コロナ時代に一変する「転職」。インフルエンサーの「理想と現実のミスマッチ」情報にはご用心

若い転職

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筆者はUZUZという人材ベンチャーで、「第二新卒」「既卒」と呼ばれる20代の若者の就業支援を日々行っている。

コロナショックにより求人は目に見えて減っているが、自社サービスでいうと就職活動や転職活動の相談者は増えており、2019年の売り手市場が嘘のように就業マッチングの難易度は上がっている。(本格的にコロナショックの影響が出始めた3月時点の求人数と比較して、6月は10分の1程度に減少)。

就業マッチングが難しくなっている状況下で、ここ最近感じる異変がある。2019年もそこそこ多かったのだが、コロナショック後にいっそう増えているのが「Webマーケター」や「開発エンジニア(Web系、自社開発)」への就業を希望する相談者だ。

未経験でも「Webマーケターになりたい」

これらの職業は確かに市場価値も、人気も高いが、採用枠が決して多くなく、需要に対して供給が多い(倍率が高い)。つまり、未経験者には敷居が高く、募集されている求人の多くは「経験者枠」なのだ。

そのため、未経験者がこれらの職業に就こうとするのであれば、スクールや専門学校で学び、それから就職活動をする必要がある(アルバイトなどの非正規雇用から入って正社員を目指す場合もある)。

しかし、相談者の多くは、未経験者かつスクールや専門学校でも学んでいない状態ながら、正社員での就業を希望して相談に来ることが増えている。

現実的には、正社員として就業を目指すのであれば諦めて他の職業を目指すか、スクールや専門学校に通ってから就業を目指す2択となる。

そのことを提案するのだが、今の未経験者の状態で正社員として「Webマーケター」や「開発エンジニア(Web系、自社開発)」に就職したいと、意見が平行線を辿るケースが少なくない。

コロナショックによって売り手市場から買い手市場に変わったにもかかわらず、就職難易度が高い職業への就業希望者が増えていることに、「理想と現実のギャップ」がさらに広がっていると感じている。

難易度を度外視した「理想の仕事」を目指すあまり、今の不況下で就業が遅れることは相談者にとってネガティブな影響しかないと思っている。

なぜ、このような就職難易度が上がっている状況下において、「Webマーケター」や「開発エンジニア(Web系、自社開発)」を目指す相談者が増えているのだろうか?

インフルエンサーたちの「負の影響」

ユーチューブ

転職を題材にしたコンテンツも人気だ

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最も大きな影響を与えているのが、YouTubeやTwitterで多くのフォロワーをもつ、キャリア界隈のインフルエンサーだ。「Webマーケター」「データサイエンティスト」「AI」といった、キラキラしたイメージの職業がSNS上でもてはやされている。

YouTubeを見ると、ITエンジニアであれば、「SES(ITエンジニアの技術者派遣)」に入ったら終わり、「自社開発」や「Web系の開発エンジニア」にならないとダメだ……といった解説も目にする。

確かにSESと比較すると、業務の自由度は高く、知名度の高いITベンチャー企業などに就職できれば自社開発、Webアプリケーションの開発を経験でき、市場価値は上がるだろう。

しかし、その敷居は非常に高く、未経験者がちょっとやそっと勉強したくらいで就職できるわけではない。

人材業界の現場の意見として言わせてもらえれば、まずはSESのように比較的採用枠が多く、未経験者でも独学で勉強した知識レベルでも入社できる可能性がある環境で職歴を積む。

それから、業務経験者として自社開発やWeb系のように、倍率の高い環境に転職していくステップが現実的だ。

「理想と現実のギャップ」を伝える苦労

苦悩する若者

偏った情報により、理想と現実のギャップが大きくなる

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しかし、このような現実的なアドバイスは多くの相談者にとってウケが悪い。

インフルエンサーの発信する情報に影響を受け、「キラキラしたイメージを持った仕事」に就きたいと思って相談しているのに、急に現実に引き戻そうとしている筆者(キャリアカウンセラー)を鬱陶しいと思ってしまうのも仕方がない。

そのため、正論をただ話すのではなく、相談者がメリットを感じてもらえるよう、少しでも現実が受け入れやすように、伝え方や伝えるタイミングを工夫する必要がある。

前述の通り、ここ最近は「理想と現実のギャップ」の開きが大きくなっていることから、この伝える苦労がより一層増えている。

また、「下積み」に関して否定する意見も強く、地味で基礎的な仕事をすっ飛ばして、いきなり花形の仕事ができると錯覚している相談者も多い。

「地味で泥臭いことって、別にやる必要ないと思うんです。効率的にキャリアを構築していきたいんです」

とあるキャリア面談で、20代会社員男性は、筆者にそう言った。

男性は異業種への転職を希望しているが、地道に積み上げる仕事は不要だと言い、「効率的なキャリア」があると信じている。転職エージェントの現場では、こうした考えを持つ転職希望者は決して、珍しくない。

インフルエンサーは地味で泥臭いことやっている

スマホを見る男性

インフルエンサーの裏側を考えてみてほしい

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しかし実際、そんな都合のいいキャリアはなく、どんな天才であれ、影では地味で泥臭い努力をしている。実際のところ、インフルエンサーも実は裏では地味で泥臭いことをやっている。

なぜ、インフルエンサーの意見が「現実的」ではないのか。

少し考察してみればいい。

彼らはインフルエンサーとして「影響度(人気)」を高めて、YouTubeのチャンネル登録者、視聴回数、Twitterのフォロワーを増やすことで収入を得ている。

タレントのように視聴者やフォロワーから人気を獲得する必要があり、「現実」よりも「希望」を発信した方が人気が取れるのだ。だから、現実的には注釈がつくような内容(「経験が求められるよ!」「倍率20倍だよ!」)であっても、その注釈には言及せずに「耳触りがいいこと」を発信していることが多い。

つまり、参考になるアドバイスもあるが、ただ「数字(フォロワー)を取る」ための情報も少なくない。このため、インフルエンサーが発信する情報を鵜呑みにしてしまうと、現実における自分の就活や転職がうまくいかないなんてことは普通にある。

withコロナにおける就職・転職活動

サラリーマン

これからどういうキャリアを選択するべきなのか

撮影:今村拓馬

それでは、withコロナと呼ばれる時代、どのように就活・転職活動をやればいいのか?

一言で言えば、「現実をちゃんと見て」活動することが大事だと思う。

どうしても、インフルエンサーの発信する情報を見ていると、希望が持てるし、何かうまくいきそうに感じるかもしれない。

ただ、実際には景気は悪くなっているし、求人倍率(求人数)も悪化している。

つまり、就職や転職するには非常に厳しい状況がある。なので、インフルエンサーから情報収集するだけでなく、ニュースなどから事実やデータを集め、現実的な情報を収集することが重要だ。

これから初めての就職をする人は、希望の求人だけでなく、希望の求人よりも難易度が多少下がる求人も保険として受けておいた方がいい。

避けなければならないのは、無職期間が長期化して空白期間を作ってしまうことなので、多少希望の条件を下げてでも就職することが大事だ。

一度就職して就業経験さえ手に入れてしまえば、景気が回復した際には経験者として転職活動ができるわけだし、不況下の今よりは求人の選択肢も広がっているだろう。

間違ってもリセット転職しないで

もしあなたが今、転職を考えているのであれば、いたずらに未経験分野に転職しようとはせずに、今まで自分が経験してきた仕事に近いもの、スキルや知識が流用できる仕事への転職をお勧めする。

間違っても「なんとなく自分の経験をリセットするような転職」はしない方がいい。

また、転職活動をするにしても在職中のまま進めていく方がいい。もし希望通りの転職先がなければ、そのまま働き続けられるからだ。不況下では、時間のやりくりは難しいかもしれないが、退職してから転職活動するのではなく、働きながらやるべきだ。

コロナショックで働き方も大きく変わった。Web会議システムが導入され、リモートワークが増え、評価制度も成果主義に転換しつつある。就職・転職活動もwithコロナ時代に合わせて、対応を変えていく必要がある。

2019年までの売り手市場感覚で活動するのではなく、不況下、買い手市場での活動へのシフトチェンジが求められる。

厳しい現実は直視しつつ、希望は捨てずに、粘り強く。そうやってコロナショックを乗り切るためのキャリアプランを考え、実行してもらえればと思う。

(文・川畑翔太郎)


川畑翔太郎:UZUZ 専務取締役。1986年生まれ、鹿児島出身。高校卒業後、九州大学にて機械航空工学を専攻。大学卒業後、住宅設備メーカーINAX(現・LIXIL)に入社。1年目からキッチン・洗面化粧台の商品開発に携わるも、3年目に製造へ異動し、毎日ロボットと作業スピードを競い合う筋トレの日々を送る。高校の同級生である今村邦之(現・UZUZ会長)の誘いと自身のキャリアチェンジのため、「UZUZ」立ち上げに参画する。第二新卒・既卒・フリーターの就活支援実績は累計1200名を超える。YouTubeはこちら。

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