スペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗したキャサリン・サリバン氏(1990年4月)。
Space Frontiers/Getty
- 元宇宙飛行士のキャサリン・サリバン氏(68)は6月7日、世界の海で一番深いポイントであるチャレンジャー海淵に到達した初めての女性となった。
- サリバン氏は探検家のビクター・ベスコボ氏とともに太平洋のマリアナ海溝で水深約1万900メートルまで潜水した。
- チャレンジャー海淵に到達したのはサリバン氏が史上8人目。
- サリバン氏は1984年、アメリカ人女性として初めて宇宙遊泳を行い、2014~2017年にはアメリカ海洋大気庁(NOAA)の長官を務めた。
キャサリン・サリバン氏は6月7日、2度目の歴史的偉業を成し遂げた。
アメリカ人女性として初めて宇宙遊泳を行ってから約25年後、サリバン氏は世界の海で一番深いポイントであるチャレンジャー海淵に到達した初めての女性となった。この2つを成し遂げたのは人類初だ。
チャレンジャー海淵はマリアナ海溝の最深部で、その水深は約1万900メートルある。
今回のミッションをコーディネートしたEYOS Expeditionsによると、チャレンジャー海淵に到達したのはサリバン氏が史上8人目だ。
サリバン氏は探検家でミリオネアの投資家でもあるビクター・ベスコボ氏とともに「Limiting Factor」と呼ばれる潜水艇で海に潜った。
ミッションが成功した後、「本当におめでとう!」とベスコボ氏はツイートしている。
ミッションから戻った2人が最初にしたことは、国際宇宙ステーション(ISS)にいる宇宙飛行士に電話をかけることだった。
ビクター・ベスコボ氏。
Tamara Stubbs / Limiting Factor
「海洋学者と宇宙飛行士のハイブリッドとして、これは一生に一度の日でした —— チャレンジャー海淵の月面のような風景を目にした後、ISSにいる同僚たちとわたしたちの注目すべき、再利用可能な宇宙探査機について情報交換をしたのです」とサリバン氏はコメントしている。
チャレンジャー海淵への挑戦
サリバン氏とベスコボ氏は、Triton Submarines社とCaladan Oceanic社が手掛けた2人乗りの潜水艇「Limiting Factor」で約10時間を過ごした。
水深約1万900メートルに到達するまでに約4時間かかり、1時間半ほど海底で過ごした後、約4時間かけて浮上した。
「地球上で最も特別な場所だ」とEYOS Expeditionsの創業パートナーであるロブ・マッカラン氏は3月、このミッションを発表した際にコメントしていた。「月に行ったことのある人の方が、海底に行ったことのある人よりも多い」と述べた。
ベスコボ氏にとって、チャレンジャー海淵への旅はこれが3度目だった。チャレンジャー海淵の水深は世界最高峰エベレストの標高よりも約2000メートル深い。
潜水艇「Limiting Factor」から見たマリアナ海溝の海底。
Five Deeps Expedition
このくらいの水深になると、辺りは真っ暗で水温は0度近い。水圧も1平方インチ(約2.5センチ)あたり8トンと、海面の約1000倍だ。
サリバン氏のブログによると、チャレンジャー海淵に行くことで潜水艇の船体には「ジャンボジェット291機または2階建てのバス7900台分」の水圧がかかるという。
潜水艇の厚さ3.5インチ(約8.9センチ)のチタン合金の壁はこうした水圧に耐えられるよう設計されていて、過去5回のチャレンジャー海淵への挑戦を成功させてきた。こうした潜水を2度以上成功させているのは「Limiting Factor」だけだ。
潜水艇「Limiting Factor」。
Tamara Stubbs / Five Deeps Expedition
科学と探査のレガシー
サリバン氏は大きな"プレッシャー"のかかる状況下での仕事に慣れている。15年に及ぶNASAでのキャリアで、サリバン氏は3度、スペースシャトルのミッション —— ハッブル宇宙望遠鏡を設置したディスカバリー号を含む —— で飛んでいる。
スペースシャトル「チャレンジャー号」に搭乗したサリバン氏(左)とサリー・ライド氏(1984年10月)。
Space Frontiers/Getty
1978年、サリバン氏はNASAの宇宙飛行士に選ばれた最初の女性の1人だった。そして1984年10月11日、アメリカ人女性として初めてチャレンジャー号の外で宇宙遊泳を行った。
宇宙飛行士としての日々を終えた後、サリバン氏は海洋学への情熱を追い求め、1993年にアメリカ海洋大気庁(NOAA)のチーフサイエンティストに指名された。
キャサリン・サリバンさん(2013年、NOAA)。
Mark Wilson/Getty
2014~2017年には、NOAAの長官を務めた。
(翻訳、編集:山口佳美)