【ビザスク社長・端羽英子氏】リモート絶望したママ社員、助けた社員には報酬を。浮き彫りになった世代間ギャップ

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撮影:三木いずみ

経営・マネージメント層に、コロナで気づいた新たな課題を聞く「在宅シフトで何が変わった?」。6回目は、ビザスクの端羽英子社長。ビザスクは、新規事業の企画などに必要となる業界の情報や専門知識など、ビジネスの知見をシェアする「スポット・コンサル」サービスを提供する。2020年3月、東証マザーズ上場を果たし、今後の成長が最も期待されるベンチャーの一つだ。

自己啓発休暇や、社員向けに家事代行サービスを福利厚生で導入。“働きやすい”会社としても注目を集める。コロナ禍では、子どもと一緒のリモートワークの難しさがしばしば話題になった。ママ・パパ社員が3割を占める同社は、どう対応したのか。

お母さんたちは絶望的な状態にあった

上場祝い

2020年3月10日に東証マザーズに上場。東証での上場セレモニーなどはコロナで中止になったため、社内で鐘を持ち込み、お祝いをした。

提供:ビザスク

3月26日から全従業員・原則リモートワークに移行しましたが、自粛が解除されたので、6月3日から、全社員を2班に分けて隔日出勤の分散通勤を導入しています。学校も再開したので、子育て中のママ・パパ社員も一部会社に戻ってきていますね。

休校・休園など、自宅で子どもを見る必要がある場合や妊娠中、ご家族に病人がいる場合などリスクが懸念される場合は、引き続きリモートを許可しています。

もともと電話会議やZoomでのオンライン会議を行っていたので、フルリモートへの移行自体は、会社として特に困難や問題はありませんでした。ただ、やっぱり、未就学児や小学校低学年の子どもがいるママ・パパ社員が大変でした。

特に、お母さんたちは本当に絶望的な状態に突き落とされていました。私も子どもがいますが、すでに高校生。中高生でも、3飯を食べさせるなど手間がかかりますが、もっと小さい子たちは、家にいたら、ほぼ5分おきに「ママー」と声をかけてくる。仕事に集中なんてできるわけがない。

早々に、幼稚園・保育園児や小学校低学年までの子どもがいる社員を対象に、「このままでは、家でのリモートワークが厳しい」という人は、6時間働いたら8時間働いたとみなす制度を急遽、取り入れました。母親であろうと父親であろうと、この制度を使えます。性別は関係ありません。

子育て社員をサポートする人に報いる制度を

母親に駆け寄る息子

小さな子どものいる社員は、コロナ下でのリモートワークには苦労した。そうした社員をサポートした社員もいる(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

一方で、こうしたママ・パパ社員をサポートするメンバーも同時に発生します。彼らにも報いなければいけません。サポートメンバーに関しては、これまでよりも残業代が出やすくするようにしました。

うちはみなし残業制(一定時間の残業が行われるとみなし、あらかじめ残業代を固定で支給する制度)なのですが、みなしとする上限時間を短くしました。これまでより、残業代がつきやすいということです。

そもそも、仕事の成果を時間で測るのは止めたいと考えています。ママ・パパ社員の働く時間が多少短くなっても、特に問題とは思いません。また、同様の考えで、みなし残業制を取り入れています。社員にはなるべく残業しないで、早く帰宅できるほうが得だと意識してもらいたい。

ただ、リモートワーク下では、ママ・パパ社員以外も完璧な環境にいるわけではありません。部屋が狭いとか、高齢の親がいるなどです。みんなが同じように働きにくい中で、頑張ってくれている。そのうえで、ママ・パパ社員をサポートしてくれているわけです。ここは絶対に忘れてはいけない部分です。

ママ・パパ社員ばかりを大事にしたら、逆にママ・パパたちは他の社員に対して申し訳なく思うだけ。むしろ、働きにくくなるでしょう。ママ・パパ社員には、罪悪感は持たないでほしい。

でも、サポートしてくれている社員に「ありがとう」とは思ってほしい。当然、会社もサポートメンバーに感謝しなければいけない。だから、サポートメンバーには、しっかり、その負担に応じて支払うということです。

これまでにも、家事代行制度を月2回、ママ・パパ社員だけではなく、全社員が無料で使えるようにするなど、公平性には配慮してきました。今回の(サポートメンバーに報酬で報いる)制度は、コロナをきっかけに新たに取り入れたものですが、今後も続けたいと考えています。

若者は家にWi-Fiを持っていない問題

フルリモート移行にあたっては、もともと全社員ノートパソコンだったので、それを持ち帰ってもらえばよかったので、スムーズでした。必要な人にはディスプレイやWi-Fiルーターを送るなどもしたので、特に問題はなかった。ただ唯一、盲点だったのは、若い世代の人たちのことですね。

最近の若者は、Wi-Fiを家に持っていないんですよ。本当に。モバイルで全部済ませてしまうんです。エンジニアたちはなんだかんだで家にWi-Fiがある人が多かったのですが、ビジネスサイドの若者たちは、マンションには装備されていても、自分の部屋には引いていなかったりする。お金もかかりますからね。

上の世代は、家族がいるからWi-Fiをつないでいるけれど、若い人は固定電話を持たないのと同じ感覚で、Wi-Fiがない。世代間ギャップですね。

若い社員たちのことでは、もう一つ、世代間ギャップを感じたことがありました。入社式です。私たちは、ものすごく真剣に考えたんですよ。このコロナの中で、やるべきかやらざるべきか。

「うちの会社、そんなじゃなくてよかった」

ビザスク創業者の端羽英子氏。

ビザスク創業者であり、CEOの端羽英子氏。2020年2月撮影。

撮影:横山耕太郎

入社式の直前にフルリモートに移行したこともあり、私は「フルリモートにしたのは、リスクがあるからなのに、なぜ人を集めるんだ!!」と、入社式を開くことに猛反対しました。でも、幹部役員の中には、「一生に一回だけだから、せめてやってあげないと」というメンバーがいた。

新入社員6人と役員だけを呼んでやろうと言われたのですが、私は「それでも、リスクにさらすべきじゃない」と反対し、ものすごい激論になりました。

「オンラインだけど、ギャラリービュー・モードにして、全員で歓迎していることをちゃんと伝えよう」と説得したり喧々諤々。結果、私たちとしては、“涙を飲んで”オンライン入社式にしたわけです。

ところが、当の新人に聞いたら「なんか友達の会社、『入社式だから、会社に来い』とか言われたんですよ。信じられない。よかったー。うちの会社、そんなじゃなくって」って言われて。もう、私は「そうなの?!」と。考えてみれば、確かにその通りで、迷う必要すらなかったようにも思うのですが、世代間ギャップって、こういうことかと思いました(笑)。

ほかにも、入社1カ月の新卒の社員たちとじっくり話す機会があったので、改めてオンラインでの新人指導について不安はないか聞いてみました。「まるで隣にいるかのように教えてもらえて、ばっちりですー」と言われて、「あ、そうなんだ…?」ってなりましたね。

リモート・ネイディブ世代になるんでしょうね、彼らは。リアルと特に感覚は変わらないようです。

バンバンあてて、発言してもらうように

キャンプ椅子

リモート生活にあたって、新しく買ったキャンプ椅子。ベランダで使う。

提供:端羽英子

オンラインの何が良くて何が悪いのか。まだ検証が十分ではないと思いますが、私は、全社会議については、顔と名前が一致しやすいことがすごく便利ですね。(参加者全員の顔が画面に並ぶ)ギャラリービューだと、下に名前も表示されますよね?

新卒の人たちに実際に会っていなかったのですが、すぐに顔と名前を覚えられました。

それに、オンラインだとリアルの時より対面の圧が少ない。全員の様子も把握しやすく、「今のどう思う?○○君」と会議でこちらは当てやすくなるんですね。リアルの時より、バンバン当てて、発言してもらうようになりました。

リアルよりそこはチームビルディングがやりやすいかもしれません。オフィスに全員戻ったときに同じようにできるか。ちょっと課題です。

リモート移行が比較的スムースだったのは、コミュニケーション・ツールの使い方に慣れていたということはあるかもしれません。

原則DMは禁止、コミュニケーションはオープンに

スラック画面

さまざまなチームや部署で、どんどん雑談のスレッドが立ち上がり、コミュニケーションを活性化した。

提供:ビザスク

リモートでは、どのシーンごとにどのツールを選ぶかが重要だったり、よりオープンなコミュニケーションが必要だったりと言われます。うちは大きく分けて、エンジニアサイドとビジネスサイドの2部門があります。

ちょっと前は、一般的に、エンジニアが好むツールとビジネスサイドが好むツールには違いがあると言われていました。例えば、エンジニアはSlack、ビジネスはチャットワークといった感じです。

世間的には「エンジニアと話しが通じにくい」といった悩みをビジネスサイドの人から聞くことはあります。でも、うちではコロナ前から、コミュニケーション・ツールは全員SlackとQiitaで統一。

あと、DM(ダイレクトメール)は原則禁止。Slackでもプライベートルームを作る時は、私の許可が必要で、社内コミュニケーションはできるだけ透明性を高く保つようにはしてきました。

私は絶対、同じツールを使ったほうがいいと思います。なぜなら、うちは特に新しい市場で新しいサービスを作っているからです。エンジニアサイドもビジネスサイドも枠を越えて、どんな人からも学んでいかないといけない。失敗もどんどん共有する必要がある。そのためには、コミュニケーションをオープンにするのが一番です。

もちろんエンジニアたちは GitHubを使うこともあります。「この人がなかなか動いてくれなくて……」といった相談などは、DMを使うしかないこともあるでしょう。でも、DM にしてしまうとそこから学べたはずのことが学べなくなる。人の学びの邪魔をしてしまう。

だから、基本、全員が使うのはSlackです。Slackなら、話の途中から誰かに参加してもらいたくなったら、メンションを飛ばすだけで良い。一から話す必要もなく、業務の効率という面でも断然 Slack でオープンに会話するほうがいいんですね。

エンジニアと話すためにOfficeとさよなら

私自身、エンジニアと話すようになってWindowsからMacに変更。さらにMacでエンジニアと話していたら、Excelじゃなくて、Googleスプレッドでいいとなって(Windowsのパッケージ製品である)Officeにさよならしました。さらに、本当にメールもいらなくなり、Slackになった。社内電話を入れるのも反対しましたよ。「マジいらない!」って(笑)。でも、外部の人からの電話を直接受けるのに、個別の電話が必要な人もいる。だから、個別に持たせています。

私は今も、社内の直通の電話番号を持っていません。私に連絡したいときは、Slackのコールでかけてくればいい。こんな風にツールは、誰とでも共有できるもので統一してきたことは、リモート移行の助けになったかもしれません。

長期的には私はポジティブです

愛猫のポアロ君

愛猫のポアロくん(雄・7歳・アビシニアン)。白熱したオンライン会議の後に、寝息が聞こえてくる環境に癒される。

提供:端羽英子

今後、経済状況の悪化が予測されています。特に、コンサルタント業界は不況に弱いと言われます、短期的にはわかりませんが、長期的には私はポジティブです。なぜなら、コロナによって、企業のもともと抱えていたさまざまな課題がさらに浮き彫りになっている。

働き方を含め、新規の事業アイデアがもっと必要になり、生産性ももっと上げなければならない。多くの人が「やったこともない」分野に挑戦していかねばならないフェーズにあります。

こうなると、社外のコンサルタントの需要は悲観的なものには決してならないと思います。やったこともない事業の知見は、社内の人材だけでは得にくいものですから。

プライベートでは、愛猫と接する時間が増えたので、毎日、この子に癒されています。娘は、4月に高校3年生になりました。受験生なので、特に学校から宿題も出たりせず、本当にのんびりしていて……。ヤキモキすることはあります。

あんまり何もしていないときは、「なぜ、○大学の、○学部を受験したいのか。どの先生の授業を受けたいのか。明日までに調べて、ママに提出しなさい」とか突然、課題を出したりしていますよ。

(文・三木いずみ)



端羽英子:東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。投資銀行部門に従事した後、日本ロレアル、ヘレナ ルビンスタインを経て渡米。MIT(マサチューセッツ工科大学)にてMBA(経営学修士)を取得。帰国後、投資ファンドのユニゾン・キャピタルで5年間働いた後、2012年にビザスクを設立。2020年3月、東証マザーズ上場を果たす。

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