。
フィンテック取扱高のうち「サービス」には家賃保証事業が含まれる。
出典:丸井グループ 2020年3月期決算短信
プラチナ・ゴールドなどプレミアムカードの伸びがものすごい。この5年間、「平均20%台の成長率」。
このグラフは2019年3月期決算までのもので、今回の2020年3月期でも同等の伸び。
出典:丸井グループ 中期経営計画進捗説明会
家賃保証は今後も大きく伸びる見通し。
出典:丸井グループ 中期経営計画進捗説明会
この5年で業態転換を徹底。店舗以上に新規事業に投資。そして店舗投資と同じくらい人材とソフトウェアに投資。
出典:丸井グループ2020年3月期決算説明と今後の展望
ECプラットフォーム「BASE」やオンライン贈答「giftee」、積み立て投資「tsumiki証券」など存在感放つ新規事業、ベンチャーに投資。
出典:丸井グループ2020年3月期決算説明と今後の展望
丸井のビジネスモデルは、もはや「小売り」「百貨店」といった枠組みでとらえるべきではない。
小売×フィンテック×共創投資で「知識創造型」のビジネスモデルを築くという。百貨店の経営計画とはまるで別モノだ。
出典:丸井グループ2020年3月期決算説明と今後の展望
(文:川村力)