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- イギリスのジョンソン首相が、中国が香港の人々の自由を奪うなら何百万という香港市民にイギリスへ移住する権利を与える考えを示したことを受け、中国はイギリスに対し、この問題に干渉しないよう求めた。
- イギリスでは、中国が香港で反政府的な動きを取り締まる国家安全法の導入を決めたことについて懸念が高まっている。
- ジョンソン首相は、英国海外市民(BNO)旅券に申請する資格を持つ全ての香港市民 —— 約300万人 —— に対し、延長可能な12カ月の滞在許可を出すと述べ、中国とイギリスの対立は一気にエスカレートした。
- また、イギリスはオーストラリア、カナダ、アメリカ、ニュージーランドにも、香港を脱出したい市民にビザを発給するよう呼びかけている。
- 中国は、イギリスの対応は「しっぺ返しを食らう」ことになるとし、イギリスに「干渉」を止めるよう求めている。
イギリスのジョンソン首相が300万人の香港市民にイギリスへ移住する権利を与える考えを示したことを受け、中国は6月3日、イギリスに対し、中国の問題に「干渉するのを止める」よう求めた。
ジョンソン首相は、中国が香港の自由を奪うような国家安全法の導入を推し進めるなら、何百万という香港市民にイギリスのビザを提供するほか「選択肢はない」と語っていた。
首相は3日付のザ・タイムズの中で、中国の国家安全法制は司法および政治の独立性を謳歌してきた香港の自治を「大幅に損なう」だろうと指摘した。
その上で、中国がこの法律を施行すれば、英国海外市民(BNO)旅券に申請する資格を持つ全ての香港市民 —— 約300万人 —— に対し、延長可能な12カ月の滞在許可を出すと述べた。
「今日、約35万人がBNO旅券を保有していて、さらに250万人が申請する資格を持っている。現時点でこの旅券があれば、ビザなしでイギリスに最大6カ月滞在できる」とジョンソン首相は述べた。
「中国が国家安全法を無理強いするなら、イギリス政府は移民に関する規則を変更し、こうした旅券を持つ香港市民には更新可能な12カ月の滞在が許可され、市民権の獲得につながる就労の権利を含むさらなる権利が与えられるだろう」
ジョンソン首相は、今回の対応が「史上最大規模のビザ制度変更の1つになる」だろうとした上で、「これが必要だと証明されれば、イギリスは進んでこの対応を取る」と付け加えた。
これに中国が、こうした干渉は「しっぺ返しを食らう」ことになると反論した。
AFP通信によると、中国外務省の趙立堅報道官は「我々はイギリスに対し、一歩退き、冷戦時代のメンタリティーと植民地時代のマインドセットを捨てて、香港は中国に返還されたという事実を認識し、尊重するよう忠告する」と語った。
趙報道官は、イギリスは「香港の問題と中国の内政問題に干渉するのを今すぐ止めないと、しっぺ返しを食らうことになる」とも付け加えた。
これにジョンソン首相の報道官が反応した。
「首相が述べた通り、イギリスは香港の『一国二制度』の下での成功を願っているだけだ」
「中国がこの国家安全法を推し進めれば、それは国連に登録されている法的拘束力のある共同声明に基づく義務に直接抵触することになる」
「そうなれば、イギリスは香港の人々との歴史的な深い結びつきと友情を守るほか選択肢はない」
また、イギリスは友好国にも香港を脱出した市民への住む場所の提供を検討するよう呼びかけている。
ラーブ外相は2日、安全保障上の機密情報を共有する"ファイブアイズ" —— イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド —— に、香港市民にビザを発給するよう頼んだと議会に伝えた。
ラーブ外相は「香港からの大量流出が起きた場合の責任分担」の可能性についても触れたと、シドニー・モーニング・ヘラルドは報じた。可能性が高いとは思わないが、「我々は外交的に対応している」とラーブ外相は述べた。
(翻訳、編集:山口佳美)