ソニー「PS5」の成否を左右する3つの特徴。「ドル箱」ゲーム事業の行末は

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PS5のデザインがついに公開に。価格や発売時期などの詳細は今後発表されるという。

出典:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

先週、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は全世界に向けて映像配信イベントを開催した。題材はもちろん、年末商戦に発売が予定されている「PlayStation 5(PS5)」だ。

SIEのジム・ライアンCEO

SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)のジム・ライアンCEO。ビデオメッセージの中で、PS5の特徴とゲームの先進性をアピールした。

出典:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

今回はPS5向けソフトウエアのアピールが中心だったが、最後にはついに、PS5のデザインも公開された。価格や発売時期、正式な発売国などの情報は明らかになっていない。

しかし、3月に発表された技術的詳細と、今回発表されたハードウェアのデザインなどの情報を組み合わせると、ソニーがPS5で狙う次のゲームビジネスのポイントの概略が見えてくる一方、「未だ見えない部分」からは、PS5成功のために必要な課題や条件も予想できる。

1. 画面がキレイ、だけではないPS5の「凄さ」とは何か

1つ目は「PS5はどこがすごいのか」という点だ。

ゲーム機は新しいものが出るたび、「より高いグラフィック性能」が注目される。PS5も同様で、PS4に比べグラフィック性能は上がっている。だが、どこが進化したかは、日常的に最新のゲームをしている熱心なゲーマー以外にはわかりづらい。

特に、実プレイではなくネット配信の映像だけでは「すごい映像」という感想で終わってしまいやすい。PS5を含めた新しいゲーム機が抱える最大の課題の1つだ。

PS5がもたらす、画質以上に劇的な変化となるのは「読み込み速度の変化」だ。SIEの公表した技術情報によれば、PS5はPS4に対して「100倍」の読み込み速度を実現している。読み込みの高速化というと、誰にとってもイライラするゲームの読み込み時間が劇的に短くなることが期待できる。だが、実際にはそれ以上の変化がもたらされる。

今回のイベントでは28本のソフトが発表されたのだが、残念ながら、そうした変化を「映像だけ」で明確に示せたものは少なかった。その数少ない、わかりやすいタイトルのひとつが「ラチェット&クランク リフトアパート」というゲームだ。

一見よくあるアクションゲームだが、ステージの構造を頻繁に変更する大胆な構成は、PS5でないと実現が難しい。

このゲームはキャラクターを操作する3Dアクションだが、ポイントは「ステージがダイナミックに変化する」点だ。

新しいステージが始まるとビジュアルが大きく変わるゲームは珍しくない。だが、「Ratchet & Clank: Rift Apart」の場合には、同じステージの最中に、自然に大きくビジュアルイメージが変わる。

こうした構造が珍しい理由は、技術的にはデータ読み込みの事情がある。ユーザーを「待たせても許容してもらえる」とき、つまりステージが変わる時くらいでないと、ビジュアルイメージが変わるほど大規模にデータを入れ替えるのは難しいからだ。

だがPS5では、データ読み込み速度が、PS4と比較して、最大で「100倍」速くなる。だから、ステージの最中であってもちょっと工夫すれば、ビジュアルイメージを大きく変えてしまえる。結果として、PS5ではゲームの表現の幅を大きく広げることができるのだ。

逆にいえば課題は、そうした新しい可能性を追求するには時間もコストもかかるという点だ。多くのゲームメーカーは、ビジネス上のリスク軽減の必要性から、他のゲーム機やPCでも同じゲームを発売する必要がある。どこまでPS5に特化したものを作れるかは、若干の疑問が残る。

PS5を成功させるには、過去のように単に「ゲームを集める」だけでなく、「PS5向けの最適化設計をしたい」とゲームメーカーに考えさせる仕組みが必要だ。

一方で、SIEが自社でゲームを作る場合、当然PS5専用となるので、機器の特質を生かしやすい。ソニーは自社ブランドでのゲーム開発への投資を強化しているが、それはこうした事情に基づく。

2. ディスクドライブなしの「Digital Edition」を用意した理由

PS5 Digital Edition

PS5には、ディスクドライブと搭載するものと、搭載しない「Digital Edition」の2種類が用意される。

出典:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

2つ目は「ハードウェアのコスト」だ。

冒頭でも述べたように、PS5の価格は未公開。いくらになるか気になる人も多いだろう。

その価格は、PS4などのスタート時の価格(400〜500ドル)を大幅に超えるものにはならないと予想できる。過去の数々のゲーム機の失敗から、価格のスイートスポットは明確になっているためだ。

そこを外してはビジネスが成り立たないし、PS5はソニーにとっては大きな失敗が許されない製品でもある。

ただ今回、PS5は「2ライン」からスタートすることで、価格面でのリスクを軽減しようとしているのも見えてきた。PS5はディスクメディアとしてUHD BDを採用するが、UHD BDドライブを搭載しない「Digital Edition」が用意されることも発表された。

ディスクドライブを搭載せず、ネットワークからゲームを供給するゲーム機は、これは初というわけではない。ただ従来は、初代機発売から数年後になって「さらにコストを下げて幅広い顧客を狙う」目的か、最初から200ドルクラスの低価格路線を狙ったもののみで採用されてきた。

PS5の「Digital Edition」は、ディスクドライブを搭載しない以外は全く同じ性能・ほぼ同じデザインを踏襲している点が異なる。

PS5_controller

PS5のコントローラー

出典:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

日本ではまだディスクによるゲームや映像作品の販売比率が高いものの、欧米では急激に「ディスク離れ」が進んでいる。PCを含め、ゲームの販売は大多数がネット配信によるものだ。ゲームはサービス化しており、ネット接続前提のものも増えている。

そもそも、PS4以降はゲームを「光ディスクから読み込む」のではなく、本体内のハードディスクに一旦インストールし、そこから起動する。中古の利用や友人同士の貸し借り、過去の作品の利用といった、「ディスクが必要とされる用途」ももちろん存在するのだが、次第に役割は弱いものになっている。

PS4とXbox Oneが競争を繰り広げた2013年には状況が違った。

ディスクドライブは搭載したものの、マイクロソフトは「ネット前提」であることに軸足を置いた。一方でPS4は、「ディスクで貸し借りができる」ことをアピールして、ゲームファンから喝采を受けている。

だが今度は、PS5が「ディスクドライブ搭載型」に引導を渡す準備を進めている。これは興味深いことだ。

コストがかかるにもかかわらず両方を用意したのは、当然ながら「いまだディスクにも価値があって求める人が多い」からだろうが、「ディスクなしモデルを用意して、少しでも価格を下げたい」という意図の表れかもしれない。

UHD BDドライブのパーツ単価はもはやたいしたものではないが、それでも製品売価にすれば、数千円 のインパクトが生まれる。「スイートスポットの価格は外さないだろう」という予想を述べたが、「ディスク搭載版はスイートスポットよりも高い」のかもしれない。

SIEの収益的には、ディスク流通からデジタル流通に移行する方が有利だ。ゲームの価格戦略やセールス戦略の柔軟性も上がる。ネットワークサービスからの収益を高める意味でも、より「Digital Edition」強く推したい意図が存在するのかもしれない。

その場合には、「Digital Edition」とディスクドライブ搭載版の価格差が、想像よりも大きなものになっている可能性もある。

3. PS5が大型になった理由は「市場構造」にある

PS5のファン

黒いボディを白い側板で包む構造。その間には、本体内部を冷却するためのスリットがあるようだ。

出典:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

3つ目は「本体のサイズ」だ。

PS5は、PS2以降伝統となっていた「黒基調」のボディではなく、曲線で構成される白い板で黒いボディを挟み込むようなデザインになっている。

そして、PS5は「かなり大柄な機器」になることがわかってきた。

サイズの詳細な数値は公開されていないが、搭載されているディスクドライブの「挿入口」のサイズから推測するに、PS4よりも2回り大きく、「大きすぎる」と言われることもあった初代PS3よりもさらに大きい。ライバルであり、PS5に近いプロセッサーを採用してするマイクロソフトの「Xbox Series X」よりも大きくなると予想される。

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PS5と同時期に発売が予定されている、マイクロソフトの「Xbox Series X」。縦置きの箱のような構造。PS5に似た性能を持つが、サイズ的にはPS5より小さくなるようだ。

出典:マイクロソフト

このサイズ感がユーザーにどう受け入れられるのか。これは、PS5がヒットするか否かを考える上で重要な点だ。

過去、ゲーム機は「使うとき以外は片付ける」ものだった。だから小さいことが求められた。しかしPS2が全盛だった2000年代からは、ビデオデッキと同じように「テレビに繋ぎっぱなしにする家電」に近いものになった。

さらに現在は、「家族みんなで使う機器」という方向性だけでなく、趣味の機器として自分の部屋で使う人が増えている。

ゲームをしない人から見ると任天堂の「Nintendo Switch」やスマートフォン用ゲームとの競合が気になりそうだが、実のところ、PS4以降のゲーム市場では、それらの機器とは市場が重ならず、分け合う構造が明確だ。

最大の競合は、他のゲーム機以上に「ゲーム用PC」だ。日本から見ると違和感があるかもしれないが、欧米を中心に、そうした高収益型の市場は大きく成長している。そういう市場構造は、PS4以降顕著になったものだが、PS5でも狙いは同じである。ゲームを毎日、もしくは週末にがガッツリとプレイする「濃いゲームファン」に対し、ゲーム用PCよりも高い価値を提供するのが、PS5の最初のターゲットだ。

PS5が大きい理由は、それだけ発熱が大きく、高度な放熱機構が必要であるからだと推察出来る。PS5はPS4に比べると、性能が劇的に向上しており、実際、ゲーム用の高性能かつ高価なPCと比較しても見劣りしない。前述のように、ゲーム用PCとの競合は大きなテーマだ。だがゲーム機である以上、PCに比べ静かでコンパクトであることが求められるのも、また事実。発熱の大きな機器でも、大きなファンをゆっくり回して、PCよりも静かに使えるようにすることが、PS5設計上の重要な要素であり、その結果、従来のゲーム機よりも大柄になった……。そんなところではないだろうか。

そういう意味では、どんどん「小さいボディでないといけない」必然性は失われているが、今回は結果的にどう評価されるのだろうか。

なお、PS5は縦置きだけでなく横置きも可能になっているので、その点はご安心を。

PS5を横置きにしたところ

PS5は横置きも可能だ。

出典:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

(文・西田宗千佳

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