数十億年前、火星には環が存在していた…衛星の軌道の傾きから明らかに

火星

NASAの探査機、マーズ・グローバル・サーベイヤーが撮影した火星。

NASA/JPL

  • 火星の衛星ダイモスの傾いた軌道は、過去に存在していたはるかに大きな衛星によって引き起こされたことを、新しい発見が示唆している。
  • 衛星と環(リング)が交互に形成されるサイクルがあったと見られている。
  • つまり、大きな衛星が惑星に近づいてバラバラになり、巨大なリングを形成。 その後、リング内の塵や岩の破片が集まって再び衛星ができると考えられている。

火星の不規則な形をした2つの小さな衛星に関する新しい研究は、この赤い惑星が過去に巨大な環を持っていたかもしれないことを示唆している。

火星の2つの衛星、フォボスとダイモスは、どちらも不安定な軌道を描いている。フォボスは、ダイモスの約7倍の大きさで、太陽系では惑星に最も近くを回る衛星だ。火星表面の約6000km上空を周回している。一方、ダイモスの軌道は火星の赤道面から約2度傾いている。

SETI研究所とパーデュー大学の科学者たちは、先ごろ再開された「アメリカ天文学協会(AAS)」のバーチャル会議で、過去に存在した大きな衛星の重力で引っ張られたため、ダイモスの軌道がわずかにずれたのだと発表した

これは、火星が衛星の破壊から環の形成に至るサイクルを経験していることを示唆する他の研究を裏付けるものだ。環はやがて、塵や岩の破片が合体して新しい衛星を形成する。

ダイモス

NASAの探査機、マーズ・リコネッサンス・オービターが撮影したダイモス。

NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

火星の衛星の不思議な成り立ち

火星の衛星のユニークな特徴は、長い間、天文学者を混乱させてきた。

SETI研究所のマティヤ・チュク(Matija Chuk)研究員は、プレスリリースの中で「ダイモスの軌道が火星の赤道面と一致しないという事実は重要ではないと思われていたので、誰もそれを説明しようとしなかった」と述べている。

多くの科学者は以前、どちらの衛星も捕捉された小惑星か、宇宙の岩石だと考えていた。しかし、チュク研究員のチームの研究によると、ダイモスの軌道傾斜は、フォボスよりも遠くにあるという事実と相まって、より大きな意味を持つという。

チュクは、「大きな新しいアイデアを思いついて新しい視点で見たとき、ダイモスの軌道傾斜は大きな秘密を明らかにした」と述べた。

研究者たちは、軌道傾斜の原因となった太古の衛星はフォボスの約20倍の大きさで、約30億年前に存在していた可能性があると計算した。その後、それは火星に向かって引っ張られ、引き裂かれて、リングになった。

フォボスとダイモス

火星の衛星、フォボス(左)とダイモス。

NASA

衛星と環が順番に形成される

今回の新たな発見は、火星が衛星と環を交互に形成してきたことを示唆する2017年の研究を裏付けるものだ。

その研究では、何十億年にもわたって、火星では衛星と環が何世代も存在してきたと理論付けられた。

この理論からすると、フォボスはこのサイクルの最も新しい結果で、一部の研究者は、フォボスはまだ若く、形成されたのは2億年前だと考えている。

フォボス

NASAの探査機、マーズ・リコネッサンス・オービターが撮影したフォボス。

NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

しかし、フォボスは重力に引っ張られて火星に近づきつつある。このまま近づけば、おそらく5000万年以内にバラバラになってしまうと考えられている。そうなると、破片はリング状になって軌道を回るだろう。

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2024年に火星の月についてもっと詳しく知るためのミッションを計画している。計画通りに進めば、探査機がフォボスの地表に降り立ち、サンプルを集めて分析することで、組成や歴史をより深く知ることができるだろう。

[原文:Mars may have had a giant ring billions of years ago, new research suggests

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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