シリコンバレーのアドビ社屋。
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アドビは6月12日、2020年第2四半期の決算を公表した。
2020年3〜5月という、全世界的にコロナ禍が直撃する時期の決算だったが、売上高は同期として過去最高の31億3000万ドル(約3360億円、前年同期14%増)、営業利益は10億1600万ドル(約1090億円、同35%増)という好業績で着地した。最終利益は11億ドル(約1180億円、同73%増)だった。
営業利益、最終利益ともに大幅増益になった理由は、決算資料からみて取れる。
売上高の大幅な伸長に対して、研究・開発を含めた営業費用などの増加が7%程度に抑えられたこと、営業外費用も2019年同期に比べて半減したことから、十分な利益が手元に残った。
根本的なコスト構造を変えずに売り上げをのばすという、クラウド型サブスクリプションビジネスならではの底堅さを見せた形だ。
売上高(revenue)の伸びに対して、営業費用(Operatin expenses)の増加が抑えられた結果、売り上げ増の多くが利益として残る構造が見える(決算資料をもとに、赤下線部分は編集部が加工)。
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第2四半期の成長に大きく寄与したのは、売り上げの約7割を占めるクリエイティブツール・ドキュメントツールを中心とした「デジタルメディア分野」だ。同部門だけで、前年同期比18%増となる、22億3000万ドル(約2394億円)の収益を上げている。
もう1つの柱であるデジタルマーケティング領域の「デジタルエクスペリエンス分野」は、8億2600万ドル(同5%増)だった。
アドビの会長兼社長のシャンタヌ・ナラヤン氏は、決算リリースで次のようにコメントしている。
「アドビの戦略である、世界で通用するコンテンツを生み出す力を顧客に提供し、重要な文書の処理作業を自動化、そして企業がデジタルを通じて顧客と関われるようにすることによって、第2四半期も過去最高の収益を達成することができました。世界中のあらゆる顧客層で起きている『すべてをデジタルに』という構造的転換が、わが社の成長戦略にとって追い風になり、今回の危機をうまく脱することができると考えています」(ナラヤン会長兼社長)
(文・伊藤有)