KDDIが同性パートナーの子どもにも福利厚生を適用「社員の声に応えた」

KDDI プレスリリース

KDDIが6月1日に掲出したプレスリリース。

出典:KDDI

KDDIは6月から、同社社員の同性のパートナーの子どもを、社内制度上は異性婚カップルの子どもと同様に家族として扱う「ファミリーシップ申請」を開始した。ファミリーシップを申請することで、LGBTQのKDDI社員は出産祝い金や育児休職、看護休暇の取得といった社内の福利厚生の仕組みを利用できるようになる

対象は、同社の総合職、地域限定総合職、一般職、短時間制社員、地域営業社員、地域事務社員、事務契約社員、料金アドバイザー、セールスアドバイザー、嘱託社員など。社員の多様性を尊重することで、いきいき働く環境を目指す取り組みの一環という。

ただし、例えば所得税法で定められた扶養控除や雇用保険からの支出となる育児休業給付金などは、社内制度上ではなくそれぞれの法律で定められた条件があるため、ファミリーシップ申請の適用外となる。

発端は社員からの相談、人事担当が数年かけて準備

KDDI ロゴ

撮影:今村拓馬

KDDI広報担当者はBusiness Insider Japanの取材に対し、今回のファミリーシップ制度開始の背景をこう話す。

「2017年4月から同性のパートナーを社内制度における配偶者として扱う“パートナーシップ制度”を開始しました。その後、社員から『同性のパートナーの子どもに関しても、育児休暇や看護休暇などを取得できないか』との相談が寄せられるようになりました。そこで、社内で必要な制度の検討や理解を求める説明を重ね、パートナーシップ制度から数年かけて、実現に至りました」

日本では同性婚が認められていないことから、同性パートナーの子どもに対し、法律上の親権を持つことができない。このため、法定育児休業や法定看護休暇など、自分の子どもであれば利用できるはずの法的な制度を使えないという問題がある。

しかし今後、KDDI社員はファミリーシップ申請を使うことで、社内制度であれば、子どもの病気の時の早退や、短時間勤務、深夜勤務の免除など、子育てに配慮した扱いを受けることができるようになる。

KDDI ビル

飯田橋にあるKDDIの本社オフィス

撮影:今村拓馬

KDDIは従業員数4万4952人(3月31日時点、連結ベース)の大企業だ。社員からの要望があったとはいえ、社内制度を変えるのは容易ではないと想像できる。

実際、今回のファミリーシップも相談から検討、実施まで「数年単位」(KDDI広報)の準備期間が必要だった。「社内の人事担当が(ダイバーシティ&インクルージョンに対し)熱意をもって調整を重ねてきた」ことが実現に至った背景の1つにあるという。

LGBTQの理解を深める啓蒙活動に取り組んでいる国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチの柳沢正和さんは、KDDIの取り組みについて「KDDIは社員からの声に応えて、制度を変更した」という点が「本当に心強い」と評価する。

柳沢さんは従来の日本企業の取り組みをこう説明する。

「これまでLGBT関連に関する施策は日本IBMなど外資系が先行してきました。アメリカなどで先行導入された制度を輸入した形です。本国から転勤してくるエクゼクティブに対応する側面や、海外との平等を求める国内事業の従業員の声に応えたもの。これに海外に大規模な事業を持つソニーなど、海外子会社の例を参考に逆輸入する形で日本企業が続きました」

しかし近年、日本企業が独自に積極的に進めるケースが相次いでいると指摘。

「今回KDDIは発表文で『このたび社員からの声に応え』て、制度を変更したと述べました。当事者の社員に向き合い、独自の施策をスタートしたことは本当に心強い。福利厚生の充実や職場での差別解消には、こうした対話を通じた取り組みこそが最も効果的であり、多くの先行企業にとっても参考になります」

また、柳沢さんは経営者にとってもチャンスとみる。

「平等を進めるという職場の人権の課題ですが、経営者にとっても、限られた費用で、子どもを抱える当事者のカップル従業員の、会社へのロイヤリティを高める絶好の機会となった思います。こうした取り組みが今後も拡大することを強く期待します」

同性パートナーに家族手当を適用する国内企業はわずか0.9%

ダイバーシティ

撮影:今村拓馬

また、今回の該当リリースには「国内初」や「携帯事業者では初」などといったセンセーショナルなキーワードは並んでいない。リリース配信にあたっては、社内の当事者や前述の人事担当から「社外にも発信したい」との強い要望があったという。

単に社内のルールを変えると言うことだけではなく、リリースなど対外的な発信をすることで、カミングアウトしやすい社内の環境や信頼関係の醸成、社会への影響の促進が期待できるという。

「会社ができる範囲で、(マイノリティの方々が持つ)困難を解消していきたい。日本の他の企業へも広がっていくことを望んでいます」(KDDI広報)

厚生労働省が2019年11月8日~12月3日に調査を行った「職場におけるダイバーシティ推進事業 報告書」によると、福利厚生の「慶弔休暇の同性パートナーへの適用」は回答企業全体のわずか1.6%。「家族手当の同性パートナーへの適用」は全体の0.9%に留まり、まだまだ十分なカバーがあるとは言えない。

(文・小林優多郎滝川麻衣子

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