最新の自動運転技術・モビリティサービス開発企業ランキングが発表された。第1位はアルファベット(グーグルの親会社)傘下のウェイモ(Waymo、上の写真はテスト車両)だった。
Waymo
市場調査会社ガイドハウス・インサイツは、自動運転システム・モビリティサービス開発会社の2020年版ランキングを発表。1位はウェイモだった。
フォード子会社のフォード・オートノマス・ビークルズ、GM傘下のクルーズ、中国のバイドゥなどが続いた(ランキングにはサプライヤーや大型トラック専業の開発会社は含まれていない)。
ランキングは、開発戦略とその進捗、ビジョン、パートナー、技術、プロダクトの将来性など複数の指標にもとづいて決定された。第18位から順をさかのぼって見ていこう。
【第18位】テスラ(Tesla)
テスラの「モデル3」。
Hollis Johnson/Business Insider
テスラは2019年、米証券取引委員会(SEC)に提出した報告書で、前年の報告書には記載のあった「さらに、当社は完全自動運転技術の開発において大きな前進を追求し続けます」という部分を削除している。これは、以前から強調していた完全自動運転機能の獲得が遠のいたことを示している。
総合点:31.6
戦略点:31.3
進捗点:31.9
【第17位】ナビヤ(Navya)
自律走行バス「ナビヤアルマ(NAVYA ARMA)」。
Matt Weinberger/Business Insider
フランス・リヨンを本拠とし、開発企業としては小規模なナビヤだが、自動運転車両を最も広く世に送り出している。2020年前半時点ですでに、世界23カ国で「ナビヤアルマ(NVYA ARMA)」が運行している。ただしそのほとんどは、限定的な実証実験プログラムの一環で、1台あるいは数台の導入にとどまっている。
総合点:43.4
戦略点:42.8
進捗点:44.1
【第16位】ボルボ(Volvo)
ボルボ「XC40」。
Hollis Johnson/Business Insider
スウェーデン・イェーテボリを本拠とするボルボの2019年は、自動運転に関して大きなニュースもなく静かだった。
2020年前半、ホーカン・サムエルソン最高経営責任者(CEO)は、レベル3(特定の場所で全自動操作、緊急時はドライバー操作)およびレベル4(特定の場所で緊急時も含め完全自動化)の自動運転を導入展開することにフォーカスし、次世代フラッグシップ「V90シリーズ」を含む高級車種に実装していく方針を示している。
総合点:48.3
戦略点:42.7
進捗点:53.4
【第15位】ルノー日産三菱
日産「リーフ」。同一車線自動運転技術「プロパイロット」を搭載。
Hollis Johnson/Business Insider
ルノー・日産・三菱3社連合、とくに日産にとって、2019年は厳しい1年だった。首脳陣の交代により、アライアンス全体、各社、さらには生産計画の不透明性が著しく高まっている。
3社のうち自動運転技術の開発をけん引するのは相変わらず日産だが、同社のカルロス・ゴーン前会長はかつて2020年までに自動運転レベル4の市場投入を目指すとしていたにもかかわらず、(少なくとも目に見える形で)目立った成果はあげられていない。
総合点:48.4
戦略点:44.6
進捗点:51.9
【第14位】BMW
BMWの次世代電気自動車(EV)「ヴィジョン・アイネクスト(Vision iNEXT)」
BMW
BMWは2017年、インテル・モービルアイと提携して自動運転車両を開発すると発表しているが、その後大きな動きはほとんどみられない。
BMWの発表によれば、2021年には新型EV「コンセプトi4」や「ビジョンiNEXT」など数車種にレベル3の自動運転が実装される予定だ。センサーやカメラなどハードウェア・インテグレーションではカナダのマグナ・インターナショナル(Magna International)と、電子制御についてはアプティブ(Aptiv)との提携も発表されているが、当初計画ほどの性能あるいは規模感にはなりそうもない。
総合点:53.2
戦略点:49.5
進捗点:56.7
【第13位】ボヤージュ・オート(Voyage Auto)
ヴォヤージュの自動運転技術を実装したクライスラーのミニバン「パシフィカ」。
Voyage Auto
ヴォヤージュは自動運転全体ではなく、モビリティによる課題解決にターゲットを置いている。その取っかかりとなるのは高齢者コミュニティだ。
同社は2018年から、55歳以上の高齢者17万5000人が暮らすフロリダ州中央部のコミュニティ「ザ・ビレッジ(The Villages)」での実証実験を続けている。フォードやGM傘下のクルーズ(Cruize)、アマゾン傘下のズークス(Zoox)がターゲットとする都心に比べ、高齢者コミュニティは交通の複雑性や混雑度が低く、自動運転の導入環境として適している。
総合点:57.3
戦略点:61.0
進捗点:53.4
【第12位】メイ・モビリティ(May Mobility)
メイ・モビリティ(May Mobility)が開発中の自動運転車。
David L. Ryan/The Boston Globe via Getty Images
ミシガン州アナーバーを本拠とするメイ・モビリティ(May Mobility)は、アメリカの4都市(ロードアイランド州プロビデンス、オハイオ州コロンバス、ミシガン州グランドラピッズ、デトロイト)において、あらかじめルートの決められたマイクロトランジット(短距離移動)に特化し、自動運転シャトルバス運行を行っている。
トヨタとBMWはそれぞれ運営するベンチャーキャピタルを通じてメイ・モビリティに出資しており、とりわけトヨタは、将来展開する自動運転オープンプラットフォームでメイ・モビリティがサービス提供を行うとの見通しを明らかにしている。
総合点:60.6
戦略点:61.8
進捗点:59.3
【第11位】トヨタ
トヨタの自動運転モビリティサービス向け次世代EV「イーパレット(e-Palette)」。
Mark Matousek/Business Insider
トヨタとトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)は開発中の自動運転技術をいまだに公の場でお披露目していない。
トヨタとデンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)は2019年4月、ウーバーの自動運転開発会社アドバンスト・テクノロジーズ・グループ(ATG)に10億ドル(約1080億円)を出資すると発表している。
しかし、ウーバーATGは自動運転システム開発で(歩行者を死亡させる事故を起こすなど)苦しんでおり、この巨額投資がトヨタにどれほどの価値をもたらすか、現時点では不透明だ。
総合点:61.7
戦略点:54.5
進捗点:68.1
【第10位】ダイムラー・ボッシュ(Daimler-Bosch)
メルセデスベンツの「CLS」
Hollis Johnson/Business Insider
独シュトゥットガルトに本拠を置くダイムラーとロバート・ボッシュは、自動運転産業の黎明期から協業を続けてきた。レベル4の自動運転プラットフォームを開発中でロボットタクシーへの実装にフォーカスしている。
ダイムラーは別途BMWと提携し、2024〜25年に高級車種へのレベル3あるいはレベル4の自動運転システムの実装を目指している。
ダイムラーとボッシュは2019年下半期、カリフォルニア州サンノゼで自動運転車両によるシャトルサービスの実証実験に着手。また、ボッシュは自動運転車両向けの次世代レーダーを生産中で、世界最大級のテクノロジーカンファレンス「CES2020」ではLiDAR(ライダー)の生産段階に入ったことも明らかにしている。
総合点:62.6
戦略点:59.0
進捗点:66.0
【第9位】ズークス(Zoox)
ズークス(Zoox)の自動運転テスト車両。
Andrej Sokolow/picture alliance via Getty Images
カリフォルニア州フォスターシティに本拠を置くズークス(Zoox)は、2019年からサンフランシスコとラスベガスで開発とテスト走行を行っている。自動運転システムとともに、専用のロボットタクシー開発でも大きな成果をあげている。同車両は連邦自動車安全基準の衝突テストをクリアし、2020年にもお披露目されるとみられる。
ズークスのロボットタクシーはカリフォルニア州公共事業委員会から旅客輸送の許可を受けているが、緊急時操作を担当するドライバーの同乗が必須とされており、ドライバーなしの有償運行に移行するにはそのための運行許可を別途受ける必要がある。
総合点:48.4
戦略点:44.6
進捗点:51.9
【第8位】ヤンデックス(Yandex)
ヤンデックス(Yandex)の自動運転技術を実装したトヨタ「プリウス」。
Mark Matousek/Business Insider
中国のバイドゥ(百度)と同じように、モスクワに本拠を置くヤンデックス(Yandex)はロシアの検索サービス大手。ロシア版のグーグルといった存在だ。
自社でLiDARの開発を進めており、2020年中に同じく自社開発の自動運転車両に実装するとみられる。同社のLiDARは世界最大手ベロダイン(Velodyne)が開発するLiDARと同等あるいはそれ以上の性能を備え、かなりの低コストに仕上がるとの予測もある。
現在、ロシアとイスラエル、ラスベガスで、ドライバーなしのロボットタクシー実証実験を実施中。
総合点:71.0
戦略点:66.6
進捗点:75.1
【第7位】フォルクスワーゲン(Volkswagen)グループ
アウディのEV「イートロン(e-tron)」。
Hollis Johnson/Business Insider
2019年7月、独フォルクスワーゲンは米ピッツバーグに本拠を置く自動運転スタートアップ・アルゴAIに対し、米フォードによる出資額と同等の26億ドル(約2800億円)を出資すると発表した。自社の開発部門はアルゴAIに吸収させ、技術を受け入れる形になった。
フォルクスワーゲンとフォードはそれぞれに自動運転車両を展開しているが、(アルゴの技術を利用するゆえに)商業化、モビリティサービスについては似たような道を歩むことになるだろう。
総合点:72.9
戦略点:74.4
進捗点:71.2
【第6位】アプティブ・ヒュンダイ(Aptiv-Hyundai)
アプティブ(Aptiv)の自動運転技術を搭載したBMW「540i」。
Avery Hartmans/Business Insider
2019年9月、アイルランド・ダブリンに本拠を置くアプティブ(Aptiv)は韓国の現代自動車(ヒュンダイ)とのジョイントベンチャーを設立すると発表した。ヒュンダイが提供するロボットタクシープラットフォーム向けに、アプティブのリードで自動運転技術を共同開発する。
アプティブはロボットタクシーの運行について知見を積み上げており、2016年下半期にシンガポールで実証実験を開始。2018年半ばには米ラスベガスに進出し、リフト(Lyft)の配車サービスプラットフォーム上でBMWの自動運転車両を使った有料サービスを展開している。
総合点:74.9
戦略点:74.6
進捗点:75.2
【第5位】インテル・モービルアイ(Intel-Mobileye)
モービルアイ(Mobileye)の自動運転技術を実装したフォード「フュージョン(Fusion)」。
Mobileye
インテルとイスラエルに本拠を置くモービルアイは、既存車両に実装できるレベル4の自動運転システムの開発と、有料サービス向けのロボットタクシー提供を手がけている。
ラスベガスで開催されたCES2020の基調講演で、モービルアイのアムノン・シャシュアCEOは、「ViDAR(Vision+LiDAR)」と呼ばれる新たなソリューションを発表している。それによると、車両に配置されたサラウンドビューカメラだけを用いて、レーザー光によるLiDARのような3次元空間を認識できる。
シャシュアCEOはもうひとつ、CES2020講演で「真の冗長性(true redundancy)」にもとづくアプローチに触れている。
多くの開発企業が採用している複数のセンサー信号を統合するやり方と異なり、ViDARは(レーザー光を用いた測距技術である)LiDARと(波長の短い電波による)レーダー、カメラを別々に動作させることで、責任感知型安全論(RSS)モデルについて二重チェックを行うことになる。
モービルアイは今後数年について、画像処理半導体「EyeQ」を用いた先進運転支援システム(ADAS)をコアビジネスに据える展開を想定している。
総合点:76.1
戦略点:74.5
進捗点:77.7
【第4位】バイドゥ(Baidu)
バイドゥの技術を活用した自動運転車。
Getty Images
バイドゥ(百度)は中国のグーグル、同社が進める「アポロ(阿波羅)計画」は差し詰め中国のウェイモ(Waymo、自動運転開発を手がけるグーグルの兄弟会社)とみなされる。フォード、ダイムラー、エヌビディア、トヨタなど複数の多国籍企業が参画するアポロ計画は、大きな進歩を続けている。
バイドゥは自動運転開発大手のなかで唯一、車車間通信・路車間通信(V2X)にも取り組んでいる。同社製の車両はすべてセルラー(モバイル通信ネットワークを用いる)V2Xを搭載しており、首都北京を含む中国の各都市に配備されたセルラーV2Xインフラとの通信が可能になっている。
総合点:78.4
戦略点:79.1
進捗点:77.8
【第3位】クルーズ(Cruise)
ゼネラルモーターズ(GM)傘下クルーズ(Cruise)のモビリティサービス向け自動運転車「Cruise Origin(オリジン)」。
Cruise
サンフランシスコに本拠を置くクルーズ(Cruize)は米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の自動運転開発企業で、ホンダとソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)もマイナー出資している。
当初は2019年末までに自動運転車両によるライドシェアサービスをローンチさせるとしていたが、遅延中。その後、具体的なスケジュールはまだ発表されていない。早ければ2020年下半期との見方もあるが、2021年にずれ込む可能性が高いようだ。
ホンダは2018年下半期にクルーズに27.5億ドル(約3150億円)を出資、ライドシェア専用の自動運転車両「クルーズ・オリジン(Cruize Origin)」を共同開発することを発表。2020年1月に初披露している。
総合点:79.6
戦略点:79.7
進捗点:79.6
【第2位】フォード・オートノマス・ビークルズ(Ford Autonomous Vehicles)
フォードがテスト中の自動運転車両。
Ford
フォードは2017年2月、米ピッツバーグ本拠のアルゴAIに出資。自動運転システムの開発を続けている。2019年7月、独フォルクスワーゲンと自動運転技術の開発で提携すると発表。フォルクスワーゲンもフォードの出資額と同等の26億ドル(約2800億円)を出資することになった。
総合点:81.5
戦略点:82.9
進捗点:80.1
【第1位】ウェイモ(Waymo)
ウェイモ(Waymo)の自動運転技術を実装したクライスラーのミニバン「パシフィカ」。
Waymo
ウェイモ(Waymo)は2018年12月、有料配車サービス「ウェイモ・ワン(Waymo Onde)」をローンチさせたものの、翌2019年からのサービス拡大の動きは低調だ。
2019年下半期、緊急時対応ドライバーなしの車両運行を一部で開始したが、ウェイモ・ワンのサービスにはまだ展開されていない。
総合点:83.1
戦略点:82.7
進捗点:83.5
[原文:Experts rank Tesla, Waymo and 16 other power players in the world on self-driving cars]
(翻訳・編集:川村力)