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【アフターコロナ特需】数十倍売れたBT付き電子体温計、6000万円の「紫外線照射ロボ」、導入激増のサーモカメラ

新型コロナウイルスの影響で、いやが応でも生活様式を変えざるを得なくなった。それまでの日常において、決して注目されてはいなかった製品への需要が高まっている。

あちらでもこちらでもサーモカメラ?

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営業を再開した映画館「TOHOシネマズ」では入場前に簡易サーモグラフィーカメラで検温する。

撮影:大塚淳史

サッカー・Jリーグは6月26日から公式戦を再開する。感染予防対策として、サーモグラフィーカメラ450台、消毒液12トン、マスク7万枚を確保した。サーモグラフィーカメラは試合会場のスタジアムで、主に、来場する人たちの検温測定に使われることになる。

赤外線センサーによって温度を測るサーモグラフィーカメラは、これまで国際空港など公的機関による検疫、建物や橋梁などの劣化状況調査、工場での発火検知などといった場面で使用されてきた。

決して日常生活で頻繁に見るものではなかったが、コロナの流行や経済活動再開後の感染対策による需要が高まった結果、メーカーへの問い合わせが殺到した。

緊急事態宣言が解除され、営業を再開した映画館のTOHOシネマズでも、映画を鑑賞する前にサーモグラフィーカメラでの体温検査を行っていた。

ザインエレクトロニクスの非接触型AI顔認証検温システム

ザインエレクトロニクスが提供する、非接触型AI顔認証検温システムの画面。

出典:ザインエレクトロニクス

半導体メーカーのザインエレクトロニクスは、国内で新型コロナの感染が拡大する2月末から、新規事業として非接触型AI顔認証検温システムを発売開始した。中国のパートナー企業の持つカメラとAI技術を組み合わせ、日本向けにカスタマイズした。

「オフィスビル、ショッピングモール、病院、学校からの問い合わせが多いです。大きなスポーツ施設からの問い合わせがきていて、トライアルをしています」(ザインエレクトロニクスの担当者)

現在、用途に合わせて、大規模なものから小型なものまで3種類が用意されている。マスクを着用していても、AI技術を用いて、目や耳からおでこの位置を判別し検温できる。

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日本アビオニクスのサーモグラフィーカメラ。レンズに着いた赤外線センサーで検温する。2020年3月、都内にて。

撮影:大塚淳史

同じくサーモグラフィーカメラを販売するメーカー、日本アビオニクスも引き合いが増えた。

「今までになかったところからの問い合わせが増えています」(日本アビオニクスの担当者)

ザインエレクトロニクスと同様に、学校、病院、劇場、一般企業の入り口への設置用に問い合わせがきていると担当者は語る。注目された2月頃から、福島にある工場は生産体制を3倍に増強して対応している。

「発熱した方を(内部に)入れたくないというのがまずあるのと、それに加えて、こういった対策をやっているということをアピールすることも重要なのだと思われます」(日本アビオニクスの担当者)

他にも、スタジアムのような施設から多く問い合わせがきているという。

花王は消毒液の生産体制を20倍まで強化

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花王は新型コロナの影響で消毒液の生産を20倍に高めた。左から、花王の「ハンドスキッシュEX」「ビオレU」。

提供:花王

サーモグラフィーカメラと同じく、今回の新型コロナで爆発的に需要が高まったのが消毒液だ。一時は常に品切れで手に入りにくい状態が続いていた。

花王は、消毒液の生産体制を増強し、国内4工場と委託先を活用して一気に(3月までの)20倍に引き上げた。

コロナの影響で衛生関連商品、消毒液、漂白剤などが伸びている。『ビオレU』や業務用『ハンドスキッシュEX』などの需要が急増しました」(花王の担当者)

当初は政府からの要請により、医療機関、介護施設を優先的に供給していたが、20倍増産の効果で店舗にも商品が届くようになった。

一方で今回“泣き”を見たのが、不足している消毒用アルコールなどの代替品として注目が集まった次亜塩素酸水や関連機器のメーカーだ。

独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が5月22日に、次亜塩素酸水の新型コロナへの消毒方法の効果に対する検証の中間報告を発表。「新型コロナウイルスへの有効性は現時点で不明」、また「次亜塩素酸水の噴霧は健康の観点から控えてほしい」とした。

ある次亜塩素酸水や機器メーカーの担当者は、こう漏らす。

「それまで爆発的に問い合わせや注文が殺到していたのですが、NITEが出した報告が出たあと、注文先からいったんストップするとの連絡が……。

確かに、需要が高まってから、質の悪い商品を作る新規参入が増えたことは問題になっていました。また、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムとの違いを知らずに使い、問題となったケースもありました。

しかし、これまで長く真面目に次亜塩素酸水に関する業務に取り組んできた我々としては、報告書には納得できません」

「年間数百本が3カ月で1万本」Bluetooth付き電子体温計

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エー・アンド・デイのBluetooth付き電子体温計「UT-201BLE」。

出典:エー・アンド・デイ

思わぬ商品や超高額商品も、アフターコロナの需要が高まっている。

一つは体温に関する商品だ。公式戦を再開するJリーグでは、各チームの選手たちに日々の体温を義務づけている。また、プロスポーツ選手に限らず、ビジネスマンも日々の体温をチェックすることになるかもしれない。

その際に助けてくれそうなのが、「Bluetooth付き電子体温計」だ。

そもそも、電子体温計自体の国内市場は「2019年で年間約600万本ほどの国内市場があり、2020年は30%増と見ております」(エー・アンド・デイの担当者)という。一方で、Bluetooth付きのものはこれまでほぼ需要がなかったこともあり、製品も限られていた。

エー・アンド・デイは、検温したデータをアプリに記録するBluetooth付き電子体温計「UT-201BLE」を2015年に発売している。システムがオープンにされていることもあり、同社のアプリだけでなく、他社アプリにも組み込むことができる。

担当者は需要が「急増」したことに驚きを隠さない。

「これまでは一部の医療機関や研究機関からしか需要がありませんでした。アメリカではもともと遠隔医療が進んでいることもあり需要があったのですが、日本ではコロナがきっかけでようやく興味を持ってもらえるようになりました。

それまで年間でも数百本ほどしか出荷していなかったのですが、この3カ月でBluetooth付き電子体温計に数千台の受注があり、増産に取りかかったところです」(エー・アンド・デイの担当者)

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エー・アンド・デイのBluetooth付き電子体温計「UT-201BLE」で測った体温データはアプリに記録される。

提供:エー・アンド・デイ

体温チェックを毎日する必要がある場合、そのデータをいちいち手入力する必要がなくなる。

さらに、海外出張を必要とする人たちにも使われる可能性がある。

現在、世界中で国と国との間の移動が事実上ストップしている。しかし、ビジネス面における影響が大きいこともあり、渡航を認めようとする動きが出てきている。PCR検査の陰性チェックだけでなく、日々の検温が重要になる。

そこでBluetooth付き電子体温計を携帯し、日々記録すれば、それ自体が健康の証になるかもしれない。

6000万円の紫外線照射ロボが一躍人気者に?

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テルモは、米国のゼネックス・ディスインフェクション・サービスの紫外線照射ロボ「ライトストライク」の日本国内独占販売権を持つ。

提供:テルモ

医療機器メーカーのテルモが国内販売する紫外線照射ロボット「ライトストライク」が注目されている。もともとアメリカのゼネックス・ディスインフェクション・サービスが製造し、テルモが日本独占販売権を2017年に取得した。

病室や手術室などに設置し、無人状態にして照射する。1回の照射が約5分で、位置を変えながら1部屋10〜15分照射することで殺菌していく。照射する一連のロボの動きはなかなかインパクトがある。

システム一式で約6000万円する価格がネックだったのか、コロナ流行がここまでの規模になるとは誰も想定していなかった2020年1月末時点で、国内の導入医療機関はわずか4施設だった。

しかし、コロナの影響により、現時点で累計約20施設まで急拡大している。

都内病院における紫外線照射装置の導入を伝える報道番組の事例。

出典:FNNプライムオンライン

「アメリカでは約400病院1100台ほど導入されている機械なのですが、日本では今まで進んでいませんでした。私たちは以前から院内感染対策に取り組んでいて、このような機器を取り扱っています」(テルモの担当者)

売り切りだと高額だが、リースも可能だという。

唾液によるPCR検査キットが注目

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島津製作所が4月に発売した「新型コロナウイルス検出試薬キット」は唾液による検査にも対応。

出典:島津製作所のホームページより。

PCR検査キットも需要が高まった製品のひとつだ。島津製作所が4月に発売した「新型コロナウイルス検出試薬キット」は、咽頭鼻腔だけでなく唾液の検査にも対応していることでより注目されている。

「4月20日に発売したのですが、当初は月間1000キット、1キットの中に検査100回分が可能なので、計10万検体分が可能です。需要が大きかったことで、(生産能力を)3倍に引き上げました」(島津製作所の担当者)

当初は唾液検査をうたってはいなかったが、簡易的に行えるということ、鼻腔検査より飛沫感染のリスクが少ないこと、さらに厚生労働省が保険適用として認めたことで、唾液によるPCR検査キットが注目されたという。

海外出張者へのPCR検査の需要もあるが、「テレビドラマや映画の撮影現場で、関係者が皆、PCR検査をしようかという話を聞いたことがあります。やはり役者さんの演技を2メートルを離れてやるわけにいかないんでしょうね」(PCR検査業界関係者)。

新型コロナの感染ピーク時、PCR検査が追いつかずに問題となっていたが、今後はより簡易的に、そしてさまざまな仕事の場で使用されていく可能性がある。

編集部より:初出時、「年間800万本の需要がある」としておりましたが正しくは「2019年で年間約600万本ほどの国内市場があり、2020年は30%増と見ております」です。また、体温計の受注状況の表現について、一部表現を改めました 2020年6月19日 14:15

(文・大塚淳史)

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