2020年3月18日、ワイオミング州シャイアン。
REUTERS/Jim Urquhart
- アメリカでは4月、5月と2019年に比べて銃の売り上げが増えている。
- あるアナリストは、アメリカ全土に広がる混乱がその一因となっている可能性があると指摘している。
- 11月の大統領選で銃規制に積極的な民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝つ可能性が高まれば、さらに需要も高まるだろうとこのアナリストは見ている。
新型コロナウイルスの大流行で10万人以上が死亡し、警察官による黒人男性の暴行死をきっかけに各地で抗議活動が続くアメリカでは、新たに銃を購入する人が増えている。11月の大統領選に向けた世論調査で民主党のジョー・バイデン前副大統領の支持がトランプ大統領を上回り続ければ、さらに増える可能性がある。
コーウェン(Cowen)の調査によると、銃の購入時に必要となるバックグラウンドチェック(身元調査)の5月の件数は2019年に比べて75%増えていて、4月の69%増を上回った。中でもハンドガンは94%増だった。銃の売り上げに関する詳しいデータがないため、アメリカではバックグラウンドチェックの件数が銃の購入状況を表す数字だと広く見なされている。
銃関連株の好調が続く中、「社会不安の広がりが目先の銃の需要を高める可能性がある」とコーウェンのアナリストCai von Rumohr氏は6月2日付の顧客向けのメモの中で指摘した。
大手銃器メーカーの株価は、直近で最も安値がついた3月23日以来、ベンチマークとするS&P500種株価指数を大きく上回っている。S&P500が37%上昇した一方で、スミス・アンド・ウェッソン・ブランズ(旧アメリカン・アウトドア・ブランズ)は72%、スターム・ルガーは52%、ビスタ・アウトドアは40% それぞれ上昇した。
11月の大統領選に向け、民主党のジョー・バイデン前副大統領の支持がトランプ大統領を上回る中、この勢いは続く可能性があるとコーウェンは見ている。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のロックダウン(都市封鎖)が緩和され始める一方で、ジョージ・フロイドさんの死をきっかけとした抗議活動で社会不安が増す中、銃の需要は高い状態が続く可能性がある。加えて、銃規制により積極的なバイデン氏の大統領選での勝算が高まれば、銃の需要もさらに高まるだろう」という。
5月29日から6月1日にかけて行われたYouGovの世論調査では、バイデン前副大統領がトランプ大統領を4ポイント上回っている。
ペンシルベニア州フィラデルフィアで演説をしたバイデン前副大統領は、アメリカ全土に広がり、多くの大都市で夜間外出禁止令が出されている「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」の抗議活動は、"警鐘"だと語った。
「わたしは恐怖や違いにとらわれたりしない。憎しみをあおることもしない。この国を長きにわたって苦しめてきた人種問題による傷を癒すために努力する —— こうした傷を政治的利益のために利用するのではなく」
(翻訳、編集:山口佳美)