パタゴニアの黄金期を築いたローズ・マーカリオ最高経営責任者(CEO)。
PR Newswire/AP
- パタゴニアのローズ・マーカリオ最高経営責任者(CEO)が退任することが明らかになった。
- マーカリオはBusiness Insiderの「ビジネスを変える100人」に選ばれた際に寄稿し、サステナビリティ(持続可能性)の実現に向けた取り組みについて、世界の企業が力を合わせ、互いにより大きな努力を求め合う必要があると指摘している。
- マーカリオによれば、2020年代はどの企業にとっても真の変化を遂げる10年になる。
- 「世界が向き合う最も大きな課題を解決する、イノベーションとコラボレーションの生まれる日がまもなくやって来る。私たちは最高の時代が目の前に待ち受けているという確信を持たなければならない」
(※以下の寄稿は2019年12月にBusiness Insider英語版に掲載されたものです。マーカリオCEOの退任決定にあたり、新たに訳出・編集しました)
気候変動による危機は、人類にこれまで課されたうちで最も厳しい試練かもしれません。私たちがそれに打ち克つのか、それとも屈するのかは次の10年で決まるでしょう。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)で最近確認されたように、2030年までに温室効果ガスの排出量を激減させない限り、摂氏1.5度以上の気温上昇は避けられません。その結果どんなことが起きるのか想像もつかないし、そうなればもはや取り返しのつかないことになります。
この危機はあまりに巨大すぎて、私たちの誰かひとりが独力で解決するなどできないことは明らかです。
けれども、この2010年代の最後の年になって環境運動が大きな盛り上がりを見せ、世界は力を合わせて危機と戦っていける、そんな希望が生まれてきています。
グレタ・トゥーンベリさんが始めた「未来のための金曜日」ストライキに触発され、世界中の若い活動家たちが、かつてない規模と継続性をもって気候変動への取り組みを訴える運動に取り組むようになりました。
こうした若者たちは隊列を率いて街を練り歩き、抗議の声をあげ、他のグループと合流して年齢も生い立ちも異なる数千万人のうねりとなり、危機を回避するための早急な対応を訴えています。
客観的に証明できる真の「結果」が求められている
トランプ大統領が国連に通告した、パリ協定からの脱退に反対する知事らの残留宣言。
Screenshot of 'We Are Still In' Declaration website
一方、燃えさかる地球の温度上昇を食い止めなければ、自分たちのビジネスも焼け落ちてしまうということを認識する企業も増えています。
トランプ大統領が2019年11月にパリ協定(=2015年に気候変動への国際的な取り組みについて合意した枠組み)からの離脱を国連に通告すると、州知事や市長、大学の学長ら数千人のリーダーたちが反対の声をあげ、協定にとどまる旨の宣言に署名しました。
その後すかさず、アップルやテスラなど75社のCEOとアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)が、パリ協定残留を求める政権宛ての書簡を公開して続いています。
また、トランプ大統領が燃費基準の大幅緩和を打ち出した際も、いくつかの大手自動車メーカーは従来の高い燃費基準を維持することで自主合意に至りました。
カリフォルニア州パサデナのパタゴニア店舗。
Sundry Photography/Shutterstock.com
次の10年、私たちはあらゆる産業分野の企業に対し、意味のある行動を断固として求めていかなくてはなりません。派手なマーケティングキャンペーンとプレスリリースを通じた約束だけではまったく足りないのです。
私たちが必要としているのは、サプライチェーンにおける環境負荷の低減や実効性のある温室効果ガスの削減、大気中の二酸化炭素量を減らすソリューションといった、客観的に証明できる真実の結果です。
企業はすでに約束した環境対策を遵守し、その上で取り組みを拡大していかねばなりません。銀行と資本市場は、私たちに残された貴重な自然の破壊に加担するつもりなのか、そうではないのか、説明責任を果たすよう求められています。
第三者的な立場で日和見を決めこむ者には、新たな世代の活動家たちが戦いへの参加を求めるようになるでしょう。
ひと握りのリーダーたちが市民の望む進歩を妨げている
2015年4月、当時のオバマ大統領はパタゴニアのマーカリオCEO(左から2番目)の取り組みを讃えた。
REUTERS/Jonathan Ernst
6割以上の大気汚染、水質汚染、土壌汚染が企業活動によって引き起こされているにもかかわらず、当の企業はほとんど何の責任も果たさない。それが私たちの暮らす世界の現実の姿です。
企業のリーダーとして、私たちはお互いに協力し、学び合い、求め合う機会をもっともっと増やしていく必要があります。
パタゴニアが「ベネフィット・コーポレーション」(=利益追求以上に社会や環境への貢献など目的追求を優先する企業形態)である理由のひとつは、企業は他の生命とは一線を画する存在であり、環境には何の責任もなく、ソーシャル・グッドなんて糞食らえという考え方がいまだにはびこっているからなのです。
私たちは選ばれたリーダーたちにより厳しい要求を突きつけていかねばなりません。何百万もの人々が求める進歩を、ひと握りのリーダーたちが妨げているのが現状です。
変化が訪れるとすれば、それは私たちが一丸となって必死に取り組み、政府には気候変動対策を否定する余地なしという状態を実現できたときだけなのです。
私たちの地球に深刻な危機が迫っているのは事実ですが、それでも希望を抱き続けていい理由があります。それは、2020年代は未来に投資する時代になるのであって、未来から搾取する時代には決してならない、ということです。
世界が向き合う最も大きな課題を解決するイノベーションとコラボレーションの生まれる日がまもなくやって来ます。
私たちは答えを知っています。私たちに必要なのは、一歩を踏み出す勇気なのです。私たちは、最高の時代が目の前に待ち受けているという確信を持たなければなりません。
(翻訳・編集:川村力)