カナダのトルドー首相(2020年5月1日、オタワ)。
REUTERS/Blair Gable
- カナダのトルドー首相は6月2日(現地時間)、アメリカのワシントンD.C.でトランプ大統領が写真撮影をするために平和的に抗議行動をしていた人々に対して催涙ガスを使用したことをどう思うか尋ねられた。
- トルドー首相は20秒以上沈黙した。
- それから「アメリカで一体何が起きているのかとわたしたちは凍り付き、驚愕した」と語った。
カナダのトルドー首相は言葉を失った —— ホワイトハウスの近くで平和的に抗議行動をしていた人々に対して、催涙ガスを含む"実力行使"がなされたことについて、どう思うか尋ねられた時のことだ。
ワシントンD.C.では、ジョージ・フロイドさんの死をめぐって抗議行動をしていた集団を追い払うため、警察が催涙ガスやゴム弾を使用した。トランプ大統領が近くの教会の前で写真を撮るために、人々が集まっていた場所を通る前のことだった。
ホワイトハウスにほど近いセント・ジョンズ教会を訪れた後、警察官たちの前を通り過ぎるトランプ大統領(2020年6月1日)。
Associated Press
「わたしたちは昨日、写真撮影をする大統領のために道を開けるため、デモ参加者が催涙ガスを浴びせられるのを見ました。それについてどう思いますか? もしあなたがコメントしなければ、どういうメッセージを送ることになると思いますか?」と1人の記者がトルドー首相に尋ねた。
トルドー首相は20秒以上沈黙した。
それから「アメリカで一体何が起きているのかとわたしたちは凍り付き、驚愕した」と答えた。
「今は人々が一丸となる時であり、人々の声に耳を傾ける時だ。何年も何十年もかけてわたしたちは進歩してきたが、どういった不正がまだ続いているのか学ぶべき時だ」と首相は語った。
ワシントンD.C.で平和的に抗議行動をしていた人々に対する暴力は、トランプ大統領がホワイトハウスにほど近いセント・ジョンズ教会で写真を撮るためにその場所を通過する少し前のことだった。取材のため大統領に随行した記者の1人は、催涙ガスがまだ辺りを漂っていたという。「ガスのせいで随行した報道陣や関係者は咳き込んだり、息苦しさを感じていた」とBuzzFeed Newsのカディア・ゴバ(Kadia Goba)記者は書いている。
抗議行動をしていた人々に対する暴力や催涙ガスの使用について、カナダのGlobal Newsのワシントン支局長ジャクソン・プロスコフ(Jackson Proskow)氏は「何の警告もなかった」と話している。「群衆はいたって平和的だった」とツイートしていた。
トランプ大統領の写真撮影は、宗教指導者や共和党議員を含む政治家からの批判を招いた。共和党のベン・サッセ上院議員(ネブラスカ州選出)は、「聖書を政治の小道具のように扱う写真撮影のために、平和的なデモを追い払うことにわたしは反対だ」と語った。
アメリカでは、武器を持たず平和的に抗議行動をしている人々に警察が暴力を振るうケースもあり、各地で警察の対応への批判が高まっている。ニューヨークでは警察車両がデモ参加者の集団に突っ込んだり、各地で警察官がデモ参加者や近くに居合わせた人、ジャーナリストにゴム弾や催涙スプレー、催涙ガスを使用するなどしている。ユタ州ソルトレークシティーでは、警察官が杖を持った高齢男性を突き飛ばす様子が目撃されている。
ミネソタ州ミネアポリスで警察官に首をひざで8分以上押さえつけられて死亡したジョージ・フロイドさんの死をきっかけに始まった抗議活動は、アメリカ全土に広がるとともに、海外にも広がっている。
(翻訳、編集:山口佳美)