国際宇宙ステーションに滞在中だったスコット・ケリー(Scott Kelly)宇宙飛行士が、2015年8月9日にツイッターに投稿した写真。次のようなキャプションがついていた。「135日目。 #MilkyWay(天の川)。年老いていて、塵だらけで、ガスまみれで、歪んでいる。でも、美しい。@space_station(宇宙ステーション)からおやすみなさい! #YearInSpace(宇宙での1年間)」
NASA/Scott Kelly
- 我々の銀河系(天の川銀河)には、いま現在、少なくとも36の知的生命体による文明が存在しているとする研究が新たに発表された。
- この研究では、通信技術をもつ文明の存続期間が100年と仮定されている。もしその期間が100年よりも長ければ、もっと多く、数百にのぼる地球外文明が存在している可能性がある。
- 地球外生命体の探索は、人類の文明の存続可能期間を知る手がかりになる。ただし、宇宙空間をまたいでそうした文明と交信するには数千年という時間がかかるだろう。
我々が住む宇宙には、地球外生命体がひしめいているかもしれない。そして理論上は、そのうちのいくつかは、遠く離れた星と星とのあいだで通信を交わせるハイテク文明を築いている可能性がある。
イギリスのノッティンガム大学の研究チームが6月15日付で学術誌「アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)」で発表した最新研究によれば、我々の銀河系だけでも、少なくとも36のエイリアン文明が存在しているはずだという。
このイラストは、ある太陽系外惑星の表面から見た光景の想像図だ。その惑星は、地球からわずか40光年のところにある超低温矮星の軌道をまわっている。
ESO/M. Kornmesser
しかも、36という数字は一番少ない予想だ。そしてこの数字は、知的文明は平均して100年間しか宇宙で通信する能力を持てる期間がないとして算出された。
100年という前提条件は、これまで人類が衛星やTVなどの無線通信を使用してきた期間をもとにしている。無線通信が宇宙空間へ送り出す電波は、別の星の生命体によって検知される可能性がある。通信能力をもつ文明が100年よりも長く存続できる場合は、銀河系のあちらこちらで数百の文明が活動していてもおかしくはないという。
ノッティンガム大学の研究チームは、別の惑星上で通信能力をもつ知的生命体が生まれるまでには、地球と同様に、50億年ほどかかると仮定した。その上で、太陽型の恒星の軌道をまわる地球型の惑星の数をもとに、銀河系で形成される可能性のある文明の数をはじき出した。
知的文明は、銀河系全域で絶えず生まれては、しばらくのあいだ無線信号を宇宙に送り出したあと、やがて消滅して沈黙しているのかもしれない。いま現在、どれだけの数の知的文明が活動しているかは、そうした文明の平均的な存続期間によって変わる。
地球外にある知的生命体の文明を探し、現在の銀河系全体で活動している知的文明の数を知ることができれば、人類文明がどれだけ長く存続できるのか、その可能性を探る手がかりになり得る。
「知的生命体があちこちに存在しているのであれば、人類の文明もこれから先、数百年よりもっと長く生き延びられる可能性があると考えられる」
ノッティンガム大学の天体物理学教授で、この研究を主導したクリストファー・コンセリス(Christopher Conselice)はプレスリリースでそう述べている。
「逆に、銀河系に現役の文明が存在しないことがわかれば、人類の長期的な存続にとっては悪い知らせと言えるだろう」
「科学界で最も難しい問題」
地球外生命体からの信号を探査する電波望遠鏡施設「アレン・テレスコープ・アレイ」(Allen Telescope Array:ATA)を構成する複数のアンテナ。
SETI Institute
科学者たちは、かなり前から宇宙から来る電波に耳を傾けているが、地球外文明から来た信号が検知されたことはない。それほど多くの知的文明が存在しているのなら、なぜそのささやきが聞こえてこないのだろうか?
この疑問は「フェルミのパラドックス」として知られている。このパラドックスを最初に指摘した物理学者のエンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)は、「みんな、どこにいるのだろう?」と問いかけたことで有名だ。
フェルミがこのとき考えをめぐらせていたのは、恒星間航行は実現可能かという疑問に対してだった。だがそれ以来、フェルミのこの問いは、地球外生命体の存在をめぐる疑問を表すものになっている。
宇宙を支配する不気味な静寂については、多くの説明がなされている。エイリアンは冬眠中だとか、まったく異質な技術を使って通信しているといった説のほか、単に人類と接触することに興味がないのだとする見方もある。
コンセリスの研究チームは、知的生命体が存在している場所が遠すぎるせいで、人類にその「声」が届かないだけだと考えている。研究チームの計算によれば、知的文明と地球との距離は平均1万7000光年で、現在の人類の技術で通信を届けたり受けとったりするのは「ほぼ不可能」だという。
そうしたはるか彼方の文明と通信し、向こうから返事をもらうためには、人類は6120年にわたって無線通信を維持しなければならないと研究チームは述べている。
この想像図で描かれている惑星「K2-18b」は、生命を維持できる水と温度がそろっていることが確認されている唯一の「スーパーアース(巨大な地球型惑星)」だ。
ESA/Hubble, M. Kornmesser
コンセリスはガーディアン紙に対して、「(通信能力をもつ文明が)近くで見つかれば、そうした文明の存続期間が数百年単位よりもはるかに長く、知的文明が数万年や数百万年にわたって存続できることを示す、良い兆候といえる」と話している。
「近くで多くの文明が見つかるほど、人類文明の長期的な存続にとっては良い兆しと考えていいだろう」
とはいえ、宇宙には人類しかいない可能性もないわけではない。コンセリスの研究で行われた推計は、地球上で生命が登場するまでにかかった時間、「太陽に似た恒星の軌道をまわる、地球に似た惑星」の数、地球上の生命が、宇宙空間を渡る信号を送れるほどの知能を進化させるまでにかかった時間をもとに概算されたものだ。
「統計学的な観点でいえば、これは科学界で最も難しい問題の一つだ」と、論文執筆者たちは書いている。
「我々にできるのは、現在わかっている唯一のデータポイント(我々自身)から学ぼうと試みることだけだ」
地球外文明を見つければ、もう一つのデータポイントが手に入り、人類文明の存続可能期間をめぐる理解を深められるはずだ。
「地球外知的生命体の探索は、たとえ何も見つけられなかったとしても、我々人類が、自らの未来と運命を発見しようとしているということだ」とコンセリスは話している。
(翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)