「東京アラート」でもレインボーブリッジの色が変わるだけ? 都民への警鐘、どう受け取るか

レインボーブリッジ

6月2日、東京アラートを受けて赤くライトアップされるレインボーブリッジ。

REUTERS/Issei Kato

6月2日、東京都は、新型コロナウイルスの感染者が新たに34人確認されたことなどを受けて、都民に感染対策への警戒を呼びかける「東京アラート」を発動した。

「オーバーシュート重大局面」や「3密」など、新型コロナウイルスへの対応のためにさまざまなキャッチフレーズを作ってきた小池都政だが、「東京アラート」という字面のおどろおどろしさとは裏腹に、その意図がいまいち伝わってこない。

東京アラートを発動したからといって、ロードマップの手順に沿って進めてきた緩和ステップはステップ2のまま維持。

「都民の皆様は、夜の繁華街など、3密のリスクが高い場所には十分ご注意ください」


「手洗いの徹底とマスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、「3つの密」を避けた行動など、『新しい日常』を徹底して実践してください」

と、警鐘を鳴らしはするものの、今となってはこれはもはや「常識」だ。

そうなると、アラートを発動して変わるのは、レインボーブリッジや都庁のライトアップの色ぐらいのようにも思え、いまいち緊張感に欠けてしまう。

実際のところ、現段階でどの程度の警戒が必要なのか、過去の数値と比較してみよう。

「東京アラート」は、オーバーシュート重大局面を意味するのか?

小池都知事

3月25日、東京都は緊急記者会見を開催。小池都知事は、東京都の状況を「感染爆発(オーバーシュート)重大局面」と表現し、週末の外出自粛を訴えた。

撮影:三ツ村崇志

新規感染者の数をみると、6月2日、新たに確認されたのは34人。

東京アラートの発動を決めた東京都新型コロナウイルス感染症対策本部の会議資料には、次のようにある。

・新規陽性者数について、このところ増加傾向を示していたところ、本日の陽性報告数は34人となった。7日間移動平均では16.3と、緩和基準を下回っているものの、30人以上となったのは5月14日以来である。病院の集団感染13人が含まれているとはいえ、警戒すべき数値の状況である。


・ 週単位の陽性者増加比はこのところ1を超えて2に近い水準で推移しており、本日(6月2日)では2を超えている。(実際の数値は2.15


・陽性者の状況をみると、集団感染がみられるほか、いわゆる夜の街関連の陽性者が多い。

6月2日の夜の会議では、これらの事情を踏まえて東京アラートの発動が決定された。

ここで一つ注意したい点がある。

新規感染者が30人を越えたのは、確かに5月14日以来はじめてだが、新規感染者が減少傾向にある中で30人を越えた日と、増加傾向にある中で30人を越えた日を比較するのは、状況を比較する上で適切とは言いがたい。

新規感染者が増加傾向にある中ではじめて感染者が30人を越えたのは、3月25日で41人。

当時の7日間移動平均は14.7。週単位の陽性者増加比は2.71だった(東京都感染症対策Webページ新規感染者報告日別データ参照)。

覚えている人も多いかもしれないが、この日、東京都では緊急記者会見が開催され、小池都知事は東京が「オーバーシュート重大局面」にあると強い警鐘を鳴らした。

もちろん、感染経路の追えない感染者の割合や、実際に感染している人の属性、保健所のクラスタ対策体制など、当時と今では状況が異なるため一概に同じ状況とは言えないものの、現状の感染状況は、3月25日の「オーバーシュート重大局面」前後とよく似ているといえるだろう。

感染対策のブレーキの踏み遅れは命取りに

東京都では、3月25日以降、4月中旬まで新規感染者が一日あたり最大200人程度まで増加し、その後やっと収束していった。

5月29日に開催された専門家会議では、新規感染の「感染時期」のピークは4月1日頃であり、3月下旬にかけての休業要請や外出自粛などが、それ以降の実効再生産数(1人の感染者が感染症をうつす人数)を低下させる要因の一つだったとの見解を示している。

もし今後、3月下旬以降と同じように感染が再び広がってしまうのだとすれば、今のような感染状況の時期に感染対策を怠ってしまうと、感染ピークは4月中旬よりも大きくなってしまいかねない。

東京都庁総合防災部の担当者にこの疑問をぶつけてみると、

「当時と同じ状況かどうかというような評価は、現段階ではしていません。状況については、引き続きモニタリングを続ける中で確かめていきたい」

と、第1波との状況の比較については明言しなかった。

実際、東京アラート発動翌日となる6月3日に新たに確認された感染者は12人。3月末の状況と比べると、感染者の増え方は落ち着いているようにも見える。ただし、この先の見通しは気を抜けない。

「ウィズ・コロナ」を掲げ、新型コロナウイルスと共生する生活スタイルを確立する上で、感染症対策のブレーキを踏むタイミングが遅れてしまうと、感染拡大に歯止めが効かなくなってしまう恐れがある。一方で、ここで再び緊急事態宣言下のような生活スタイルに戻ってしまっても、経済が立ち行かなくなってしまう。

リスクをゼロにすることはできない以上、私達にできることは、念入りな手洗いや、3密を避け続けるといった可能な限り感染のリスクを減らす行動を取り続けながら、絶妙なバランスの上で生活することだけなのかもしれない。

(文・三ツ村崇志)

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