NECPCは「LAVIE Pro Mobile」の新モデルを発表した。
出典:NECPC
新型コロナウイルス感染拡大を背景に、国内でもテレワークや在宅勤務が急増している。そこで需要が高まっているのが、PCだ。
誰も予想もしなかった「コロナ特需」とも呼べる状況において、NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)は「想定外」の状況に対応しつつも、1000万台規模の追加需要を見込んでいる。
落ち込み予想の2020年、コロナ禍で想定外の特需に
2020年2〜4月の実売台数はその前の3カ月の2.7倍に。
出典:NEC PC
コロナ禍で大きく売り上げを伸ばしたのが、NEC PCの軽量モバイルノートPC「LAVIE Pro Mobile」だ。2019年5月の発売後、実売台数は前モデルの1.3倍と好成績を記録。さらにコロナ前後の3カ月間の比較では、2.7倍と伸びを示したという。
しかも、6月16日に同社が開いたオンライン製品発表会で執行役員の河島良輔氏は「単なる2.7倍ではない」と強調した。新型コロナ前の3カ月間には、Windows 7のサポート終了にともなう旺盛な買い替え需要が続いていたあとの「2.7倍」だからだ。
NECパーソナルコンピュータ 執行役員の河島良輔氏。
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2019年のPC業界は、2020年1月にサポートが終了するWindows 7からの移行需要に沸いていた。だが、2020年には移行後の「反動」が始まり、やがて冬の時代が訪れるものとPCメーカー各社は戦々恐々としていた。
そこへ、新型コロナウイルスによる予想だにしない事態が世界中に広がった。当初、2020年夏に予定されていた東京五輪をきっかけにテレワーク増は予想していたが、それが数カ月の前倒しになり、東京だけでなく日本全国で、多かれ少なかれテレワークを導入せざるを得ない状況になった。
2月から3月まではさすがに混乱が続いていたが、外出自粛が緩和され、供給体制も整ってきた4月からPCの売上は急速に回復。「誰も予想しなかった、想定外の需要増が生まれた」(河島氏)ことで、2.7倍という記録的な伸びにつながったわけだ。
その裏で、PCメーカー各社を悩ませているのが部品供給の問題だ。
世界各国で生産される部品を組み合わせる必要があり、一部の国でロックダウンが発生すると供給が滞ってしまう。
この点でNEC PCの強みは、ジョイントベンチャーを組むレノボの存在だ。世界のPC市場のおいて、HPとシェア1位を争うレノボグループの調達力を活かし、グローバルで供給体制をとっているという。
さらに1000万台規模の普及余地、「2台目、3台目」需要も
テレワークには85%が満足、家庭内PCにはさらに1〜2台の追加需要を見込む。
出典:NEC PC
都内の大型量販店のPC売り場も風景も変わった。新型コロナ前は人の姿もまばらだったところに、いまでは平日昼間から多くの客が訪れ、マスクやフェイスガードを装着した店員が対応に追われている。
果たしてこの特需はいつまで続くのか。その鍵になりそうな動きが、テレワークや在宅勤務の定着化だ。
NEC PCの調査によると85%の人がテレワークに満足しており、コロナ後も続けていきたいとの意向があるという。また、学校教育においてもオンライン授業などの導入が進んでおり、「テレスクール」が拡大している。
日中の時間帯に仕事にも授業にもPCが必要となれば、家庭内に1台では足りず、2台目、3台目の需要が生まれることになる。会社からPCが支給されるのは大企業が中心で、規模の小さい企業では個人購入のPCが多く使われているのが実情だ。こうした需要を合わせると、「1000万台規模の普及余地がある」(河島氏)という。
PCが会社から支給されるのは大企業が中心。個人PCもまだまだ仕事に使われている。
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今後、経済がどこまで回復するかは不透明な面もあり、通期での予想は難しいとするものの、「年間のコンシューマーPC市場は400万台規模。1000万台の需要は、数年分のポテンシャルがある」と河島氏は試算する。
モデルチェンジした「LAVIE Pro Mobile」も、テレワーク需要に合わせ込んできた。オンラインミーティングで重要なマイクには、エアコンや雑踏などのノイズを低減するサプレッサー機能を搭載している。
「LAVIE Pro Mobile」の新モデルは、テレワーク向け機能を強化。
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また、キーボードには静音設計を採用し、オンライン会議で嫌われがちな「タイプ音」を軽減した。ここではキーボードに定評のあるレノボ「ThinkPad」シリーズの研究データを活用したという。
想定外の特需がいつまで続くのか、未知数の要素は多いものの、テレワーク継続への期待は大きい。「ニューノーマル」時代に向けた新製品を投入しつつ、生産、物流の体制も整えるなど、PC業界は総力戦に突入したと言えそうだ。
(文・山口健太)
山口健太:10年間のプログラマー経験を経て、2012年より現職。欧州方面の取材によく出かけている。著書に『スマホでアップルに負けてるマイクロソフトの業績が絶好調な件』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)。