WHILLの杉江理代表。2019年10月撮影。
撮影:伊藤有
新型コロナウイルスによって、新規の設備投資にはネガティブだ、という見方は少なくない。
このほど、羽田空港への「WHILL自動運転システム」の正式導入を実現した電動モビリティベンチャー・WHILLの杉江理代表は、新型コロナウイルス流行から、個人向け販売に一定の影響が出る可能性は否定しない。一方、事業の新たな柱として開発を進めるWHILL Model CをベースとするMaaS向け車両は、「(WHILLの電動車椅子を使った)MaaS事業に関しては、コロナを機会にむしろニーズが高まっている」と、需要の高まりへの手応えを語った。
6月8日、羽田空港の搭乗口までの移動手段としての正式導入が発表された「WHILL自動運転システム」。搭乗口までの往復を完全自動運転で行う。すでに稼働を開始している。
出典:WHILL
その兆候として、電動モビリティーの実証・導入に向けた動きが一時停止していた他の空港や施設においても進捗が再開するなど、「問い合わせはむしろ増加傾向にある」と説明した。
背景にあるのは、新型コロナウイルス感染症の防止の観点から、車椅子の利用者・空港の地上係員の双方のリスクを下げなければならないという、差し迫ったビジネス上の課題があるからだ。
今回は羽田空港での正式導入になるが、係員と利用者の感染リスクを下げなければならないという状況は、車椅子の人力補助サービスを用意している、世界中の空港や施設でも同様と言える。
全世界で、あくまで結果的にではあるが、新型コロナがDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル変革)を加速したと言われている。「施設内で、自分の足での移動に不安のある人を送り届ける」という業務についても、DXが進む可能性があるとすれば興味深い。